ANAが長距離国際線むけのフラッグシップ、ボーイング777-300ERの一部に、2019年から新鋭の客室仕様を導入。このセールスポイントであるビジネスクラスの「THE Room」に実際に搭乗しました。

64席の「THE Room」を配するANAの777

 ANA(全日空)が長距離国際線むけのフラッグシップ、ボーイング777-300ERの一部に、2019年から新鋭の客室仕様を導入しています。この新仕様のなかでセールスポイントのひとつが、ビジネスクラスの「THE Room」です。このビジネスクラス、実は”ファーストクラス顔負け”の座席設備を有しているともいえるでしょう。今回、実際にこのシートで空の旅を体験してみました。


ANAの「THE Room」を配したボーイング777-300ER(乗りものニュース編集部撮影)。

「The Room」が搭載された新仕様のボーイング777-300ERは212席で、内訳はファーストクラス8席、プレミアムエコノミークラス24席、エコノミークラス116席、そしてビジネスクラス「THE Room」を64席配しています。

 その名の通り、自宅にいるかのように過ごせる「部屋」のようなつくりとなっているそうで、フルフラットシートを搭載。座席配置は、同社ファーストクラスと同じ横1-2-1列で、全席から通路にダイレクトで行けるレイアウトとなっています。また、進行方向と、その逆向きのシートを向かい合わせに設置し、それぞれのサイドテーブルの下に、それぞれのフットレストが来るようにすることでスペースを有効活用し、居住性が大幅に向上したといいます。

 なお今回、筆者は後ろ向き座席に搭乗しましたが、離着陸時は新鮮な感覚があったものの、巡航中は違和感なくすごすことができました。

 実際に座ってみると、背もたれは一般的なビジネスクラス2席分はあろうかという横幅があります。シートベルトは自動車のようなショルダータイプのものが採用。座席装備品は枕ふたつと毛布、特注のシーツ、ソニー製のヘッドホンなどで、このほか、アイマスクやフェイスミストなどが封入されたアメニティポーチも配られます。

 各席にはUSBポートが座席横・モニター横の2か所に、電源コンセントがモニター横の1か所に設置されています。モニター横のスペースは収納棚となっており、ロングフライトのときに手元に置いておきたいドリンクやメガネケースなどをしまっておくことができます。また、収納棚の扉裏には鏡も。女性のメイクアップにも役立つほか、コンタクト使用者も化粧室に行かずここで脱着ができるので、痒いところに手が届く装備といえそうです。

「THE Room」の凄さとは?

「THE Room」が”ファーストクラス顔負け”とされるのは、その広さはもちろん、その居住性の高さにあるといえるでしょう。設置されている機内モニターは4K対応で、フルHD画質に対応。大きさも、従来のファーストクラスとほぼ同じ24インチ(以前は17インチ)となっています。


ANAの「THE Room」の乗客にサービスするCA(乗りものニュース編集部撮影)。

 シートのクッションには、西川(東京都中央区)と共同開発した立体構造ウレタンを使用。通常のシートの場合、座面や背もたれが硬すぎてほとんど寝られないことが多い筆者ですが、「THE Room」はフルフラットにすると、ベッド感のある、若干クッション感をもった寝心地です。先述の通り背もたれ部分が大きく、それを活用すれば長身の人でもしっかり体を伸ばして休むことができますので、この安眠誘発度はこれまでのビジネスクラスでも屈指かもしれません。

 また、各席には可動式の仕切り板があり、フルフラットにした状態でこれを展開させると、“完全お一人様”状態に。この囲まれ感は一般的なビジネスクラスとは一線を画したものということができるでしょう。

 ANA長距離国際線最新仕様機にはファーストクラスも設置されていますが、もし機内で最高ランクの食事やサービスを受けたいといったことでなければ、この「THE Room」は、ある意味コストパフォーマンスに優れた選択肢のひとつでしょう。それほど、他社・従来のビジネスクラスと比較しても頭一つ抜けた広さ・快適性をもつ機体といえそうです。もちろん、ファースト・ビジネスクラスとも手軽に乗れる値段ではありませんが……。

 同社によると、2023年7月現在は、「THE Room」搭載機はニューヨーク線、ロンドン線の2路線に投入されているそう。ただ、過去には別の北米・欧州線に投入されていたこともあります。これらの地域へビジネスクラスに乗って旅行・出張するということであれば、この「THE Room」は、最強の選択肢のひとつになりそうです。