株式投資の鉄則は「安く買って高く売る」。しかし、これを守れずに損失を抱える人が多い。個人投資家の上岡正明さんは「買うことばかり考えている人が多い。いちばん大事なことは『勝てる期待値の高い局面になるまで、辛抱強く待つ』ということだ」という――。

※本稿は、上岡正明『勝てる投資家は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/dima_sidelnikov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dima_sidelnikov

■結果が伴わないのには理由がある

株式投資で勝つための鉄則は、「安く買って、高く売る」です。これはどの投資本にもかかれている普遍の真理といえます。ですが、一部の投資家はこの鉄則に従っているにもかかわらず、結果が出ていない状況にあるように思います。

なぜそうなるのか。原因は、おそらく次の3つがあります。

原因その1 買うことばかり考えている

株式投資をしていると、「今、銘柄を持っていなければ損をしてしまうのでは?」と心配になりがちです。これを、ポジションを取らずにはいられない状態、略して「ポジポジ病」と表現したりもします。名前は可愛いですが、誰もが陥る株式投資の落とし穴です。「投資=買う」と決めつけているからです。

自覚症状がある人は、買うばかりでなく、「待つこと」を戦略的に取り入れましょう。

原因その2 「上がる銘柄」を選択できていない

いくら安い銘柄でも、株価が上がらなければ儲けることはできません。財務や事業を分析して「上がる銘柄」を選びます。

原因その3 タイミングがズレている

3つ目は、安値を狙っているにもかかわらず、タイミングがズレているからです。安いところを拾っているつもりでも、1年チャートや5年チャートで見たら、まだまだ高いところで手を出していた、ということはよくあります。チャートを分析する手法を学んで、十分引き寄せてから、安いところで買えるようにしてください。

■相場の流れを大局的に見る

これら3つの症状が当てはまる投資家は、まだ、ご自身の投資方法に「勝ち続けるための再現性」がないといえます。再現性がない投資は、勝ちパターンが確立できておらず、間違った投資を続けてしまうだけでなく、どこでミスしたのか気づくことができない。そのため軌道修正もなかなかできないのです。

上岡正明『勝てる投資家は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)

株式投資には一撃必殺のトレード法などは実在しません。しかし、地道に知識を蓄え、再現性を得て、経験を積んで、しっかりと自分のチャンスを待つことができる投資家になれば、大きな利益に変えていくことができます。

改善するためのヒントは、大局的に相場を見ることです。

相場には「流れ」があります。1年周期、3年周期、5年周期、そして10年周期、30年周期がありますが、利益を追求する投資家は、その周期ごとの再現性を理解して、かつ、同じタイミングでエントリーするスキルを身につけています。

この、相場の転換点を捉えるという再現性も、非常に重要です。

■個人投資家の利益の源泉はエントリータイミングだけ

これまでにも話しましたが、「安いところで買って、高いところで売る」というトレードをしているはずなのに実際には負けている原因は、安いところで買ったのではなく、安いところで買ったつもりでいるからです。

まずは生き残れ。儲けるのはそれからだ

これは、あまりに儲けすぎて米国政府すら震撼(しんかん)させた著名投資家ジョージ・ソロスの言葉です。まず生き残る。そのためにも、再現性のある投資をすることが大切です。

個人投資家の利益の源泉は、エントリータイミングだけです。では、どんなエントリーをすればよいのか。それは、「勝てる期待値の高い局面になるまで、辛抱強く待つ」。高度な技法やデータ分析は、すべてその先にある応用力でしかないからです。

チャンスがくるまでエントリーしない。再現性の高い期待値まで待つ。そのタイミングまで、辛抱強く待ってから買う。これを徹底してください。

■市場を「点」でなく「線/面」でとらえる

つまり、「株式投資で生き残る」とは、極限までミスショットを減らすことにつきます。そのためには、チャンスもリスクも、「点」で見てはいけません。瞬間という「点」で見るのではなく、時間の経過という横軸を設けた「線」で観察し、市場全体の波の強弱も加えた「面」で動きを捉えるわけです。

株式市場のパターンや歪みを利用するのも、市場を点ではなく線と面で捉えるためです。それが、私たち個人投資家が勝つためのトレード手法になります。

■歴史的な大暴落には法則性がある

最後に、緊急時への備えについて記しておきます。

「ヒンデンブルグオーメン」をご存じでしょうか? 米国の物理数学者ジム・ミーカによって考案された、再現性の高いテクニカル指標の1つで、これだけが珍しく“暴落の予兆”を捉えます。

写真=iStock.com/gdmoonkiller
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gdmoonkiller

大ヒット映画のタイトルにもなった「オーメン」は、「よくないことが起こる前兆」という意味です。日本語では「ヒンデンブルグの予兆」と呼ばれています。ダウやS&P500など、米国株式市場の株価暴落の前兆を示す指数として知られているため、ヒンデンブルグオーメンが点灯すると、暴落アラートとして多くのニュースサイトでも話題になります。

ヒンデンブルグオーメンが点灯すると、具体的には、次に示す3つのいずれかが起こると言われています。

【ヒンデンブルグオーメン点灯で警戒すべき3つのこと】
1)77%の確率で、NYダウが5%以上下落
2)パニック売りになる確率41%
3)重大なクラッシュとなる確率24%

一見すると、身震いしそうなすごい数値です。

米国株式市場のデータに基づいて判断され、具体的には次の4条件で判断されて点灯となります。

条件1:ニューヨーク証券取引所(NYSE)での52週高値更新銘柄と安値更新銘柄の数が、ともにその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上
条件2:NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っている
条件3:短期的な騰勢を示すマクラレン・オシレーターの値がマイナス
条件4:高値更新銘柄数が安値更新銘柄数の2倍を超えない

■株価指数だけでは分かりづらい変化をつかむ

もっとも、ここに挙げた条件をすべて覚える必要はありません。私たち個人投資家は、eワラントジャーナルが運営するサイト「本日のトレードインディケーター」から暴落アラート点灯をいつでも確認できます。

私の場合は、株式市場が好調続きで、「今、自分は調子に乗っているかも」「ちょっといつもより大きく資金を動かしすぎているな」と感じたときに、緊張感を取り戻すためにチェックしています。まるでファンタジーゲームの賢者が使う究極魔法のような名前ですが、極端に恐れる必要もありません。

わかりやすくいえば、ヒンデンブルグオーメンとは、相場の方向感の行きすぎを数値化し、投資家心理や市場全体の先行きの過熱感を加えたものです。株価指数だけを見るとわかりづらい投資家たちの微妙な心の変化に、気づかせてくれる指数ともいえます。人の心は、普段の数値では見えないですからね。

■アラートが点灯したらどうするか

もちろん、市場全体が過熱しているときや、個人投資家が多く買っているときに発生するアラートのため、「確率的に考えれば、人びとが過熱して下落に転じやすいタイミングに点灯するのだから、当たるのは当たり前だ」と考える人もいます。もちろん、私もその意見に賛成です。

ただ、すでにお伝えした通り、自分を戒める存在というのは、株式投資の世界では大切です。調子に乗りすぎても、誰も自分を叱ってはくれないわけです。アラートが点灯するから下落するのか、行きすぎた熱狂がそうさせるのか。卵が先か鶏が先かの論争になってしまいますが、1つの指数としては参考にしてもよいでしょう。

なお、ヒンデンブルグオーメン点灯時には次のような投資戦略をとるのが良いといわれています。ぜひ参考にしてみてください。

【ヒンデンブルグオーメン点灯時の投資シナリオ】
(戦略1)大きく利益が出た銘柄は全部、あるいは半数を手仕舞う
(戦略2)現金保有率を高めて、急落や暴落を待つ
(戦略3)調整が起こった段階で、狙った銘柄を少しずつ購入する

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上岡 正明(かみおか・まさあき)
投資YouTuber、作家、フロンティアコンサルティング代表
1975年生まれ。放送作家を経て、27歳で戦略PR、ブランド構築、マーケティングのコンサルティング会社を設立し、独立。これまでに大手上場企業など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。チャンネル登録者15万人を誇る人気YouTuberとしても活躍中。著書に『お金が増える強化書』『勝てる投資家は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)など多数。
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投資YouTuber、作家、フロンティアコンサルティング代表 上岡 正明)