※この記事は2017年12月28日にBLOGOSで公開されたものです

埼玉県川口市の男子中学生・栃尾良介(3年生、仮名)がサッカー部のLINEグループから外されたり、乱暴されたことなどをきっかけに、2016年に自傷行為をするなどし、不登校となった。この問題で埼玉県川口市教育委員会のいじめ問題調査委員会が設置されている。

12月8日にも委員会が開催され、保護者と弁護士が出席した。保護者が出席したのは2回目、弁護士は初めての参加だった。学校は15日には保護者会を開き、これまでの学校対応に関して「不十分あった」と認め、謝罪した。

不登校といじめの直接の因果関係を認めず

母親によると、まだ事実確認も不十分な段階だという。これまでに母親に対して示された「いじめ問題調査委員会」による「いじめ事案に関する進捗状況報告書(案)」によると、一部の行為はいじめと認めているが、不登校との関係については「要因は複数」とし、いじめとの直接の因果関係については認めていない。また、自傷行為との関係は触れていない。

母親によると、良介は15年4月、中学校に入学。5月にサッカー部に入った。そのとき、無料通信アプリLINEで学年のグループが作られたが、2日後、違う小学校出身の部員が良介をグループから外した。そのことを教諭が知り、グループの生徒たち全員に注意した。そのため、良介は「チクった」と言われ、そこから無視や仲間外れが始まった。LINEでは「死ね」「うざい」とのメッセージを送られた。良介は、外された理由について「よくわらない」と話す。

「何かの間違いだったのかと思いました。他の子が再度、グループにいれてくれましたが、また同じ生徒によって外されました」(母親)

練習でも一人のため、パス練習の際に組む相手がいない。ネット相手にボールを蹴っていると、ひじで顔を殴られたり、突き飛ばされたりした。また、顧問がいないときに、良介が蹴っていたボールを、わざと遠くへ蹴る嫌がらせをしていた。

「レギュラーを中心としたAチームと、補欠を中心としたBチームに練習は分かれます。良介がいるBチームは副顧問が担当をしていました。部活の様子を見に行ったのですが、副顧問は練習をほとんど見ておらず、他の生徒たちと談笑していました」(同)

夏休みになると、サッカー部のメンバーが連日、家に遊びに来たという。

「10人以上が連日、家に来るんです。断ると何をされるかわからないので、『みんな仲良く』と言って、見守っていたんです。しかし、各々、仲良い子同士が遊んでいるだけで、息子と遊んでいるわけではない。部屋はゴミだらけになり、汚されました」(同)

サッカー部の練習中に暴力を受ける、なりすましのLINE、逆ギレ、悪口.....

16年3月2日、部活中に、オフェンス側がボールを回し、ディフェンス側が奪う「鳥かご」という練習をしていた。そこで突然、良介は練習着の後ろの襟首を掴まれて、首がしまった状態で引きずられ、揺さぶられるなどの暴力を受けた。

監督づてにその生徒の保護者に対して電話すると、加害行為をしたとされる生徒は「してない」と言い切ったという。しかし、数日後にはその生徒は母親に加害行為を認めていたが、何も連絡がなかった。しかも、問いただした際に言い分が変遷している。

3月8日、良介と親しい部員からLINEで「仕切るな」とのメッセージが送られて来た。その友人がそんなメッセージを送るはずがないと思い、調べたところ、いじめグループがその友人宅に泊まっていたことがわかった。なりすましだったという。

5月には、親しい部員に映画に誘われていたが、当日、他のメンバーと行くと言われてすっぽかされた。「楽しみにしていたのに」というと、逆ギレされて、悪口を言われた。

また、みんなで遊びに行くことになっていたにもかかわらず、良介だけが断られるという事件もあった。みんなで出かけたあと良介の家に来るといったので、良介は拒否。LINEや電話を無視していると、良介と親しい女子生徒の家の前で大声を出されたり、「家に入れろ」と電話されたりした。女子生徒から「助けて、怖い」と連絡があった。

「学校に行きたくない」と閉じこもる

9月14日、良介は「学校へ行きたくない」と言い、部屋に閉じこもった。5月の連休明けも一週間不登校だったが、再び、不登校となった。サッカー部の顧問とノートでやり取りをしていたが、良介が以下のように書いてあったのを母親が見ている。

「先生へ悪いやつ、間違っているやつを直してくれるのは誰ですか?僕を助けてっくれるのは誰ですか?生きてるから学校行かないとだめですか?」

10月11日、川口市立医療センターで「学校からのいじめ、いやがらせによって、心理的に不安定となり、強い不安、不眠、自傷行為(リストカット)などを生じています」と、「不登校状態」との証明書が出されている。

17年2月、川口市は市内で初めて「いじめ問題調査委員会」を設置した。母親が学校や市教委に相談していたものの、いじめ防止対策推進法による、「重大事態」(いじめによる不登校や自傷行為)と認めるのが遅くなっていた。

報告書(案)では、不登校の要因をいじめ以外にも

「いじめ事案に関する進捗状況報告書(案)」によると、いじめの疑いがある7つの件のうち、15年5月にLINEグループを外した件と、16年9月に、LINEでの中傷、家をスマホで撮影し、LINEに送信した件は、いじめと認定している。しかし、部活中に肘で叩かれた件や首を絞められた件、遊びを断られた件、女子生徒の家の前で騒いだ件、不登校の直接のきっかけになった仲間外れは、いじめと認めていない。

その上で、一部のいじめの行為は、不登校の要因ではあるが、他の要因も無視できないとしたのだ。

「これらの行為は、不登校の要因のひとつではあるが、これまでの学校の対応に対する不信感や、サッカー部顧問の不適切な指導、母親の言動がきっかけとなり、サッカー部の一部の生徒が良介と距離をとることにつながったことなど、不登校の要因は複数あり、良介がいじめと訴える行為が不登校につながる要因のすべてではあると考えにくい」

※次回に続く