雅子さまの岩手公務で「絶対に撮ってはいけない」異例の通達、禁じられた経緯を宮内庁広報室に聞いた
《今後とも国民の幸せを願い、二人で協力しながら務めを果たしていくことができればと考えています》
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両陛下は6月9日、ご結婚30周年にあたり、文書で感想を綴られた。
インドネシアご訪問は「お返し」
「外交官として仕事をするのも、皇族として仕事をするのも、国のためには同じ」
外務省のキャリアウーマンだった雅子さまの心を動かした陛下のプロポーズ。それから30年以上がたち、雅子さまは皇后として、初めて海外を親善訪問される見通しだ。
「今年4月、“両陛下が6月下旬にインドネシアを訪問される”と公表されました。当初、雅子さまに関しては“ご体調に支障がなければ”との条件つきでしたが、同行される方向で調整が進んでいます。日程は、6月17日から23日まで。ご訪問に先立って15日に開かれる記者会見は、陛下のみがお出ましになる予定です」(皇室担当記者)
日本とASEANの友好協力関係が50周年を迎える今年、両陛下がインドネシアを訪問されることは意義深い。
「'19年にインドネシアのジョコ大統領から“天皇陛下を招待したい”との要望がありました」
そう話すのは、象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院の河西秀哉准教授。
「昨年7月には、来日中のジョコ大統領夫妻と両陛下が御所で会見されました。今回のご訪問は、そのときの“お返し”という意味合いも強いと思います。現地では、戦争の記憶に向き合うのはもちろん、若い人々や子どもたちとの交流を通して、次世代へつなぐ関係性の構築を意識されるのでは」(河西准教授)
日本と環境が異なる海外での公務は、雅子さまにとってハードルが高いといわれる。
「適応障害のご療養下においては、暑さや湿気が大敵です。雅子さまが皇室入り後、アジアを訪問されるのは今回が初めて。蒸し暑いインドネシアへお出かけになるのは、それだけでもご負担が大きいことと存じます」(宮内庁OB)
そうした事情もあってか、インドネシア訪問の日程は、なかなか公表されなかった。
「両陛下は6月3日から1泊2日で、岩手県を訪問されました。雅子さまは、大きい行事の後にはご体調が優れないこともあると聞きます。帰京後のご体調の経過を見て、ご同行を決断されたのでしょう」(皇室ジャーナリスト)
岩手県ご訪問では、陸前高田市で行われた『全国植樹祭』へのご臨席のほか、東日本大震災津波伝承館や大型商業施設『キャッセン大船渡』を視察されるなど、過密な行程で各地を巡られた。
かなり強い口調で警告
キャッセン大船渡内にある『Hy's cafe』を経営する下舘博美さんは、両陛下とのご懇談をこう振り返る。
「私が“震災後、皆さんから家具をご支援いただいたおかげで、仮設店舗で営業を再開することができました”と申し上げると、雅子さまは、現物のテーブルをご覧になりながら“よかったですね”と、頷いてくださいました。遠方までお越しいただき、ご体調も心配だったのですが、お疲れをみじんも感じさせず、終始穏やかな表情で話しかけてくださいました」
同じくキャッセン大船渡にある『鬼椿市民雑貨店』の女性店員は、
「雅子さまは、言葉に詰まってしまった私を気遣い、緊張をほぐすように話しかけてくださいました。雰囲気が本当に柔らかかったです」
ご訪問先の人々と、温かい交流をされた両陛下。その一方で、ご訪問中には現場が“ピリつく”事態もあったという。
「『全国植樹祭』の式典会場で、報道陣が取材にあたっていたときのこと。会場に到着される両陛下のお姿を取材すべく、現場でカメラマンが待機していたところ、“車から降りるところは絶対に撮ってはいけない”と、かなり強い口調で警告がありました」(前出・皇室担当記者、以下同)
これまで、皇室の方々の“御着”取材においては、車が敷地内に入るところから、降車して歩き出されるところまで、一連の流れをカメラに収めるのがお決まりだった。
「テレビメディアなどは、降車シーンが撮影できないと、車の入場から突然、式典の場面に変わり、違和感のある映像になってしまいます。そうした事情はくんでもらえず“違反をした場合、全体責任となり今後の取材ができなくなる”と言われました」
「ルール」が厳しくなった理由
降車時の撮影NGという“異例通達”の理由は説明されなかったという。そこで、降車時の撮影が禁じられた経緯について宮内庁広報室に問い合わせたところ、
《第73回全国植樹祭式典会場の御着時の撮影取材については、御降車からお出迎え者御挨拶終了までとされていたと承知しています。
行幸啓先の取材については、関係機関とその都度調整を行っており、今回の取材についても、所要の調整の結果、設定されたものであると承知しており、特に新たなルールが定められたものであるとは認識しておりません》
とのこと。前出の皇室担当記者は首を傾げる。
「式典担当者や現地の警察官の独断で、降車時の撮影が禁じられたとは到底思えません。宮内庁も当然、認識しているものだと思っていました。現場での厳しいアナウンスを受けて、関係者の間で“情報統制では”という声も上がったほどです」
5月30日に天皇ご一家が日本橋高島屋を訪問された際も、こんな通達があった。
「ご一家の背後に『HERMES』の店舗が写り込んでいるカットがありました。後日、宮内庁から“写真を使用する際はHERMESの文字を消すように”と指示が。基本的に報道写真を加工するのは避けたいのですが……」(同・皇室担当記者)
商標の問題もあるのだろうが、ルールは日に日に厳しくなっているようだ。
「理由は定かではありませんが、一部では雅子さまのご心労を減らすためではないか、と囁かれています」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)
以前から雅子さまは、報道陣に囲まれる状況やフラッシュ撮影に苦手意識を持たれているといわれてきた。
「インドネシア訪問を目前に控え、ナーバスになっておられるのでしょう。例えば、降車時に足元がよろけたり、お召し物が乱れたりしたら、一部の国民から揶揄されかねません。そうした不安を極力取り除くために、撮影のタイミングを限定しているという見方が強いです」
雅子さまのご体調は大切だが、“閉ざされた皇室”へ退行してはならないだろう。
河西秀哉 名古屋大学大学院人文学研究科准教授。象徴天皇制を専門とし、『近代天皇制から象徴天皇制へ―「象徴」への道程』など著書多数