スマートはメルセデス・ベンツの子会社から中国の吉利との合弁会社に衣替えした。写真は中国で生産されている小型EV「スマート#1」(同社ウェブサイトより)

ドイツと中国の合弁EV(電気自動車)ブランドである「スマート(Smart)」は7月13日、シリーズAの資金調達ラウンドで社外から2億5000万〜3億ドル(約346億〜415億円)を調達する計画を発表した。

このラウンドでは、中国のリチウム大手の天斉鋰業(ティエンチー・リチウム)がリード投資家となり、1億5000万ドル(約208億円)を出資する予定だ。

新たな合弁会社に事業移管

スマートはもともと、スイスの時計メーカーのスウォッチとドイツ自動車大手のメルセデス・ベンツグループが1989年に共同で立ち上げたブランドだ。その事業会社は1998年にメルセデス・ベンツの100%子会社となり、同年から2人乗りのマイクロカーの販売を開始した。

それから20年余りを経た2019年、メルセデス・ベンツは中国の民営自動車大手の吉利控股集団(ジーリー)と折半出資で新たな合弁会社「智馬達汽車(スマート・オートモービル)」を設立。スマートのグローバル事業を移管するとともに、販売するクルマをすべてEV(電気自動車)に転換する決断を下した。

スマートの説明によれば、シリーズAラウンドで外部の資本を導入した後も、吉利とメルセデス・ベンツは対等の出資比率を維持する。調達した資金の使途について、スマートは「グローバル市場での事業展開に振り向ける。具体的な使い道は後日発表する」と、財新記者の取材に回答した。


スマートに出資予定の天斉鋰業は、リチウムイオン電池の原材料の世界的大手だ。写真は同社が開発権益を持つオーストラリアの鉱山(天斉鋰業のウェブサイトより)

なお、天斉鋰業がリード投資家を引き受けた狙いは、事業領域を(リチウムイオン電池の原材料から)サプライチェーンの川下方向に拡大することで、新たな成長機会を模索することにあると見られている。

設計はベンツ、生産は吉利

現在のスマートは中国浙江省の寧波市に本社を構え、販売・マーケティングの拠点を中国とドイツに置く。そのEVは設計をメルセデス・ベンツが、エンジニアリングと生産を吉利が担当している。


本記事は「財新」の提供記事です

新生スマートの第1号モデルである「スマート#1」は2022年6月に発表され、同年9月から中国市場で、2023年3月からヨーロッパ市場でデリバリーが始まった。2023年6月には第2号モデルの「スマート#3」を中国市場に投入。2024年初めにはヨーロッパ市場でも発売する予定だ。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は7月15日

(財新 Biz&Tech)