ミス・ユニバース(C)MY group

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 世界的ミスコンテストの草分けである「ミス・ユニバース」。1月14日に世界大会「第71回ミス・ユニバース2022」が行われ、本年度の世界代表はアメリカ代表のロボニー・ガブリエルさん(28)に決定。日本代表の坂本麻里ベレンさん(24)は、TOP16入りはかなわなかったが、折り鶴をモチーフにしたナショナルコスチュームで審査員や観覧者を魅了した。

【写真】2022年度ミス・ユニバース日本代表の坂本麻里ベレンさん

多様性にあふれた女性のための大会に

 そんなミス・ユニバース、近年は新しい価値観を積極的に取り入れている。新しい女性像を常に更新し、各国でトランスジェンダー女性(生まれたときの性は男性だが性自認は女性)が出場するなど、従来の「ミスコン」が持つイメージからするとかなり“変わった”というウワサ。

 そこで今回は、日本人女性初のミス・ユニバース・ジャパンのナショナルディレクターで、自身も世界大会への出場経験を持つ美馬寛子さん(36)に、現在のミス・ユニバースについてお話を聞いた。

 ミス・ユニバースの運営は、世界大会の運営会社と、ライセンスを付与された各国の運営会社に分かれている。2015年まで世界大会のオーナーだったのは、実業家時代のドナルド・トランプ氏。大統領選に出るタイミングで他社に売却した。

 今大会からの運営母体は「JKNグローバル・グループ」というタイのエンターテインメント会社で、2000万ドル(約26億円)で権利を買い取ったという。

「今回から初めて、ミス・ユニバースのオーナー、CEO、社長が全員女性になりました。各国に権利を付与されているナショナルディレクターも、7割〜8割が女性です。女性が女性のために運営している機構というのが、現在のミス・ユニバースの特徴です」(美馬さん、以下同)

 ちなみにオーナーである「JKN」のCEO、アン・ジャカポン・ジャクラジュタティップ氏はトランスジェンダー女性だという。現代の価値観はそんな点にも垣間見られる。

「今回はとてもダイバーシティに富んだ大会になったと思います。2018年にスペイン代表になった方もトランスジェンダー女性でした。応募要項にもあるのですが、『18歳〜27歳の、医学的に女性である』ということが条件で、現在戸籍やパスポートに“女性”と記載されていれば、生まれてきたときの性別が女性でなくても出場資格があります」

 また、前出のように日本大会も世界大会も、審査員はすべて女性で、いわゆる「男性目線」を排除していることも大きな特徴のひとつ。男性的な思考があったとも評されるトランプ氏の時代を思えば、隔世の感がある。

「異性からの目線では、どうしても恋愛感情や『好み』が審査に影響します。また、外見は『若いから美しくて当たり前』という面もあるので、内面が魅力的で、リーダーとしてついていけるかというスタンスで審査員は見ています。そこは他のコンテストと大きく違う面だと思います」

審査基準は内面重視「魅力的」な女性とは?

 そこで気になるのが「審査基準」。ミス・ユニバースにふさわしい女性像とは?

「リーダーシップがあり、魅力的な女性であることです。応募できるのは18歳以上28歳未満と年齢差があるのですが、若さを基準とした外見の美のみが基準になると28歳は18歳に勝つことは難しいでしょう。しかし、年齢や経験を重ねたからこそ備えられる魅力というものもあります。見た目ではなく、総合的な魅力を考えて審査するのです」

 では“魅力的”であることとは、どういうことなのだろうか?

「例えば来週、大切な人たちを集めてバーベキューパーティーをするとします。そのときに誰を呼びたいかを考えると、お高くとまった人や自分勝手な人ではなく、一緒にいて楽しい、自分や周囲の人を幸せにしてくれるような人に声をかけたいですよね。そういう人が『魅力的な人』だと考えます」

 ドレスでの審査、水着審査、面接など、さまざまな審査があるが、どこを見ているのだろうか?

「ドレス審査に関してですが、ミス・ユニバースは仕事として公式の夕食会などに参加する機会が増えるため、ゴージャスなドレスを着た状態でどれだけ優雅に自信を持ってパフォーマンスできるかを見ます」

 ミス・ユニバースとは別のミスコンテスト「ミス・アメリカ」では、2018年に水着審査が廃止された。だがミス・ユニバースでは今でも重要な審査基準だ。

「水着審査では、『心身の健康美』を見ます。セクシーであるとか、水着が似合う・似合わないという基準ではありません。太っているとかやせているといった自分の肉体にコンプレックスを持つことなく、どれだけ自分の身体に自信を持って健康美を表現しているかを審査しています」

 自分らしく自信を持って振る舞えることが、ミス・ユニバースの必須条件なのだ。

トレーニングも審査、世界が認める女性に

 ミス・ユニバース・ジャパンのセミファイナリストに選ばれた女性たちは、4か月にわたって集中的にトレーニングを行い、次なる審査に臨む。スピーチやウォーキング、リーダーシップを養うためのグループワークなど、その内容は多岐にわたる。グローバルな大会であるため、日本と世界の作法の違いについても教え込まれるという。

「私たちは総理大臣などの重職の方々に表敬訪問をよくするのですが、その際は日本の代表なので『日本人として』どういう作法をしなければいけないかを教えます。一方で世界大会ではその作法はできないということははっきりと話します。自分がいる環境がどういう文化かを理解し、適した作法をしっかり行うことが大事なので、その判断力を身につけてもらうようにしています」

 トレーニングの最中の態度も審査対象だ。

「大会ではウォーキングやパフォーマンスを見ますが、それ以外の日常の考え方や振る舞いもトレーニング期間中に見ています。例えば飲み物にしても、ペットボトルを何本も買っていたりしたら環境問題が世界的関心事である昨今ではエレガントではないし、リスペクトもできません。また、周囲のスタッフへ率先して気遣いができているかなども見ています」

 常に「見られている」のが、女性の代表。トレーニングの段階から、戦いは始まっているのだ。

次回は妊婦も出場OK、日々変わる理想の女性像

 現在、ミス・ユニバースの応募資格は「18歳以上28歳未満の女性」であること。身長や語学力などの制限はなく、次回の2023年度大会からは婚姻歴・出産歴の有無も問われない。妊婦もOKだ。

「毎年、事務局から各国のナショナル・ディレクターに対してどこを改善していくべきかが問われます。女性のあり方は日々変わるもので、世界がどう考えるかという点において検討を重ねています。

 その中で決まったのが婚姻歴と出産歴で制限しないということ。女性のリーダーを決めるにあたって、結婚や子どもがいることがNGというのはおかしいですよね。多くのミスコンテストがある中で、ミス・ユニバースがいち早く間口を広げたことを、とても誇りに思っています」

 来年はお腹が大きいミスの水着ウォーキングが見られる可能性も……。新しい女性像を切り開いていくミス・ユニバースに今後も注目!

美馬寛子(みま・ひろこ)●2008ミス・ユニバース日本代表。世界大会ではTop15、Best of Asiaの成績を残す。現在はミス・ユニバース・ジャパン ナショナルディレクター/株式会社MY group 代表取締役として、日本代表が世界1位に輝ける日が来るように活動を続ける。

2022年度のミス・ユニバース日本代表に聞く

「国旗が見えたときの瞬間を思い出すと今でも涙が出そうです」

 ミス・ユニバースの力を通して食に関する課題に取り組む2022年度のミス・ユニバース日本代表坂本麻里ベレンさんに、大会直後のコメントをいただきました!

――日本代表に選ばれたときの気持ちは?

「“大変だ!”と思いました。胸のドキドキが止まらず、水をすごい勢いで飲んでいた記憶があります(笑)。しかし、すぐ世界大会に向けての強い気持ちが芽生えていました」

――世界大会の感想は?

「憧れの舞台で、この日のこの瞬間のために頑張ってきたんだと思いがあふれそうになりながら歩いていました。また、日本から応援に来てくれた仲間たちの声援や、国旗が見えたときの瞬間を思い出すだけで今でも涙が出てきそうです」

――ミス・ユニバースの方針で惹かれるところは?

「18歳以上28歳未満の女性なら誰でも応募できるという点です。誰もが、どんな状況であっても目標や夢を持つべきでしょうし、それをいろいろな制限によってなくしてはいけないと考えます。応募資格の幅も広がり、より世界で活躍できる女性が増えるであろうととても楽しみです。時代に沿って方針が変わっていく、ミス・ユニバースをとても誇りに思います」

坂本麻里ベレン(さかもと・まり・べれん)●1998年12月生まれ、東京都出身。ペルー人の父と日本人の母を持ち、5歳からさまざまな楽器を習う。大学卒業後は料理スタジオで料理講師として活動。

(取材・文/美女川満子)