「戦うロイヤルファミリー」が操った航空機とは? 英軍用機ショーに皇太子一家 実は代々パイロット
イギリスで開催された世界最大の軍用機ショーをウィリアム皇太子一家がサプライズ訪問。幼い王子も興味深々の様子でした。実は代々パイロットを務めているロイヤルファミリーは、どのような航空機を操ってきたのでしょうか。
RIATにウィリアム皇太子一家が登場!
2023年7月14日(金)から16日(日)までイギリス空軍のフェアフォード空軍基地で開催された世界最大級の軍用機ショー「ロイヤル・インターナショナル・エアタトウー(RIAT)」。その会場をイギリスのウイリアム皇太子一家がサプライズ訪問しました。
RIAT2023に展示されたC-17輸送機。ウィリアム皇太子一家も視察した(画像:イギリス空軍)。
ロイヤルファミリーの構成員であるウィリアム皇太子一家が、ロイヤル(王室の)の名を冠するイベントを訪問するのは不思議なことではありませんが、ウィリアム皇太子は3年間、イギリス空軍第22飛行隊で捜索救難ヘリコプターであるウエストランド「シーキング」のパイロットして勤務し、フォークランド諸島でも任務に就いていた、航空と縁の深い人物です。
イギリスの皇太子や王族は伝統的にイギリス軍へ入隊し、第一線部隊での勤務を終えた後もしばらく軍にとどまりつつ、王族としての公務を行ってきました。ただウイリアム皇太子はその伝統を打破しています。
ウィリアム皇太子は2013年に空軍の第一線部隊における「シーキング」パイロットとしての勤務を終了後、再訓練を受け、2015年3月から2017年7月まで、イーストアングリカン地方の民間救急ヘリコプター、つまりドクターヘリのパイロットとして勤務。ユーロコプター(現:エアバス・ヘリコプターズ)のEC135Te2を操縦していました。
現在のウイリアム皇太子はイギリス軍の第一線部隊で勤務はしていませんが、空との縁は切れておらず、ユーロファイター「タイフーン」戦闘機の基地であるイギリス空軍のコニングスビー基地で名誉准将を務めており、また家族旅行の際には自らヘリコプターを操縦することもあるようです。
ウィリアム皇太子の弟であるヘンリー王子は、サンドハースト王立陸軍士官学校を卒業後、イギリス陸軍に入隊。アフガニスタンへ派遣され、一時期は地上から航空機に攻撃目標を指示する前線航空統制官として勤務していたと伝えられています。2012年にアフガニスタンに派遣された際には、陸軍航空隊のWAH-64戦闘ヘリコプター(AH-64戦闘ヘリコプターのイギリスライセンス仕様機)に搭乗して空対地ミサイルを発射し、タリバンの兵士を殺害したとも言われています。
空母に乗り戦地で命を張った王子とは
ヘンリー王子と同様にトラブルが多く、皇太子の弟であり、またトラブルにより軍の名誉職を返上しているという共通項を持つアンドルー王子(故エリザベス2世女王の次男)も、ヘンリー王子と同様、イギリス軍人として戦地へ派遣されています。
1978年にイギリス海軍へ入隊したアンドルー王子は、海軍兵学校卒業後、まず小型汎用ヘリコプターのウエストランド「ガゼル」で操縦訓練を受けました。後に当時のイギリス海軍で主力対潜水艦ヘリコプターとして使用されていた「シーキング」に機種転換し、空母「インヴィンシブル」に乗艦して、1982年のフォークランド紛争に従軍しています。
アンドルー王子はフォークランド紛争中、他のパイロットと同様にアルゼンチン軍の対艦ミサイルに対する囮の役も務めており、その姿勢は国民からも高く評価されていました。このため紛争が終結して「インヴィンシブル」がイギリスに帰還した際には、エリザべス2世女王と王配のフィリップ殿下がポーツマスまで出迎えに赴いています。
アンドルー王子のすぐ下に弟であるエドワード王子も大学卒業後にイギリス海兵隊に入隊していますが、短期間で除隊しており、航空機での勤務経験はないようです。
しかしアンドルー、エドワード両王子の兄であり、ウィリアム皇太子とヘンリー王子の父親でもある現イギリス国王のチャールズ3世は、ケンブリッジ大学を卒業後、イギリス空軍と海軍に入隊。空軍のデ・ハビラント・カナダDHC-1「チップマンク」初等練習機とBAC「ジェット・プロヴォスト」ジェット練習機で航空機の操縦訓練を受けており、イギリス空軍第32飛行隊で2022年3月まで王室専用機として使用されていたBAe(現BAEシステムズ)「146」ターボファン旅客機や、小型ターボプロップ機のホーカーシドレー「アンドーバー」の操縦などを行っています。
ウィリアム皇太子も乗っていたウエストランド「シーキング」(画像:イギリス国防省)。
ウィリアム王子の長男ジョージ王子と次男のルイ王子は、2022年に崩御したエリザベス2世女王の棺をスコットランドのバルモラル城から輸送したC-17「グローブマスターIII」輸送機に特段の興味を示しており、RIATでジョージ王子はアメリカ空軍から参加したC-17の貨物室の操作に挑戦。またルイ王子は機内に搭載された四輪バイクにまたがり、報道陣に手を振ってみせたと報じられています。
今はまだ無邪気な二人の王子ですが、イギリス王室の伝統に則れば彼らもまた、近い将来軍で航空機の操縦を学び、勤務することになると思われます。