本当なら久しぶりの超音速戦闘機。

中国へのけん制も考えての要請か?

 アメリカがアルゼンチンに対し、F-16を次期戦闘機として選択するよう強く要請していると、2023年7月26日にアルゼンチンのブエノスアイレス・タイムズが報じました。


アルゼンチンが購入を計画しているデンマーク空軍のF-16(画像:デンマーク空軍)。

 報道によると、バイデン政権は同国議会に対し、7億ドル(約990億円)でデンマーク軍が中古として売りに出すF-16を、アルゼンチンに売却できることを承認するように求めているとのことです。F-16に関してはアメリカのジェネラル・ダイナミクス(現:ロッキード・マーチン)製のため、売却にはアメリカの許可が必要となっています。

 ブエノスアイレス・タイムズが情報筋から聞いた内容によると、早ければ8月にも航空機が引き渡される環境が整うとのことです。

 アルゼンチンでは、2015年に「ミラージュIII」戦闘機が退役して以降、ゼロになった超音速戦闘機を最大12機購入するため、デンマーク空軍で運用された中古機体のF-16のほかに、インド製の「テジャス」や、中国・パキスタンが共同開発したJF-17を候補として挙げていました。

 その中でもデンマーク軍のF-16はほかの2機とは違い、フォークランド紛争以降、アルゼンチンが制裁を受けているイギリス製の部品を使っていないため有力候補と見られていましたが、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、同国もF-16を求めていることから先行きが不透明になっていました。

 そのため、再びJF-17、「テジャス」のアルゼンチンへの売り込みも過熱しており、懸念材料であったイギリス、マーチンベイカー製の射出座席を切り替える提案などを、それぞれの製造国である中国とインドがしていました。

 アメリカがこうした行動をとった背景としては、南米への中国の影響力が強まるのを阻止したいという狙いがあるようです。2023年1月にはウルグアイ海軍が、中国造船貿易有限公司(CSTC)に新しい哨戒艦を提供してもらう予定だったのをノルウェー海軍の中古哨戒艦購入に変更したことがありますが、その際もアメリカの影響が関係していたと噂されています。

 なお、仮にF-16が導入されることになれば、8年ぶりの超音速戦闘機であり、フォークランド紛争後では初の戦闘機購入となります。