大雨時に、アンダーパスなど水が溜まりやすい部分が冠水することがあります。突っ切れば通り抜けられると過信すると、思わぬ結果を招くことがあります。

夏の降水期に多発する「冠水時の水没事故」

 2023年も8月に入り、大雨や台風のシーズンが本格的に到来。全国で極地的な激しい雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」が頻発するようになっています。九州・中国地方では7月3日から大雨で鉄道の運休や高速道路の通行止めが発生し、明けた7月8日にも線状降水帯が発生し大雨となっています。

 このような大雨時にクルマで走行する場合、特に注意すべき場所は、立体交差のアンダーパスなど「冠水」が発生しやすいところです。埼玉県は昨年3月にWebサイトで「少しでも危険だなと思った際には、無理をせずにアンダーパスに進入しないようにお願いいたします」と発信しており、他の道路管理者も注意を呼びかけています。


冠水した道路のイメージ(画像:写真AC)。

 こうした箇所には、電光掲示板で事前に「冠水注意」「路面冠水」「通行注意」「通行止め」などの標示がおこなわれています。しかしそれでも「突っ切ればザバーッとなるだけで大丈夫だろう」と、盛大な水しぶきをあげてアンダーパスへ突っ込んでいく車が跡を絶ちません。

 しかしこのような行為は一歩間違えれば非常に危険な行為です。2008(平成20)年8月に栃木県鹿沼市で、東北道と交差するアンダーパスを通行中の自動車が冠水で立ち往生し、運転手が死亡する事故が発生。2010(平成22)年には岐阜県可児市で計4台が水没し3人が死亡または行方不明。2016年にも愛知県清須市でワゴン車が水没する死亡事故が起きるなど、悲惨な事故が相次いでいます。

 ロードサービスの担当者は「アンダーパスなど冠水しやすい地点では、大雨時に水位があっという間に上昇します」と話します。冠水地点で一度スタックしてしまうと、状況は急速に悪化していき、取り返しのつかないことになります。

 もちろん、アンダーパスなど水が溜まる部分では、排水施設が整備され、必要に応じてポンプ排水する仕組みがあります。しかし昨今のゲリラ豪雨による急激な雨水流入にはなかなか対応しきれないという頭の痛い問題があるのです。

水深5cmでも取り返しの付かない結果になる場合が

 JAF(日本自動車連盟)の呼びかけでは、「水深5cmから10cmほど」の浅い状態でも油断は禁物。水が濁っていると底の状態がわからず、思わぬ脱輪やスタックを招くおそれがあるからです。


冠水時は危険を示す表示が行われる(画像:埼玉県)。

 さらに水位が上昇するとどうなるのでしょうか。愛知県のパンフレットでは、以下の目安が示されています。
・水深30cm:車が動かなくなります
・水深50cm:ドアが開かなくなります
・水深100cm:車が浮いて流されます

 水圧でドアが開かなくなった場合、脱出方法は「窓ガラスを割る」しかありません。JAFは「万が一に備えて、脱出用ハンマーを車内の手に届くところに常備しておくことが大切です」と呼びかけています。JAFの実験では、スマホやクルマのキーなど脱出用ハンマー以外のものでは、固いガラスを割ることはできないという結果も出ています。

 また、事前に冠水の危険がある場所を知っておくことも大切です。たとえば、国土交通省 関東地方整備局は「関東地域における道路冠水注意箇所マップ」を公表。都県ごとに危険な位置を地図上に示しています。

 しかし鉄則は「荒天時はできるだけ不要不急の外出は避ける」さらに「冠水注意」などの標示があれば絶対に通行しようと思わないことです。


※誤字を修正しました(8月2日19時55分)。