仮想通貨・Solanaのブロックチェーン上で動く分散型取引所「Mango Markets」から、ハッカーの不正な価格操作により1億1400万ドル(約170億円)の資金が流出しました。ハッカーは「自分の行動は合法的なものである」と主張し、刑事告発しないことを条件に資金の一部を返却する提案を行っています。

Mango Markets exploiter comes clean, claims all actions were legal

https://www.theblock.co/post/177424/mango-markets-exploiter-comes-clean-claims-all-actions-were-legal

Solana-Based Decentralized Finance Platform Mango Hit by $100 Million Exploit

https://www.coindesk.com/business/2022/10/11/breaking-news-solana-based-decentralized-finance-platform-mango-hit-by-potential-100-million-exploit/

EXCLUSIVE: The Man Who May Have Milked $100+ Million from Mango Markets

https://karlstack.substack.com/p/exclusive-the-man-who-may-have-milked

1億1700万ドルの流出は、ブロックチェーンの監査団体であるOtterSecによって報告されました。



OtterSecのロバート・チェン氏によれば、Mango MarketsのガバナンストークンであるMGNOが本来よりも高く評価されていたとのこと。攻撃者は最初に1000万ドル(約14億8000万円)をMango Marketsに入金し、価格操作でおよそ3倍まで高くなったMGNOを担保にしてMango Markets内で借り入れと貸出を行い、結果として1億1400万ドルを引き出しました。記事作成時点では、攻撃者がどうやってMGNOの価格操作を行ったのかは不明です。

独立系メディア・Karlstackのクリス・ブルネット氏は、ハッカーたちが仮想通貨や株式の取引戦略について話し合う個人のDiscordサーバーに参加しており、このDiscordサーバーで「Vires Creditor and Honest Person」ことエイブラハム・アイゼンバーグ氏が、Mango Marketsのハッキングについて自慢していたことを明らかにしました。ブルネット氏の記事はアイゼンバーグ氏も確認済みで、間違いないとのこと。

さらにアイゼンバーグ氏はTwitterで、自分がMango Marketsから1億1400万ドルを引き出した本人であることを明らかにしました。



アイゼンバーグ氏は「たとえ開発チームが完全に想定していなかったとしても、私たちの行動はすべて設計通りにプロトコルを使用した合法的なオープンマーケットのものであると信じています」「これはBinanceやBitmexなどの取引所における自動デレバレッジの仕組みと似ており、すべてのユーザーの資金を確実に保護するために、利益を上げているトレーダーから利益の一部を取り戻すものです」と述べ、自分の一連の取引は合法なものであると主張しました。



以下のスクリーンショットは、750万ドル(約1億1000万円)がMango MarketsがあるSolonaからCircleを経由してイーサリアムに移動したことを示しています。アイゼンバーグ氏は「手に入れたお金は使わず、私が死んだ時に私の子どもに任せるつもりです」とコメントしています。



一方でMango Marketsは、アイゼンバーグ氏が1億1400万ドルを引き出したことで資金の多くを失い、支払い能力をほぼ失ってしまいました。そこで、アイゼンバーグ氏はMango Markets側に対して、「刑事告発を行わないこと」と「4700万ドル(約70億円)をアイゼンバーグ氏の手元に残すこと」を条件に、6700万ドル(約100億円)を返却する提案を行いました。

Mango DAO

https://dao.mango.markets/dao/MNGO/proposal/GYhczJdNZAhG24dkkymWE9SUZv8xC4g8s9U8VF5Yprne



提案の決議にはガバナンストークンであるMGNOが使われますが、MGNOのほとんどがアイゼンバーグ氏の手にあるため、この提案は96.6%で可決されています。ただし、アイゼンバーグ氏は投票が始まった直後に800万ドル(約11億8000万円)相当のMGNOをMango Markets側に返却しています。

なお、アイゼンバーグ氏はMango Markets側に対して刑事告発をしないことを条件としましたが、警察が一連の騒動を見逃すかどうかは不明です。アイゼンバーグ氏自身はTwitterで、「2023年12月31日までに自分が逮捕されるかどうか」の賭けについて言及しています。