北海道新幹線で国内最長の鉄道陸上トンネルとなる「渡島トンネル」の建設が進んでいます。建設にはどのような苦労があるのでしょうか。

建設が進む北海道新幹線の「渡島トンネル」

 建設が進む北海道新幹線の新函館北斗〜札幌間は、全体の約8割がトンネル区間となります。その中で、ひときわ長いのが「渡島トンネル」です。このトンネルは完成すると、リニア中央新幹線を除く高速鉄道では、東北新幹線の七戸十和田〜新青森間の八甲田トンネル(2万6455m)を抜き、国内最長の鉄道山岳トンネルとなる見込みです。


北海道新幹線の「H5系」(画像:写真AC)。

 しかし、地質な軟弱な箇所があり、過去にはトンネル坑内から突発的に湧水と土砂が流入したことも。どのような対策を施したのでしょうか。
 
 渡島トンネルは新函館北斗〜新八雲(仮称)間に計画されており、延長は約32.7km にも及びます。新函館北斗方から7工区(村山工区、台場山工区、天狗工区、南鶉工区、北鶉工区、上二股工区、上ノ湯工区)に分割して工事が進められています。

 もともとは村山トンネル(全長5265m)と渡島トンネル(2万6470m)に分けて施工し、その間の区間約0.9kmを橋梁や高架橋にする計画でしたが、治山の必要性が高く、大規模な斜面対策を要することから、線路の勾配を変更。2本のトンネルを一体化し、1本の渡島トンネル(3万2675m)にする計画に変更されました。

 建設が進む中、地質が軟弱な台場山工区(延長3500m)で2022年3月、トンネル掘削面からトンネル坑内に湧水と土砂が流入。トンネル内部と地上の地盤を改良し、2022年10月に掘削を再開しています。
 
  台場山工区では崩落を防ぐため、トンネル上部や掘削面に薬液を注入しているほか、トンネル上部、掘削面、トンネル下部に変形を防ぐ鋼管を設置しているそうです。昨年の土砂流入を受け、注入する薬液の量を増やしながら慎重に掘削を進めているといいます。

 通常は1か月あたり約70〜80m掘削できるのに対し、補強しながら掘削する台場山工区は約20m程度にとどまるそうです。
 
 鉄道・運輸機構は2023年6月、台場山トンネルの工事の様子を公式YouTubeチャンネルで公開。「変形を抑えるための補強をしながらトンネル掘削を行っており、進行は非常に苦労していますが、引き続き安全第一で工事を進めていきます」としています。

※一部修正しました(8月3日16時15分)。