4年ぶりとなるIAA国際商用車ショー2022が開幕。グローバルでのEVモビリティ化が加速する中、トラックやバスなどの商用車は、この4 年間でどのような進化を遂げているのでしょうか。そのパワーと航続距離は確実にアップしてきています。

車種名の「長距離輸送」はダテじゃない! メルセデス・ベンツの新・大型電気トラック

 2年に一度開催される世界最大の国際商用車ショーが、名称を新たに「IAA Transportation 2022」としてドイツ・ハノーファーで9月19日に開幕しました。前回は新型コロナの世界的感染拡大の影響で中止となったために4年ぶりの開催となります。


メルセデス・ベンツ「eActros LongHaul」。IAA2022にて(乗りものニュース編集部撮影)。

 今回は、三菱ふそうが属するダイムラー・トラックグループがEV(電気自動車)を中心としたラインアップを発表。中でも注目されている車種のひとつが、「eActros LongHaul」(イー・アクトロス・ロングホール)です。すでに欧州で発表されているメルセデス・ベンツの大型EVトラック「eActros」に、さらなるロングドライブを可能としたモデルが追加となり、世界初公開されました。

 eActros LongHaulは、2021年に発売された既存モデルのeActros 300とeActros 400の容量を超える600kWh(連続出力400kw、最高出力600kw)の大型バッテリーを備えます。リン酸鉄リチウム電池(LFP)を使ったこのバッテリーは、長寿命でより多くのパワーを引き出せるほか、充電に関しても新たに開発中の「メガワット充電」を使用することで、従来の30分で20%の充電量から80%まで達成できるとのこと。航続距離も一回のフル充電で約500kmもの走行が可能となります。

 耐久性に関しては10年で約120万キロという、長距離輸送の持続性や信頼性、そしてランニングコストの総合面で、競合を大きくリードするプロダクトとして期待が寄せられているとか。その名の通り、Long(長距離)Haul(輸送)を可能としたモデルというわけです。

日本にも? 普及への課題はインフラ

 eActros LongHaulは、2022年内にドイツ国内での公道試験を完了させ、2023年に量産型に近い車両で最終実用供試を、そして2024年には量産を開始する予定ということで、早くも欧州地域から注目が寄せられています。

 そしてeActrosからもうひとつ、トラクターバージョンの「eActros300」も発表されました。既存のeActros300/400をベースに、112kwhの容量をもつバッテリーパックを3つ搭載し、航続距離は1回の充電で最大220kmを可能としています。こちらは2023年後半に量産を開始する予定です。


プレゼンテーションするメルセデス・ベンツトラック カーリン・ラドストロームCEO(乗りものニュース編集部撮影)。

 ただ、これらEVトラック、特にeActros LongHaulの普及には、徹底した、しかも強力な電力を発生させる充電器機のインフラ整備が必要不可欠という課題が残されています。メルセデス・ベンツは今後導入される国々のインフラ整備に期待を寄せるとともに、シーメンス社をはじめとした充電機器メーカーとの協業推進も加速させていくとしています。

 ちなみに、日本もインフラの課題をクリアできれば、近い将来、三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」のEVモデルとして国内導入も検討される可能性があるそう。日本にも大型EVトラックの波が押し寄せるのか、今後に注目です。