先月末、英国王室が2022年4月から2023年3月までの王室助成金に関する会計報告書を発表した。スタッフの賃金にジェンダー格差があることが発覚、物議を醸している。

問題になっているのはチャールズ国王とカミラ王妃、それぞれの私設秘書の賃金格差。国王の男性秘書クライブ・アルダートンは年収20万5,000ポンド(約3,700万円)から21万ポンド(約3,850万円)であるのに対して、王妃の女性秘書ソフィー・デンシャムは9万ポンド(約1,650万円)から9万5,000ポンド(約1,740万円)である。その差、2倍以上。

元王室廷臣もこの数字に驚いている。新聞「エクスプレス」に「格差に衝撃を受けた。またソフィー・デンシャムの給与にも驚いた。非常にがっかりだ」。廷臣たちによると2人の仕事ぶりに差はないという。むしろデンシャムのことを「本物の職人」と称賛、「彼女の業務は広範囲に及び、恐ろしく忙しい」と語っている。新聞「ロンドンタイムズ」によると「デンシャムは王妃の公務に常に同行しているがアルダートンは"非常に注目を集める公務”だけ」。上司、つまり国王と王妃のポジションの違いを踏まえても2人の給与は不平等だと見ている。

また2人を知る関係者は「ジェンダーが理由だと考えようとなかろうとこの格差には疑問が残る」と指摘する。新聞「エクスプレス」によるとアルダートンが国王の下で働き始めたのは2006年。デンシャムは2008年から王妃のスタッフとして働き始めた。年功序列でここまでの格差は生じないと指摘している。またデンシャムが王妃のオフィスに入った時期は公務が増え始めた時期。王妃がそれに馴染めるよう、デンシャムがサポートしていた。また当時はまだ「ダイアナからチャールズを奪った女」と批判されがちだった王妃の好感度をアップさせるのにも大きく貢献したと同紙は報じている。デンシャムは2015年に私設秘書補佐に昇進、2021年から私設秘書を務めている。

ちなみにアルダートンはバッキンガム宮殿からほど近いところにあり、国王が所有するマールボロハウスに住んでいる。隣家は国王夫妻が住むクラレンスハウス。アルダートンの家賃は給与から差し引かれているが、その額は非公開。

王室をスリム化、モダン化しようとしている国王。同紙を初めとするイギリスマスコミからは賃金格差を解消しなければその努力も台無しだという声も出てきている。国王の対応に注目が集まっている。