DUCATI SUPER MONOの鮮烈なインパクトだった戦闘機フォルム!【このバイクに注目】(このバイクに注目)
1987年、ドゥカティは伝統のLツインを遂に水冷DOHC化した新世代エンジン投入へと踏み切った。
狙うは頂点スーパーバイクのプロダクトとレース制覇。
この851系は、早々とレースでも存在感を示し急ピッチで実績を積み上げ、1993年には888へと排気量もアップ、日本勢と互角以上に闘いはじめていた。
その同じ1993年に、ドゥカティはマニアが目を見張る秘密兵器をデビューさせたのだ。
それがこのスーパーモノ。
550cc水冷DOHC4バルブ単気筒で、当然のデスモ(強制開閉バルブ)。
当時ヨーロッパ選手権としてSOS(Sound Of Singles)のシリーズ戦が組まれていて、アメリカでもSOSはクラブマンレースで人気となりつつあった。
新しいスーパーモノは、このSOSをターゲットにした市販レーサーだ。
ほぼ水平のシングルを搭載しているので思いきり低く、当然スリムなのでそのフォルムはいかにも精悍、まさに単座戦闘機を思わせるカッコ良さに溢れていた。
そしてこの550cc水冷DOHC4バルブ単気筒の独創的といったらなかった。
何と851/888系Lツインの、後方に位置する後ろバンクを取り去るという構成だからだ。
しかも驚くなかれ、クランクは元の2気筒用と同じ構成で、ピストンのついていないコネクティングロッドまで組まれていたのだ。
これは何とバランサーとしてコンロッドを利用する合理的なメカニズム。
クランクケース内に設けたステーと結ばれたコンロッドは、Lツインの前方気筒が90°V型構成で後方気筒のピストンとコンロッドの動きが偶力となって打ち消し合うため振動がないという、そのメリットを残して単気筒化したというわけだ。
つまりバランサーが回っていない、高回転で高出力を狙うエンジンであるのに、画期的なシングルということになる。
ボア×ストロークは100mm×70mmとビッグボアでショートストローク。
851はボア92mmでストローク64mm、888で94mmとなったが、ボア100mmはその後2003年に登場した999で採用されている燃焼の難しいサイズだ。
最高出力は75hp/10,000rpm、最大トルクが50.8Nm/8,000rpmと、とにかく高回転域でブン回して、ライダーは伏せたままスロットルは可能なかぎり全開状態を保って走る……そんな過激なマシンをイメージさせた。
そして車重はカウルからシートをマウントするサブフレームなど、カーボン製パーツを奢った結果ドライで118kgと超々軽量級。
トップスピードは220km/hが公表値だった。
1993年にリリースされたこのスーパーモノ、1995年に570cc後期型となり、日本へも両方のモデルが数台ずつ輸入されたが、SOSレースが下火になったこともあって生産は継続されなかった。
しかしファンが注目していたのは、そのデザインも999と同じだったりしたことから、ほどなく市販車としてのスーパーモノがいつ発売されるかだった。
ヤマハSRXやスズキGooseで、シングルファンも増えつつあった状況で、その期待感は募るいっぽう。
けれど結局ドゥカティからスーパーモノは発売されず。
この美しく華麗なフォルムは、残念なことに憧れのままファンに手の届くマシンとはならなかったのだ。