「世界最醜」兵器!? フェアリー「ガネット」初飛行-1949.9.19 見た目とは裏腹の高性能機
このイギリス臭さが大好きなヒトも多いハズ!
見た目はイケてなくても性能はピカイチ
1949(昭和24)年の9月19日、イギリス・フェアリー社が開発した「ガネット」が初飛行しました。
「ガネット」とは海鳥であるカツオドリの英名です。空母搭載用の対潜哨戒機として生まれた本機は、優秀な性能から複数の国で採用されましたが、その名を知らしめたのは、母国イギリスで名付けられた「世界で最も醜い飛行機」なる異名でしょう。
空母から発艦直前の早期警戒型「ガネット」。早期警戒型は胴体下部の大きなレーダードームが特徴(画像:アメリカ海軍)。
「ガネット」の開発がスタートしたのは、第2次世界大戦末期の1945(昭和20)年のこと。このころイギリス海軍は、将来を見据えた新型航空機の開発に取り掛かっていました。そのなかには、大西洋においてドイツの潜水艦「Uボート」に翻弄された苦い経験から、空母に搭載して用いる艦載型の対潜哨戒機も含まれており、これに対してフェアリー社とブラックバーン社が手を挙げます。
ただ、両社は開発のスピードで大きな差がありました。ブラックバーン社が設計にもたついている間に、フェアリー社は試作機を1949(昭和24)年9月19日に初飛行させ、さらに翌1950(昭和25)年6月19日には空母「イラストリアス」への着艦試験まで成功させます。その結果、フェアリー社の機体が採用を勝ち取りました。
こうして「ガネット」は1953(昭和28)年から量産が開始されましたが、その外観は非常に独創的なものでした。最大の理由は、空母で運用するからです。サイズが制限された空母のエレベーターに合わせて、全長、全幅ともに規定内に収まるよう設計されていました。その一方で、良好な操縦性を確保するために垂直尾翼は大きくとられ、主翼は薄く伸ばした「W」字、いわゆる逆ガル翼とよばれる形状をしていたほか、翼面積とコンパクト性を両立するため、「Z」字型に折り畳む構造を採用していました。
オーストラリアやドイツでも愛された「ガネット」
機首のプロペラは2重反転式で、その直後の胴体内にターボプロップエンジンを搭載しましたが、パイロットの視界を確保するために短鼻とし、エンジン部分の上にコクピットを設置、さらに海軍の要求で魚雷や爆雷などの兵装を機内収容できるよう爆弾槽を機体下部に設けた結果、縦に長い胴体形状となりました。
また、同機は対潜哨戒型のMk.1と、早期警戒型のMk.3の2タイプが生産されましたが、前者は操縦士の後方に哨戒士2名が乗り込みます。この2名は、各種対潜機器を操作するとともに周囲を目視で偵察警戒するため、機体下部を覗き込みやすいよう、キャノピー形状はバブルウインドウと呼ばれるふくらんだ形状をしており、さながら機体背部にふたつのコブがあるようでした。
後者の早期警戒型は、このコブのようなキャノピーこそありませんでしたが、機体下部には大きなお椀型のレーダードームを装備したため、腹がふくれたような形状をしていました。
イギリスが開発した「ガネット」対潜哨戒機は、オーストラリアやドイツ、インドネシアでも運用された(画像:オーストラリア海軍)。
ただ、冒頭に記したように性能は良好だったため、1955(昭和30)年の運用開始後も改良が加えられながら、20年以上にわたって現役で運用されています。
なお、「ガネット」は1978(昭和53)年に運用終了となりましたが、これは国防予算の不足からイギリス海軍が大型の正規空母を廃止したあおりを受けたためで、いわば強制的に運用終了となったものであり、仮に海軍が正規空母を廃止しなければもう少し長生きしていたかもしれません。
この結果、「ガネット」は軽空母での運用が可能な「ハリアー」垂直離着陸戦闘機を除くと、最後のイギリス製固定翼艦載機となりました。なお同機は輸出にも成功し、オーストラリアとドイツが採用したほか、インドネシアが中古機を導入しており、生産数はトータルで約350機を数えています。