西武池袋本店が今年も元日から初売り 開店時の客数は前年比1.5倍で滑り出し好調
今年は「サイカイ(再開・再会)を祝おう」がテーマ。福袋では、振袖を着用して写真撮影を行える「日本のお正月にKIMONO体験福袋」(限定5人、8万8000円)や、登録有形文化財の「八ヶ岳高原ヒュッテ」(限定1組、10万1円)を1棟完全に貸し切りリゾートウェディングを体験できる「八ヶ岳高原ウエディング福袋」といった体験型を充実させている。また、日本の伝統や文化を楽しめるイベントとして、どら焼きの振る舞いや大道芸などの企画も用意。社員による七福神の挨拶イベントでは30年を迎える「おかいものクマ」も登壇した。
毎年恒例の食品福袋の販売会は、昨年新装オープンした7階催事場で販売。混雑緩和のため、オープン前から徐々に店内への行列の引き込み作業が始まった。11ブランドが数量限定で福袋を用意し、七福神による太鼓の音や挨拶を合図に、通常のオープン時間である午前10時から30分早い9時30分から販売を開始。9時30分過ぎに品切れとなった「ピエール・エルメ・パリ(PIERRE HERMÉ PARIS)」をはじめ、「ベルアメール(BEL AMER)」や「まい泉」などで早々に福袋が完売するなど賑わいを見せた。
アパレル店舗は一部を除いて福袋の店頭販売を取りやめている。広報担当者によると、2〜3年前から徐々に縮小する動きが広まったという。西武池袋本店でのバーゲンセール「西武冬市」は、「アニエスベー(agnès b.)」や「マリメッコ(marimekko)」など先行でセールを開催している一部の店舗に加えて、「ジェラート ピケ(gelato pique)」や「ズッカ(zucca)」「ワイズ(Y's)」「リミフゥ(LIMI feu)」「セオリー(Theory)」といったブランドが元日から参加。店頭のほか、そごう・西武の公式オンラインストア「e.デパート」でも同日からセールを併催し、福袋の販売は2割のブランドがECに移行しているという。
久保田俊樹店長は報道陣の囲み取材で「3年ぶりの行動制限のない正月なので、帰省や旅行などに行かれて来店していただけないのではないかと集客に不安があったが、想定以上」と安堵の様子を見せた。福袋の売上は前年比3%増、元日売上は同10%増を目指す。
コロナの感染拡大が落ち着きインバウンド客が徐々に復活するなど、日常生活を取り戻し始めた2022年は来店客層にも変化があったという。「コロナ禍はひとりでお買い物をされる方が多かったが、クリスマス商戦ではご家族や友達とゆっくり買い物を楽しむ姿が見受けられた。社員も心にゆとりができて、百貨店らしいサービスを提供できた」と久保田店長。リアルの消費が上向きに推移する中で、「日本の伝統や文化に根ざしたあたらしい百貨店」「10年、20年先の豊島区で暮らす子どもたちが楽しんでもらえる百貨店」を目指したいと強調した。
2023年度はコロナ前の2019年度の売上水準に戻すことを目標に掲げる。アパレルも紳士服・婦人服のカテゴリーは苦戦していたが、9月以降は月を追うごとに売上が伸びている状況で可能性を感じているという。「明るい未来の百貨店」を目指していきたいと語る久保田店長は、「アパレルは我々にとって重要な商材。それぞれの取引先としっかり話をして、トレンド商品や人気商品を提供できるようにしていきたい」と前向きな姿勢を示した。
なお、そごう・西武は米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに買収されることが決まっており、具体的な百貨店事業の事業運営方針はヨドバシカメラの持株会社 ヨドバシホールディングスがビジネスパートナーと協議の上進めていくことになっている。西武池袋本店では低層・主要部に家電量販店「ヨドバシカメラ」が出店する見方が強まっている。これに対し、豊島区の高野之夫区長が反対の意向を示したことが話題を集めた。久保田店長は明確な言及は避けたが、「私どもは豊島区の池袋で82年営業させていただいている。その間、豊島区の皆様や企業の皆様とずっと一緒に店を育ててもらったし、育ててきた。これからも続いていくことが未来の百貨店につながると思う」と述べるに留めた。