高速道路の「動く交通規制」とは? なぜかノロノロ運転になるパトロールカー
高速道路の工事に伴う交通規制は、一定エリアを通行止めにするなどの固定的な方法だけではありません。前を走るパトロールカーが妙にノロノロ走っているケースは、「動く交通規制」かもしれません。
とつぜん徐行しだす2台のパトロールカー
夜中に高速道路を運転していると突然、目の前を走っていた2台の黄色いパトロールカーがノロノロのスピードに……こうした光景に出くわした人もいるかもしれません。もちろんパトロールカーが制御を失っているわけではなく、これは「先頭固定」という“交通規制”の一種です。
夜間における先頭固定のイメージ(NEXCO中日本の映像より)。
道路工事において、通行止めをするほどではないけど、少しのあいだ、一般車が走らない時間をつくりたい――こうした場合に行われるのが先頭固定規制です。作業箇所の数キロ手前から複数台の管理車両(黄色いパトロールカーなど)を車線ごと横一列に並ばせて、10〜20km/hに速度を落とします。管理車両の前方に一般車が存在しない時間をつくり、そのすきに工事を行うというわけです。
先頭固定は警察の協力で白黒のパトカーが1台、または2台とも先頭車両につくこともあります。また、規制箇所付近のICやSA、PAから本線への入り口を一時的に封鎖する場合もあります。実施にあたっては、緻密な計算のもとで作業にかかる時間や規制の出発地点、走行速度の設定などを割り出し、慎重に計画を立案するようです。
一定エリアを通行止めにする交通規制はいろいろ
もちろん工事規制は先頭固定のほかにも様々あります。夜間通行止めや昼夜連続車線規制、片側交互通行規制などのほか、近年は交通量の多い都市部の区間でも、長い期間にわたり全面通行止めにして、集中的に工事を行うことも増えてきました。NEXCO西日本が2021年から行っている中国道 吹田JCT〜中国池田ICの終日通行止め工事(約1.5か月通行止め×6回)は、その代表例。道路ネットワークが発達し迂回路も確保されてきたことで、大幹線の通行止め工事も可能になったといえます。
必要な工事を短期間に昼夜連続でまとめて行う「集中工事」は、規制による影響も小さくありませんが、年間の工事規制回数が少なくなります。NEXCO中日本は、集中工事を実施すれば工事規制回数は年間およそ2670回のところ、集中工事なしでは年間約4300回にも上ると試算しています。
NEXCO西日本によると、こうした様々な工事規制は、過去の交通量データをもとに高速道路や付近の一般道の渋滞、沿道の住民への影響、作業の効率性などを考慮しつつ、交通量の少ない時間帯を選び、なるべく渋滞が発生しないよう工事計画を立案しているとのことです。