コロナ前比で利用の回復が進んだJR東日本の駅をランキングした

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JR東日本の駅で1日平均乗車人員トップの座を維持し続ける新宿駅(撮影:梅谷秀司)

コロナ禍による利用低迷から復活を遂げつつある鉄道。それを裏付けるのが駅の利用者数だ。エリア内各駅の乗車人員を毎年公表しているJR東日本は7月7日、2022年度の乗車人員データを公開した。

行動制限などの影響を大きく受けた2020〜2021年度と比べ、2022年度は上位100駅ですべて乗車人員が増加。1日平均乗車人員が34万6658人でランキング3位となった東京駅は、前年度比で22.7%増えた。

だが、コロナ禍前の2019年度と比べた場合の乗車人員は3割以上減の74.9%で、まだ回復途上といった段階。都市部の鉄道利用者の主軸を占める定期客の割合も53.7%から47.4%に下がっており、鉄道利用の実態が変化してきたことがうかがえる。

コロナ前に比べて回復率が高い駅は?

そこで、2022年度の乗車人員上位100位に含まれる駅のうち、コロナ前と比べて回復率が高いのはどの駅か、逆に乗車人員が減ったのはどの駅かなどについて、2019年度のデータと比較して集計した。

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まずは2022年度の乗車人員ランキングだ。

トップ10の駅は、1位が新宿(60万2558人)、2位池袋(45万8791人)、3位東京(34万6658人)、4位横浜(34万0536人)、5位渋谷(29万2631人)。以下、6位品川、7位大宮、8位新橋、9位秋葉原、10位北千住と続く。

トップ10の顔ぶれは2019年度と同じだが、渋谷と品川、新橋と大宮の順位が入れ替わっている。品川は2016年度に渋谷と逆転してトップ5入りし、当時は渋谷の「地盤沈下」と品川の躍進が話題となったが、コロナ禍の2020年度に再び逆転した。


2022年度の1日平均乗車人員上位100駅のうち、2019年度比で乗車人員が減った駅を比較すると、品川は1位の新宿(17万2828人減)に次いで2位(12万8687人減)。以下、3位東京、4位池袋、5位新橋といずれも都心部の駅だった。渋谷も7位で約7万3000人減っているが、品川の減少が上回るため逆転が続いている。


定期客が大きく減った品川

品川駅は上位100駅の中で乗車人員の回復率が最も低かった駅で、2019年度比で65.9%と、3割以上減少している。同駅は東海道新幹線や羽田空港アクセス路線の京急線と接続する「東京の玄関」の1つ。コロナ禍による行動制限などでこれらの利用者が戻りきっていないのが減少理由のように思えるが、データを見ると実は「定期客」が大きく減っている。

2019年度、品川駅の1日平均乗車人員37万7337人のうち定期外客は15万7065人、定期客は22万0272人で、定期客が58.4%を占めていた。一方、2022年度の1日平均乗車人員は24万8650人で、定期外客は12万3857人、定期客は12万4792人と、定期客の比率は50.2%まで下がっている。定期外客数はコロナ前の8割近くまで回復しているものの、定期客については6割に満たない状態だ。

品川駅の定期客数は、2020年度に14万5447人へと一気に約7万4900人減少。翌2021年度もさらに減って12万0579人となった。上位100駅中で定期利用者比率の減少率を比較すると、1位は68.9%から58.9%へと9ポイント低下した大崎駅、次いで2位が58.4%から50.2%へと低下した品川駅だった。

乗車人員に占める定期客の比率が下がった駅をランキングすると、大崎・品川・武蔵小杉・田町・大森・大井町と、上位6位には品川周辺、または京浜東北線沿線など同駅へのアクセスが便利な路線の駅が並ぶ。テレワークや定期券を利用しない通勤が広がったエリアと考えられそうだ。


回復が進んだ駅はどこか

では、最も利用者数の回復が進んでいる駅はどこか。2019年度と比較すると、1位は91.4%まで戻った桜木町駅(2022年度6万4698人)。同駅は横浜みなとみらい21地区の玄関口で、レジャー・観光客の復活が利用者数回復の要因になったと考えられる。実際に、定期外客数は97.1%と、コロナ前とほぼ遜色ないレベルに戻っている。

2位は武蔵野線の北朝霞。同駅は2019年度比で平均乗車人員が90%まで回復しており、定期客比率も67.1%と比較的高い状態を維持している。以下、3位は南越谷、4位は金町、5位は辻堂と、都心のターミナルよりも郊外の駅で回復が進んでいる状況が見てとれる。全100駅の平均値は約81%で、コロナ前比で2割減程度の状態だ。

一方、2021年度と2022年度を比べると、最も増加率が高かったのは東京ディズニーリゾートの玄関口である京葉線の舞浜駅。1日平均乗車人員は1万7091人増え、36.5%増加した。次いで2位は東京ドームなどの最寄り駅である水道橋(32.9%増)、3位は若者の街原宿(24.3%増)、4位は首都のターミナルである東京(22.7%増)、5位は韓国文化で人気を集める新大久保(21.9%増)と、観光要素の強い駅が並んだ。いずれもレジャーなどの定期外客増が牽引した形だ。新大久保は2019年度比でも88.1%まで回復している。


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足元では鉄道利用の回復がさらに進み、2023年度の駅平均乗車人員はさらに増加しそうだ。一方で、定期客についてはすでに頭打ちに近い状態と多くの鉄道関係者は話す。テレワークの定着に加え、都心各地で進む再開発による影響など、駅の利用者数は鉄道利用の回復だけでなく、社会の姿や都市構造の変化を映すバロメーターといえるだろう。



(小佐野 景寿 : 東洋経済 記者)