東名高速の本線上を電動キックボードが“爆走”するという事件が発生しました。道路管理者は原付や自転車の「誤進入」に頭を悩ませ、その対策が効果を挙げてきたところでした。

東名高速を電動キックボードで爆走

 クルマが猛スピードで行き交う東名高速を電動キックボードでノーヘルメット走行−−このような事件が2022年9月13日に発生し、翌日のテレビで紹介されると、SNSなどで大きな話題となりました。


東名高速 足柄SA手前。右側が下り線で、右ルートと左ルートが合流する。電動キックボードのドライバーはこの先でクルマを停めた(画像:写真AC)。

 このドライバーは、東名下り線 足柄SAの手前でクルマがガス欠を起こし停車。そこで、積んでいた電動キックボードで足柄SAまで向かったといいます。

 なお、クルマを停めたのは左側の付加車線のど真ん中で、途中にあった非常電話は使わず、足柄SAからは逆走でクルマまで戻っていることも確認されています。その姿を見た人からは「普通じゃない」と、警察への通報が相次いだそうです。

 電動キックボードは原付にあたるため、高速道路を走ることはできません。NEXCO中日本は今回の事件に対し、次のようにコメントします。

「高速道路におけるキックボードでの走行は道路交通法により禁止されており、高速で車両が走行している高速道路では重大な事故に繋がるため、絶対にやめて頂きたい行為です。なお、万が一故障等で車両の走行が出来なくなってしまった場合は、速やかに本線車道等以外の場所(非常駐車帯や路肩)に停止し、停止表示器材(三角停止表示板など)による表示を行った後、ガードレールの外など安全な場所にすみやかに避難してください」

 その後、非常電話や道路緊急ダイヤル(#9910)にて、故障状況を通報してほしいということです。

誤進入対策が功を奏してきたが…

 近年、道路管理者は歩行者や原付、自転車の「誤進入」に頭を悩ませてきました。NEXCO中日本管内では、2012(平成24)年に474件だったのが右肩上がりに増え、2019年には1009件に上りました。

 これまで保護された人からは、歩行者ならば「認知症だった」「酒に酔っていた」、原付や自転車は「ナビアプリで誘導された」「外国人なので標識がわからなかった」といった原因が明らかになっています。

 そこでNEXCO中日本も対策に力を入れてきました。外国人も意識し、啓発の動画は5か国語でそれぞれ作成。外国人の減少もあってか、2020年、2021年は同社管内の誤進入件数が882件、873件に減少しています。

「特に歩行者や自転車による料金所からの誤進入が減少しています。これは、新型コロナウィルス感染症の拡大による出控えのほか、外国人観光客や交通量の減少を含むなどもあると考えられますが、当社が2019年度以降、料金所などで路面シールやポール、カラー舗装などの誤進入対策を講じてきた効果とも考えています」(NEXCO中日本)


誤進入した原付の例(画像:NEXCO中日本)。

 ただ、これら対策は主に、「入口」からの誤進入を主眼としたもの。対して今回は、本線上で停止したクルマから電動キックボードを取り出し、本線上を走行するという事案でした。

 このドライバーの行為が言語道断であることは言うまでもありませんが、普及が拡大する電動キックボードなどのモビリティは、小型で折りたたんで車内に持ち込めるものも多く、ある意味、自転車よりもスペースを取らず乗るのも容易です。SA・PAなどで乗り回したり、本線まで出てしまったりすることも、考えられなくはないかもしれません。

 NEXCO中日本は、キックボードに限らず、高速道路や自動車専用道路は歩行者や125cc以下の自動二輪車、軽車両は通行できないことを、引き続きウェブサイトなどで広報していくとしています。