岡安学の「eスポーツ観戦記」 第118回 年々レベルが上がる「第5回 全国高校eスポーツ選手権」、選手にとっても大きな存在に
2023年1月29日、2月11日、12日に、「第5回 全国高校eスポーツ選手権」が開催されました。1月29日にオンラインで行われたのは『フォートナイト(Fortnite)』部門、2月11日にオフラインで行われたのは『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends、LoL)』部門、2月12日にオフラインで行われたのは『ロケットリーグ』部門。オフラインの会場はLFS池袋です。
残念ながら有観客とはなりませんでしたが、LFS池袋の隣にある映画館「新文芸坐」にて、パブリックビューイングが行われました。今回の総エントリー数は278校690チーム。『フォートナイト』部門が189校420チーム、『LoL』部門が103校157チーム、『ロケットリーグ』が84校113チームです。
『LoL』と『ロケットリーグ』はLFS池袋にてオフラインで開催されました
『フォートナイト』の決勝戦は、予選を勝ち抜いてきた40チーム80名によるデュオモードで実施。「生存ポイント」と「撃破ポイント」をゲームごとに集計し、全5ゲームの総合ポイントがもっとも高いチームが優勝です。
「生存ポイント」は、「VICTORY ROYALE」(1位)が10ポイント、2〜5位が7ポイント、6〜10位が5ポイント、11〜15位が3ポイント、16位以下はポイントなし。「撃破ポイント」は、相手を1人倒すごとに1ポイント獲得します。
5ゲームすべてでコンスタントにポイントを稼ぐチームが優勝に近づけるでしょう。ただし、1位獲得のポイントが高いので、最後まで勝敗の行方は分かりません。
結果は、ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「東海道中膝栗毛fn」が優勝。N高等学校の「ざじぽり」が4ゲーム目までに2度のVICTORY ROYALEを獲得し、優勝に手を掛けていましたが、「東海道中膝栗毛fn」がラストゲームに15ポイントを荒稼ぎし、逆転で勝利を収めました。配信では「フォートナイト下手くそおじさん」こと小籔千豊さんも応援コメントを書き込んでおり、場を盛り上げていました。
第5ゲームでVICTORY ROYALEを獲得し、逆転優勝を決めた「東海道中膝栗毛fn」
ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「東海道中膝栗毛fn」のむきむきしゅん選手
2回のVICTORY ROYALEを決め、MVPを獲得したN高等学校「ざじぽり」のZAZI-w-選手
『LoL』の決勝戦は、予選を勝ち抜いてきた4チームによるトーナメント。準決勝は1勝で勝ち抜けのBO1、決勝は2勝で勝ち抜けのBO3のルールを採用しています。
準決勝は、ルネサンス高等学校 新宿代々木キャンパス「強化5Q」と、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」、N高等学校「N1」と専門学校アートカレッジ神戸「ACK-A」の対戦。「Yuki飯食べ隊」は2022年の覇者で連覇を狙いますが、「強化5Q」の前に倒れてしまいます。「N1」は2021年の覇者で昨年の決勝トーナメントでクラーク記念国際の「Sesa飯食べ隊」に敗北した雪辱を果たすべく、「ACK-A」を倒し、決勝に進みます。
クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」
専門学校アートカレッジ神戸「ACK-A」
ルネサンス高等学校 新宿代々木キャンパス「強化5Q」
N高等学校「N1」
決勝戦は、連勝で「N1」が勝利し、見事栄冠を取り戻しました。ちなみに、「N1」のキャプテンであるrre選手は、1年生からレギュラーとして活躍し、夏に行われる「STAGE:0」では3連覇、「全国高校eスポーツ選手権」で1年と3年で優勝し、6大会中5大会で優勝する快挙を成し遂げています。今後この記録が塗り替えられることはあるのでしょうか。
圧倒的な強さで優勝したN高等学校「N1」
2年振り3回目の優勝を果たしたN高等学校「N1」
『ロケットリーグ』の決勝戦は、予選を勝ち抜いてきた4チームによるトーナメント。準決勝・決勝ともに3勝で勝ち抜けのBO5です。準決勝は飛龍高等学校「HEST:01」とN高等学校「ねこなま」、福井工業大学付属福井高等学校「サルの音楽隊」とN高等学校「ねこどう」の対戦です。どちらもN高校が勝利し、決勝戦はN高ダービーとなりました。
飛龍高等学校「HEST:01」
福井工業大学付属福井高等学校「サルの音楽隊」
N高等学校「ねこどう」
N高等学校「ねこなま」
2022年の『ロケットリーグ』部門では、N高等学校「Nポテ」が優勝していますが、そのメンバーであるSK選手が「ねこどう」に、motikun選手が「ねこなま」に所属しています。
どちらの選手が連覇をつかむのか、決勝の行方に注目が集まります。そんななか、優勝したのは「ねこなま」でした。「ねこなま」は2年生中心のチームながらプロリーグであるRLCSで活躍する選手がいる実力者ぞろい。個人技とチームワークが光り、他を寄せ付けませんでした。
RLCSで活躍するLunatic選手が大活躍。同じくRLCSで活躍するFurlashhも得点を重ね、MVPを獲得しました
優勝したN高等学校「ねこなま」
それぞれの部門が終了したあと、実況解説陣、アナリストなどが口をそろえて言っていましたが、毎年レベルが上がってきているのが見て取れました。『ロケットリーグ』と『フォートナイト』では、競技シーンでも活躍する選手が出場していたり、『LoL』でも最高ランクの選手がいたりと、高校生の域を超えた選手が出場しています。
また、「全国高校eスポーツ選手権」は今回で5回目。そのため、この大会に出場することを目標に中学生時代からプレイしている人も多く、年々、練度が上がっているわけです。今後も、よりハイレベルな大会になることが想像できるでしょう。
今回、決勝トーナメントに進出したチームの多くは、コーチがついており、しっかりとした指導のもと競技に向かっています。野球やサッカーなどもコーチや監督など、指導者の存在は大きいので、eスポーツでもその傾向が強くなっていくのではないでしょうか。部として、そのあたりを整備できる学校が、強豪校としての地位を築いていくのかもしれません。
高校eスポーツにおいて、大会の存在感が強くなってきていることも感じました。『LoL』で優勝し、高校3年間で5冠を達成したN高等学校「N1」のrre選手は、優勝インタビュー時に感極まったシーンがありました。これで高校のeスポーツが終わってしまうことを寂しく思ったからでしょう。
彼ほどのプレイヤーであれば、今後はプロシーンも視野に入ってくるでしょうし、大学へ進学したり、社会人になったとしても『LoL』を続けることは可能です。しかし、高校という限られた時間の中でプレイできるのはこれで最後。それだけに、「全国高校eスポーツ選手権」への取り組みが、高校生活での大切な思い出になる人も多いはずです。
優勝の喜びと同時に、3年間を先輩、後輩たちと一緒に過ごせてきたことが大きな糧となっていました
今回は、試合会場の隣のビルにある映画館にてパブリックビューイングも行われました。オフライン有観客とはちょっと違いますが、応援する方々は会場の臨場感を味わえたと思います。高校生大会はeスポーツファンだけでなく、保護者やクラスメイト、友人などが応援するイベントなので、次回こそは以前のようにオフライン有観客での開催に期待したいところです。
パブリックビューイングの会場となった新文芸坐
なお、実況解説陣からは、各タイトルのエンディングで次回の開催を要望する声がありました。今大会も発表が遅く、高校生にとってやきもきする期間があったので、開催自体は常態化し、開催時期の発表も早くしてほしいと感じました。
著者 : 岡安学 おかやすまなぶ eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas この著者の記事一覧はこちら
『LoL』と『ロケットリーグ』はLFS池袋にてオフラインで開催されました
『フォートナイト』の決勝戦は、予選を勝ち抜いてきた40チーム80名によるデュオモードで実施。「生存ポイント」と「撃破ポイント」をゲームごとに集計し、全5ゲームの総合ポイントがもっとも高いチームが優勝です。
「生存ポイント」は、「VICTORY ROYALE」(1位)が10ポイント、2〜5位が7ポイント、6〜10位が5ポイント、11〜15位が3ポイント、16位以下はポイントなし。「撃破ポイント」は、相手を1人倒すごとに1ポイント獲得します。
5ゲームすべてでコンスタントにポイントを稼ぐチームが優勝に近づけるでしょう。ただし、1位獲得のポイントが高いので、最後まで勝敗の行方は分かりません。
結果は、ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「東海道中膝栗毛fn」が優勝。N高等学校の「ざじぽり」が4ゲーム目までに2度のVICTORY ROYALEを獲得し、優勝に手を掛けていましたが、「東海道中膝栗毛fn」がラストゲームに15ポイントを荒稼ぎし、逆転で勝利を収めました。配信では「フォートナイト下手くそおじさん」こと小籔千豊さんも応援コメントを書き込んでおり、場を盛り上げていました。
第5ゲームでVICTORY ROYALEを獲得し、逆転優勝を決めた「東海道中膝栗毛fn」
ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「東海道中膝栗毛fn」のむきむきしゅん選手
2回のVICTORY ROYALEを決め、MVPを獲得したN高等学校「ざじぽり」のZAZI-w-選手
『LoL』の決勝戦は、予選を勝ち抜いてきた4チームによるトーナメント。準決勝は1勝で勝ち抜けのBO1、決勝は2勝で勝ち抜けのBO3のルールを採用しています。
準決勝は、ルネサンス高等学校 新宿代々木キャンパス「強化5Q」と、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」、N高等学校「N1」と専門学校アートカレッジ神戸「ACK-A」の対戦。「Yuki飯食べ隊」は2022年の覇者で連覇を狙いますが、「強化5Q」の前に倒れてしまいます。「N1」は2021年の覇者で昨年の決勝トーナメントでクラーク記念国際の「Sesa飯食べ隊」に敗北した雪辱を果たすべく、「ACK-A」を倒し、決勝に進みます。
クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」
専門学校アートカレッジ神戸「ACK-A」
ルネサンス高等学校 新宿代々木キャンパス「強化5Q」
N高等学校「N1」
決勝戦は、連勝で「N1」が勝利し、見事栄冠を取り戻しました。ちなみに、「N1」のキャプテンであるrre選手は、1年生からレギュラーとして活躍し、夏に行われる「STAGE:0」では3連覇、「全国高校eスポーツ選手権」で1年と3年で優勝し、6大会中5大会で優勝する快挙を成し遂げています。今後この記録が塗り替えられることはあるのでしょうか。
圧倒的な強さで優勝したN高等学校「N1」
2年振り3回目の優勝を果たしたN高等学校「N1」
『ロケットリーグ』の決勝戦は、予選を勝ち抜いてきた4チームによるトーナメント。準決勝・決勝ともに3勝で勝ち抜けのBO5です。準決勝は飛龍高等学校「HEST:01」とN高等学校「ねこなま」、福井工業大学付属福井高等学校「サルの音楽隊」とN高等学校「ねこどう」の対戦です。どちらもN高校が勝利し、決勝戦はN高ダービーとなりました。
飛龍高等学校「HEST:01」
福井工業大学付属福井高等学校「サルの音楽隊」
N高等学校「ねこどう」
N高等学校「ねこなま」
2022年の『ロケットリーグ』部門では、N高等学校「Nポテ」が優勝していますが、そのメンバーであるSK選手が「ねこどう」に、motikun選手が「ねこなま」に所属しています。
どちらの選手が連覇をつかむのか、決勝の行方に注目が集まります。そんななか、優勝したのは「ねこなま」でした。「ねこなま」は2年生中心のチームながらプロリーグであるRLCSで活躍する選手がいる実力者ぞろい。個人技とチームワークが光り、他を寄せ付けませんでした。
RLCSで活躍するLunatic選手が大活躍。同じくRLCSで活躍するFurlashhも得点を重ね、MVPを獲得しました
優勝したN高等学校「ねこなま」
それぞれの部門が終了したあと、実況解説陣、アナリストなどが口をそろえて言っていましたが、毎年レベルが上がってきているのが見て取れました。『ロケットリーグ』と『フォートナイト』では、競技シーンでも活躍する選手が出場していたり、『LoL』でも最高ランクの選手がいたりと、高校生の域を超えた選手が出場しています。
また、「全国高校eスポーツ選手権」は今回で5回目。そのため、この大会に出場することを目標に中学生時代からプレイしている人も多く、年々、練度が上がっているわけです。今後も、よりハイレベルな大会になることが想像できるでしょう。
今回、決勝トーナメントに進出したチームの多くは、コーチがついており、しっかりとした指導のもと競技に向かっています。野球やサッカーなどもコーチや監督など、指導者の存在は大きいので、eスポーツでもその傾向が強くなっていくのではないでしょうか。部として、そのあたりを整備できる学校が、強豪校としての地位を築いていくのかもしれません。
高校eスポーツにおいて、大会の存在感が強くなってきていることも感じました。『LoL』で優勝し、高校3年間で5冠を達成したN高等学校「N1」のrre選手は、優勝インタビュー時に感極まったシーンがありました。これで高校のeスポーツが終わってしまうことを寂しく思ったからでしょう。
彼ほどのプレイヤーであれば、今後はプロシーンも視野に入ってくるでしょうし、大学へ進学したり、社会人になったとしても『LoL』を続けることは可能です。しかし、高校という限られた時間の中でプレイできるのはこれで最後。それだけに、「全国高校eスポーツ選手権」への取り組みが、高校生活での大切な思い出になる人も多いはずです。
優勝の喜びと同時に、3年間を先輩、後輩たちと一緒に過ごせてきたことが大きな糧となっていました
今回は、試合会場の隣のビルにある映画館にてパブリックビューイングも行われました。オフライン有観客とはちょっと違いますが、応援する方々は会場の臨場感を味わえたと思います。高校生大会はeスポーツファンだけでなく、保護者やクラスメイト、友人などが応援するイベントなので、次回こそは以前のようにオフライン有観客での開催に期待したいところです。
パブリックビューイングの会場となった新文芸坐
なお、実況解説陣からは、各タイトルのエンディングで次回の開催を要望する声がありました。今大会も発表が遅く、高校生にとってやきもきする期間があったので、開催自体は常態化し、開催時期の発表も早くしてほしいと感じました。
著者 : 岡安学 おかやすまなぶ eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas この著者の記事一覧はこちら