政財界の人にも頼る人の多い占星術家のKeikoさん

自然豊かな東北の山形で生まれ育ち、慶應大学在学中にパリ留学、卒業後はアムステルダムへ。その後、電通で13年間働いた後、40歳で独立して占星術の道へ――。

そんな変化に富んだ人生を歩んできたのが、占星術家のKeikoさん。著作は累計170万部、今や日本でも最も支持される占星術家のひとりとなった彼女が語る人生の醍醐味、自分だけの花の咲かせ方とは。

前編記事に続き、彼女の人生と言葉を取り上げます。

前編:政財界の人も密かに頼る人気占星術家が語る真理

スピリチュアルの本来の意味とは?

“スピリチュアル”という言葉は、いつから世に浸透したのだろう。

もともとはキリスト教の用語で、心、神、霊魂など、目には見えない精神世界のことを指すが、日本では加えて、占いのことを指す場合も多い。

2005年、美輪昭宏氏と江原啓之氏が出演したテレビ番組『オーラの泉』などがヒットしたのを皮切りに、数多くのメディアでスピリチュアル特集が組まれるように。スピリチュアルという言葉や概念も多くの人に知られることとなった。

とはいえ、非科学的なものゆえに、「怪しいもの」「神頼み」などというイメージを抱いて、毛嫌いする人もいまだ少なくない。一方、先行きがわからない不安定な時代、これまでの一部の人の間で人気だったスピリチュアルは、ますます一般化して私たちの生活に溶け込んでいるようにも感じられる。

今、最も人気を集める占星術家の1人であり、実業家のKeikoさんは語る。

「スピリチュアルは国によって捉え方、解釈のされ方が異なりますよね。海外では、怪しいものとか、ましてや神頼みなんてイメージは全然ないです(笑)。“宇宙の摂理”とか“大自然の法則”のことと、捉えられています。

私たちは、地球に生きていて、大自然に生かされている。だから、月の満ち欠けや星の動きを意識して生きるのは、ごく自然なこと。運気や運命を信じて生きるのも大切なことではないかと思います」

モテ指南とは一線を画す恋愛本が大ヒット


Keiko(占星術家、実業家)/『Keiko的宇宙にエコヒイキされる願いの書き方 新月・満月のパワーウィッシュ』『パワーウィッシュノート2020』(講談社)、『お金の「引き寄せ力」を知りたいあなたへ』(マガジンハウス)など著書多数。KeikoさんHP

Keikoさんが著作家としてもブレイクしたきっかけは、2010年に発売された彼女自身のデビュー作『「運命のパートナー」を引き寄せる22のルール』(大和出版)が大ヒットしたことだった。

本書はソウルメイト――運命の人と出会うための方法について、スピリチュアルな視点と思想、自身の経験をもって書かれた恋愛指南本である。

「長らくイギリス人占星術家のエージェントを務めていたのですが、彼女はソウルメイト(運命のパートナー)の鑑定を得意とする人だったんですね。

私自身も占星術を長く使っていたこともあり、たくさんの方々の鑑定書を翻訳しながら、そこで深い気づきや学びがありました。また、相談者の方々からもフィードバックを数多くいただいて。ソウルメイトとの出会いには、一定の法則やパターンがあること、ソウルメイトがもたらす影響力についてなど。自分の中で、運命やパートナーについてのエビデンスとロジックがどんどんたまっていたんですよね」

ソウルメイトとは、直訳すれば、魂の伴侶であり、運命的に結ばれたパートナーのこと。

当時は、婚活してもなかなか結婚に至らない“結婚難”が広く言われ始めた時代。それでも、結婚したい人はたくさんいて、願わくば、形だけの結婚ではない、心からつながれるパートナーがほしい――。そう切に求める20代、30代の女性たちの心に刺さった。

10年前、女性向けの恋愛本は、男性好みの女性になって言い寄られるための術が書かれた、いわば“モテるための指南本”が中心だった。そんな中、Keikoさんの書籍は、運命についてわかりやすく解説しながら、その運命は自力で引き寄せられるという力強いメッセージと、その具体的な戦術が記されていた。だからこそ、多くの女性の心をつかんだ。

ソウルメイトは積極的に探さないほうがいい

自力で運命を引き寄せるとはどういうことだろう。

書籍の中に彼女の運命論を表す一節がある。

「花は自分からミツバチを探しに行ったりはしないでしょ?
つぼみが開いてかぐわしい香りを放ったとき、ミツバチは自然にやってくるでしょ?
運命の出会いも同じこと。
あなたのほうが『出会うにふさわしい状態』になればOKなのよ」

『「出会うべき人」に、まだ出会えていないあなたへ』(大和出版)より

運命や運命のパートナーとは、探し回るものではない。とはいえ、受動的に待っているだけでも訪れないというのがKeikoさんの考える運命論だ。

「恋愛や結婚に限らず、ビジネスでも友人関係も同じです。運命の出会いは探すものではなく、能動的に自分の心身を整えて準備しておけば、おのずと引き寄せられるもの。それが自然界の法則です。『準備ができたとき、師が現れる』っていうでしょ。どこにいるかわからない相手を探し回るより(笑)、そのほうがずっと効率的ですよ」

運命論には人生経験も反映されているという。

「私はこれまでの人生、何かを積極的に探しに行ったことがないんですよね。『ビジネスを成功させたい』などの願いは、その時々で抱いていましたが、あてもなくチャンスを探しにいくことはしません。大切なのは、運命の流れをよく見て、よい波がきたら乗ること。面白そうな話がきたら、予想外のことでも乗ってみる。ピンときたら、未経験でもやってみる。そこでベストを尽くせば、さらに大きな波がきたり、次の道がおのずと開かれてくるんです。

私の場合、初めての出版のお話もそうでしたし、昨年は、著作が6カ国語に翻訳されて世界各国で出版されましたけど、それも同じ。あちらから舞い込んできた話に乗って、そこでやれることをやった結果、花開いたものなんですよね」

終身雇用も生涯の伴侶も必要ない時代に

そんな千載一遇のチャンスが舞い込んでくるには、どんな準備をしておけばいいのか。

「勘違いされている方もいらっしゃるようですが、願望は強く願ったからといって叶うものではありません。うまくいかないことにはいつまでも執着せず、うまくいくことを追いかけていく。そのくらいの割り切りと軽やかさがあったほうが、運に味方されやすいですね。もちろん、成功にも近づきます。

それから、最も必要なのは、直感力と軽やかな行動力です。『これ!』という直感が動いたとき、すぐ行動できる人は強いですよね。行動すれば失敗することもあります。でも、失敗したとしてもそれは目先のこと。自分の感覚を信じて動いた分だけ、俯瞰してみたら大きなゴールには近づいているんですよ」

もう1つ、Keikoさんが運命を好転させるために必要不可欠だと考えていることがある。

「人間関係です。運命的な出会いも、今ある人間関係の先にある。ビジネスもプライベートも必要な運命を運んでくれるのは、すべて人ですし、そもそも、自分1人で大きな変化は起こせないですよね。

だから、日々出会う人、今一緒にいる人に、愛情と誠意を持って接すること。相手を喜ばせることや礼を尽くすこと。苦手な人にも自分から心を開いて、相手の懐に入っていってみる。そういう人が結果として、ソウルメイトとの出会いはもちろん、大きな運命やチャンスを引き寄せるのだと思います」

そこまで話すと、「でもね」と続ける。

「ソウルメイトは、誰にでも存在しますけど、必ずしも会えるとは限らないですし。今の時代には、さほど必要ないのかなと感じるようになりました(笑)。仕事はもちろん、恋愛や結婚においてもそう。

西洋占星術的には、約2年前から、風の時代に突入しましたけど。風の時代って、スピリチュアルな考え方や精神性など目には見えないものを大切にすること、それから、変化し続けることが大切な時代です。

会社の終身雇用制度も絶対的なものではなくなりつつあるのと同じように、パートナーシップにも必ずしも永遠を求める必要はないのかなと。ソウルメイトでなくとも、一時期でもいい時間が過ごせて、互いに成長できたら十分に価値がありますよ」

万物は変化し続けるし、それでも人生は自分だけのもの。だから、時代や環境が変わっても、自分の道を軽やかに歩き続ける限り、その時々、必要な出会いは訪れ、新たな運命の扉は何度でも開かれる。

介護や子育てに全力を注ぐ季節も美しい

3年前の2019年、Keikoさんに再び大きな転機が訪れた。

それまで、占星術家としては、年に何冊も著作を出版し続けてヒットを記録。実業家としても、ヨーロッパを中心に世界中を飛び回るなど、自由で華やかな生活を送っていたものの、生まれ育った故郷・山形に拠点を移すことに決めたのだ。

「生活の手助けが必要となってきた母のそばにいるために帰ってきました。40代からビジネス的にも飛躍して世界もさらに広がり、忙しい日々が続いていましたけど。高齢になった母の変化を感じとって、そろそろ一緒に住みたいなと。その決断に迷いはなかったですね。

私はこれまで仕事にも人間関係にも恵まれてきましたけど、大切なものに優先順位をつけるとしたら、迷いなく両親がいちばんなんです。父が大病に倒れたときも、好きな人をおいてすぐに帰国したくらいですから」

限りある人生を悔いなく生きるには、優先順位を明確にすること。

「いちばん大切なものを守るために、時にはリスクを取ることも必要ですよね。

私も仕事が絶好調な時期で、この決断をしたことは周囲に驚かれましたし。実際、地元に戻った当初は、思うように仕事が進まないことに苛立ちを覚えたりもしましたけど(笑)。

次第に今の私の人生は、そういう季節だと考えられるようになったんです。人生にはいろんな季節があって、同じ季節だけを繰り返すことはできませんよね。仕事が大好きな人も、100%仕事に没頭できる時期がずっと続くわけじゃないから」

今、介護や子育てに力を注いでいる人の中には、キャリアで取り残されたような気持ちになっている人も多い。けれど、それも、いつかは過ぎゆく貴重な季節なのだ。


芳麗さんによる新連載3回目です

「それにね、今しかない時間を大切に楽しめたら、また予想外の面白い運命が開けたりするんですよね。私も、東京で自由に時間を使っていたときに比べたら、こなせる仕事量は半分になりましたけど。私が東京にいられないからこそ、会社のスタッフが自主性をもってより頑張ってくれるようにもなって。みんな成長しているなと感じてますし。

私もオンライン講座など新しい仕事にもチャレンジしたりしています。それから、自然が豊かな場所に暮らせることもやはり大きなプラスだなと実感しています。心身の状態が都会にいたときより健やかですから」

Keikoさんが帰ってきた山形は盆地ゆえに、東北の中でも寒暖差がとりわけ激しい土地だ。暑さも寒さも甘くはないが、変化に富むからこそ、四季折々、豊かで色鮮やかな花が咲く。その季節を歩んだ人にしか、咲かせられない花はきっとある。

この記事の前編:政財界の人も密かに頼る人気占星術家が語る真理

(芳麗 : 文筆家、インタビュアー)