この記事をまとめると

フィアットから2人乗りのEV、トポリーノが登場した

■全長×全幅×全高は95×55×60インチ(およそ2300×1320×1440mm)

■初代フィアット500(通称トポリーノ)のオマージュだ

トポリーノがキュートなシティコミューターとなって復活

 小っちゃくてガジェット感あるクルマが好きな方に耳寄りなニュース! フィアットがマイクロミニともいえるEVを新たにリリース、その名も「トポリーノ」。これは1930〜1950年代にイタリアで大ヒットした初代フィアット500のニックネームにほかなりません。小さなネズミという意味の新型EVは、ご先祖さまのトポリーノ同様にキュートなシティコミューターに仕上がりました!

 フィアット500は最近になってEVをラインアップし、ヨーロッパ各地で大人気だそうですが、トポリーノはご覧のとおり500よりもさらにコンパクトで、アメリカのピックアップトラックなら荷台に余裕で収まるクルマ(プロモムービーではクルーザーのリヤエンドにチョコンと載せています)。全長×全幅×全高は95×55×60インチ(およそ2300×1320×1440mm)で、ふたつのシートは大人ふたりが不満なく乗り込めるサイズ。

 じつは、このトポリーノは先に発売していたステランティスグループのEV、アミ(いうまでもなくシトロエンのアミをオマージュしたネーミング)をベースに製作されたもの。それゆえ、ボディサイズが似通っているだけでなくパッケージングそのものもほぼ共通です。

 とはいえ、ルックスはアミの前後対称に比べて、フィアットらしいキャラクターがにじみ出たもの。フロントマスクにルパン三世が乗っていた500の雰囲気を漂わせ、ガバっと天井が広がるキャンバストップもまた500のアイコンと呼べる装備。極めつけは、ドアの代わりにぶら下げられたシャレたロープでしょう。これは、ビーチカーと呼ばれたシーサイドリゾート向けのマイクロカーをイメージしたもので、昔のフィアット500だけでなく、それこそアミや2CVでもよく見られたカスタム。おおらかな時代ゆえのアクセサリーともいえますが、これで現代の法規をクリアできるかは公表されていません。せっかくだったら、ビーチカーだった500で使っていた籐のシートっぽく仕上げてくれたら、雰囲気マシマシだったんですがね。

 ハードについては5.45kWのバッテリーを搭載し、最高速は45km/h程度、航続距離は70kmとされています。製造国はモロッコとの情報もありますが、それが正しいとするとまんまアミの製造ラインということに。

小まわり性能バツグン!

 また、アミの例から考えると、やっぱり市街地のコミューター向きで、かの地では「Free2Move」などシェアリングサービスで使われることも多いとか。たとえば、某国では1分間31円程度の料金設定がなされているそうで、同サービスの小型スクーターが1分19円という料金に比べれば、ふたり乗りや雨の日を考えると経済的で便利かと。

 また、便利といえばコンパクトなサイズゆえの小まわり性能は驚くほど! アミの最小回転半径は3.6mと自転車みたいなUターンもできちゃうわけで、当然トポリーノもその美点を受け継いでいることでしょう。もともと、イタリアはちょっと裏道に入るとトポリーノのサイズでないと走りたくない細道ばかり。1950年代に初代がバカウケしたのも、ミニマムサイズがそうした交通環境にマッチしたことと決して無関係ではなさそうですから、やっぱりトポリーノのネーミングは的を射たもの。

 ただし、アミ同様にエアバッグ未装備とか小まわり効きすぎてロールオーバーしやすいといったネガを指摘する声もあるようです。もっとも、最高速45km/hでシティコミューターとして使うならさほど気にするポイントとも思えません。むしろ、鋭いハンドリングを利してルパン三世ばりに混雑した道をスイスイすり抜けていくシーンを想像したほうがはるかに楽しげですよね。

 気になるお値段ですが、1万ユーロ程度(およそ150万円)が予定されているようです。日本への正規導入についてアナウンスはありませんが、もしなかったとしても、並行輸入してでも乗りたい、そんな気にさせてくれます。

 なんでもかんでもEV化する風潮に辟易しかけていたクルマ好きにとっては、トポリーノの名前だけでなく、ビーチカーの雰囲気まで再現してきたことに、いくらか救われるのではないでしょうか。パレルモやシチリアのシーサイドで、EVトポリーノが走りまわっている姿、想像するだけでいまから楽しみでなりません!