79年前の9月25日、室蘭本線にある秘境駅「小幌駅」が信号場として開業しました。

そこに鉄路が生まれ、そこに人が滞在した


小幌駅(乗りものニュース編集部撮影)。

 今から79年前の1943(昭和18)年9月25日。北海道豊浦町にある室蘭本線の小幌駅が、信号場として開業しました。

 小幌駅は、長万部から室蘭へ向かうルートの、最初の山岳区間にある駅です。トンネルとトンネルに挟まれたわずかなスペースに短いホームが置かれているだけで、周囲は急斜面、岩場を下りて海に出ても何もありません。周囲に到達可能な”文明”がないことから、日本でも指折りの秘境駅として、近年注目されています。

 ここに鉄道が敷かれたのは1928(昭和3)年。困難なトンネル工事を経て、長万部〜東室蘭間が「長輪線」として全通したのです。当時、「室蘭本線」はあくまで室蘭〜岩見沢間のルートのみでした。

 列車本数が増えるにしたがい、単線区間で対向列車と行き違いを行う機会が増え、そのための「信号場」を増設する必要に迫られました。しかし長万部からしばらくトンネルが続き、信号場を作る場所がなかなかありませんでした。当時は蒸気機関車が主で、石炭を燃やしながらトンネルの中で停止するわけにはいかなかったのです。

 かろうじて隙間のように地上に顔を出していたのが、この小幌駅の場所だったため、ここに信号場が作られました。通過待ちの際、貨物列車はほとんどトンネル内で、煙を出す機関車だけが地上にある格好でした。

 信号操作、そして線路分岐器の操作のため、小幌信号場には職員が常駐していました。彼らのため、また当時わずかにあった周辺住民のため、客扱いがなされ、それが駅となって今に至ります。

 1967(昭和42)年に複線化され、信号場は不要になりました。日常利用者も皆無のこの駅は民営化後も残り続け、いつしか秘境駅として話題になっていきました。2022年現在、長万部方面が4便、室蘭方面が2便、この駅に停車します。