都会の人は知らない? 立地が微妙な「高速道路上のバス停」どう使われているか
高速道路の本線上にある高速バスの途中停留所は、駅から離れた場所が多く、いかにも立地が微妙。しかし、都会と地方の人とでは、見え方が大きく異なりそうです。途中バス停はどのように使われているのでしょうか。
高速道路が駅の真上を通過するポイントにバス停はない
「東名高速、綾瀬バス停付近を先頭に――」。首都圏では渋滞ポイントとして有名になってしまった東名綾瀬(神奈川県綾瀬市)をはじめ、高速道路上には、高速バス用の停留所が設置されています。本線脇の停留所のほか、SA、PAやICも併設されているものもあります。地方部では、一見、周囲は田畑だけという箇所もありますが、実際のところ、どのように利用されているのでしょうか。
中央道日野バス停。本線上にあり、中央道方面のほか大阪や金沢、四国方面の夜行バスなども発着する(成定竜一撮影)。
まず大都市郊外を見ると、いかにも「残念」な立地が気になります。たとえば東名江田。東名が東急田園都市線江田駅(横浜市)の真上を通っているものの、東名江田バス停があるのは、その1km東です。中央道も、日野駅(東京都日野市)のすぐ西でJR中央線と交差しますが、中央道日野バス停は1.5kmほど東にあります。
高速道路が整備され始めた当初は、あえて鉄道駅と離れた場所に停留所を設置したと言われています。騒音など環境悪化への補償的な意味合いもあって、沿線の利便性向上を目指したものと考えられます。
多くの高速バス路線は、「始発の新宿から中央道三鷹まで」のような短距離乗車を認めなかったため沿線への貢献は限定的でしたが、郊外の住宅開発が進み、復権を果たす停留所も見られます。
たとえば東名江田の利用が開始された1969(昭和44)年は、田園都市線開通のわずか3年後で、周辺の開発は進んでいなかったと思われます。しかし今では住宅が立ち並び、徒歩約10分のあざみ野駅には、横浜市営地下鉄ブルーラインも乗り入れています。そのため、東京発の名古屋、京阪神方面など長距離路線で、横浜市在住と思われる乗客の利用が増えている印象です。
だんだん駅に近づいてきた高速バス停
中央道日野も、徒歩7分の距離に多摩都市モノレール甲州街道駅が2000(平成12)年に開業しました。その後、関東運輸局が旗を振り、乗り換え案内標識やベンチ増設も行われています。さらに同局は、上り線の渋滞時に都心の手前で鉄道に乗り換えられるよう、首都高速の用賀PA(世田谷区)や八潮PA(埼玉県八潮市)内に臨時停留所を設ける実証実験を行い、一部の路線では臨時停車が現在まで定着しています。両PAから田園都市線用賀駅、つくばエクスプレス八潮駅まで徒歩すぐです。
中央道上の桃花台(愛知県小牧市)は、同名のニュータウンの中に位置します。この地域は、新交通システムが廃止され、今ではバス交通が主流です。特に名古屋市内へ通勤通学するなら高速バスが便利です。
また神戸淡路鳴門道の明石海峡大橋上に位置する高速舞子(神戸市)は、JR舞子駅、山陽電鉄舞子公園駅のほぼ真上にあり、エスカレーターで結ばれています。両線とも神戸、大阪の中心地まで一本なので、四国各地から京阪神への出張客らが、高速バスと鉄道を乗り継ぐシーンが見られます。
高速舞子は地上からエレベーターで上がった本線上にある(画像:神姫バス)。
1960年代の高速道路の黎明期には、あえて鉄道駅から離して作られた本線停留所ですが、1998年の明石海峡大橋開通時には、鉄道との乗り換えを前提として設置されるように変わったのです。
ただ、このような一部の例を除くと、大都市周辺では、そもそも高速バスの認知度が低いこともあり、本線停留所は影が薄い印象です。一方、地方部では様相が異なります。
パーク&ライドが定着 課題は“わかりやすさ”
新潟市は、中心市街地の渋滞緩和などのため、北陸道上の停留所周辺に駐車場を整備し、自家用車から高速バスに乗り継ぐ「パーク&ライド」通勤を促進しています。例えば鳥原(とっぱら)停留所周辺には400台の無料駐車場が確保されています。
巻潟東ICに併設の巻・潟東停留所は、第3駐車場まで合わせて390台分。本来は、各地と新潟を結ぶ路線の途中乗降用に作られました。しかし通勤利用が増えたため、駐車場内に新設した停留所始発で、必ず座れて、かつ本線上の停留所まで向かわなくて済む便まで運行されています。
通勤需要だけではありません。クルマ社会の地方部では、出張やショッピングなどで東京や大阪、あるいは地方中核都市などへ向かう際、多くの人が自家用車で自宅を出ます。信号の多い市街地へ向かい、駐車場を探して鉄道に乗り換えるのに比べ、郊外の停留所から高速バスに乗る方が楽で、トータルの所要時間も変わらないケースが多々あります。
長野道は、松本IC前に200台のほか、本線脇にある長野道神林(松本市)に130台、長野道広丘野村(塩尻市)には185台という風に駐車場が充実していて、松本から新宿、名古屋方面への高速バスはパーク&ライドが定着しています。香川県も同様で、高松道の高松中央IC(高松市)付近に合計で300台以上の駐車場が整備されているほか、高速志度(さぬき市)、高速丸亀(丸亀市)など本線脇停留所にもそれぞれ数十台分が確保されています。
北陸道の鳥原停留所には400台分の駐車場(成定竜一撮影)。
観光客の利用の多い停留所もあります。御殿場IC併設の東名御殿場(静岡県御殿場市)には、東京駅やバスタ新宿からの高速バスが頻繁に到着します。そこから周辺施設への無料送迎バスが発着しており、「御殿場プレミアム・アウトレット」へは15分間隔、リゾート施設「時の栖」やゴルフ場などにも定期的に運行されています。
ただ、東名御殿場は待合室こそIC併設停留所の中では大きいとはいえ、乗り換え案内の情報整理が十分とは言えません。費用負担など課題はあるものの、リゾート地の玄関口として、快適にバスを待てる環境づくりが望まれます。
なお、本線脇の停留所は、現在バス停として使われず「管理用施設」となっている場所も含め、一般車は進入できません。クルマ旅行の際、同行者と停留所で合流、という行為は禁止されています。