気象庁はきのう9日、三陸沖の海洋内部の水温が平年より約10℃も高くなっていると発表しました。海洋環境への影響のほか、台風が勢力を強めるなどの影響も考えられます。

三陸沖の海水温度が記録的高温に

気象庁はきのう(9日)、観測の結果、三陸沖の海洋内部の水温が記録的に高くなっていると発表しました。
それによりますと、三陸沖では2022年秋以降、海面水温が平年よりかなり高い状態が続いています。さらに、気象庁の海洋モデルにより、海洋内部まで高い水温が続いていることが解析されています。
これを受けて、気象庁の海洋気象観測船「凌風丸」は、2023年7月22日〜25日にこの海域で海洋観測を実施し、海洋内部で平年より約10℃も高い水温を観測するなど、記録的な高温を直接確認しました。
このような三陸沖の高い水温は、2023年4月以降に顕著になった黒潮続流(※)の北上の影響と考えられます。海洋モデルによる解析では、7月末以降、黒潮続流の北上部分が一時的に暖水渦として切離する現象がみられますが、三陸沖の高い水温は少なくとも向こう1か月は継続する見通しです。

黒潮続流とは、日本南岸に沿って流れる黒潮の、房総半島以東の流れのことです。

日本付近の海面水温

きのう(9日)の日本付近の海面水温をみると、日本の南海上から日本海中部付近にかけては、30℃以上のエリアが広がっています。平年と比べると、日本の南海上では平年より1℃〜2℃ほど高くなっていて、日本海では平年より3℃以上も高くなっています。
台風は、海面水温が26℃〜27℃以上の海域で発達します。台風6号も、海面水温の高い日本の南海上で勢力を強め、沖縄・九州を中心に大雨・暴風などをもたらしました。

一方、三陸沖に目を向けると、海面水温が28℃以上のエリアがくさび状に南からのびています。ここのエリアでは平年と比べると5℃以上も水温が高くなっていて、平年よりも大幅に高いことが分かります。

生活への影響は?

三陸沖の海水温度の高温は、黒潮の北上が影響しているとみられますが、海流が変化することにより、海中の環境などの変化が考えられます。また、高い水温によっても海の生物への影響が出ることが懸念されます。こうしたことにより、獲れる魚の種類が変化するなど、漁業・水産業への影響も心配されます。

さらに、気象の面では、海面水温が上昇することによって、台風が勢力を強めることも考えられます。
上の図は台風の月別の平均進路です。台風は周囲の風に押し流されて動きます。例年8月から9月ごろは、台風は南海上では東へ後退した太平洋高気圧のヘリを吹く風に乗って北上します。その後、台風は日本付近で偏西風の流れに乗ると速度を上げて東よりに向きをかえ、日本付近に近づくことが多くなります。海水温が高いなかで台風が三陸沖付近へ接近した場合、台風が勢力を維持し、場合によっては勢力を強めることも考えられ、影響が大きくなる可能性があります。
8月・9月は、台風の発生数や接近数、上陸数が一年のうちで最も多い時期ですので、これからは一層注意が必要となります。