「『被害が少ないうちに潰しちゃおう』ということになった」森喜朗元総理が語るtotoの歴史と危機 - BLOGOS編集部
※この記事は2014年07月18日にBLOGOSで公開されたものです
7月16日、toto助成金交付式が行われた。totoの収益は、選手の育成や地域のスポーツ施設の整備など日本のスポーツ振興に役立てられている。平成26年度は、約177億円の助成が行われた。交付式には、約13億円の助成を受けた一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の代表理事・森喜朗元内閣総理大臣も出席。助成に対して、感謝を述べるとともに、totoが成立するまでの歴史や苦労を語った。「文部省がばくちの寺銭稼ぎをやるのか」と言われた
当時、文化の予算は1千億を超えていましたけれども、スポーツの予算は、100億から200億だったと思います。なんとかスポーツと文化のバランスをとったらどうかと、ずいぶんと努力いたしましたが、やはり何%アップという原則を財務省はなかなか崩せなかった。
ですから、それでは別の金をつくろうということで、いろいろとやってみましたけれど、「自転車振興会のお金を少し」といったら、「それはもうスポーツ振興に金は回っているか」と。「競馬のお金はどうだろう」というと、「それはもうちゃんと競馬としての事業に充てられている、あいまかりならん」という話になりました。
それならということで、サッカーくじをやろうと。当時はスポーツくじといったのですが。スポーツの中で一番、人為的に勝ち負けを決めることができない。もう少しわかりやすく言うと八百長ができないスポーツはなんだと、ずいぶん検討して、結果、サッカーが一番いいと。なおかつ、サッカーはイタリアをはじめとして海外でも実績がある。ということがあってサッカーくじをやることになりました。
なんといっても人様の“お屋敷”を借りるわけですから、まずサッカーの皆さんにご協力をいただなければなりませんが、幸い今日は村井さん(Jリーグチェアマン)が見えていますが、はるか昔の話ですから、川淵さんの頃でしたけれども、なんとかやろうということで、サッカーの方の全面的なですね、そして、Jリーグができることによって、サッカー熱が高まっていることもあって、ご協力いただけることができましたけれども、さっき河村さん(※河村建夫衆議院議員)が言われましたように、一番痛かったのは「文部省がばくちの寺銭稼ぎをやるのかね」と。こういわれたときが一番辛かった。
「どこがやるのかね?」と。これを民間の団体にやらせるわけにいかない。ということから、スポーツ振興センター、当時はまだそういう名前じゃございませんでしたけれども、そういうことがありました。
それから、一番うるさかったのがPTA。それから、今や超党派でやっていますけれども、某政党などは、なかなか「うん」とおっしゃってくださらない。「子どもをまきこんじゃいけない」。こういうことをおっしゃる。子どもを絶対に巻き込ませないやり方をするためには対面販売だと。それから、もう一つは子どもに意見を聞かないこと。やらなきゃならん、やっちゃいかんというのは難しいものでございました。そういうことで、できたのですけれども、「あたらない、わからない、売れない」というないない尽くしでありました。
子どもに意見を聞かないと、あの時のあの方式がわからないんですね。サッカーの組み合わせ、どうやるなんていうのは、なかなか大人にはわかりにくいところがあって、子どもに聞くと、「ルール違反だ」といわれる。特にコンビニでは絶対に売っちゃいかんと。これもなかなかものすごい制約でございました。しかし、ついには売り上げも100億前後。当初もくろんだ1割にもならない。
もう潰しちゃおうということで、確か樋口体育局長のころだったと思うのですが、「もう潰そう」と。「被害が少ないうちに潰しちゃおう」ということで、潰すということは、人間あきらめて壊すぞということになると変なエネルギーが出てきまして、ドカーンとBIGというのが出てきたんですね。BIGはtotoですよね?宝くじじゃないですよね?
このBIGというのが真っ先にあたって、「これで最後の葬式を挙げちゃおう」なんてな気持ちだったのが、これが意外にあたるようになって、安心だったという。要はスポーツというものに対する多くの皆様の理解があったからということです。
一生懸命、汗を絞って答弁をしていたのは、当時の文教委員会委員の提案者の麻生さんだったことを覚えていますが、今その麻生さんは、大蔵省、財務省の大臣で予算を締め上げることばっかりやっていまして、片方ではスポーツ予算をやりながら、スポーツ振興議員連盟の会長さんでしょ?麻生さんは。それが「あれはやっちゃいかん」「これはやっちゃいかん」「そんな金はtotoからとれ」とこういうようなことを言われると、これは何のためにtotoをつくったかわからない。
苦労して作ったお金が国庫に入るのは、いいことだが、いいことではない(笑)
えー、私は皆さんのお力で2020年のオリンピック・パラリンピックが東京に決定する前には、いろんな運動があったし、いろんな歴史があったけれども、やはり日本が取り組んだスポーツ基本法、そしてこのtotoの政策あるいは次に控えているスポーツ庁の設置、設立。こういうこうとが世界のスポーツ界に大変大きな好印象を与えて、日本は本当にスポーツに対して、みんな国民を挙げて、政府をあげて、政治家もみんな取り組んでいるということの評価も私は高かったとこう思っております。そういう意味で、新たなるチームをまた新しい本当に、また今度の理事長、いろいろお考えになっておられると思います。地方には、最近の話題ではですね、私は日本ラグビー協会をやっていますから、身近なこと申し上げて恐縮ですが、東大阪市は、甲子園と同じようにラグビーのやはり聖地。ここでなんとしてもワールドカップをやりたい。しかし、この競技場は近畿日本鉄道の所有物であって、なかなか国が応援をする体制が取れないということから、市長はだいぶ、なんというか清水から飛び降りるような思いだったんでしょう。
なるほど、こんな手があるんだなと私も考えましたが、花園競技場を市が買いますということで、最近市議会の方でも了承を得たというニュースが流れておりましたが、地域が本当に苦労しながら、「市民の力でスポーツの街をつくろう!!」と。こういう風にやっておられる地域がずいぶんございます。そういう地域ですね、ぜひこのいろんな意味で認定都市として協力していただくことも大変ありがたいと思っております。これも今日おそらく発表されるかなと思っております。
いずれにいたしましても、スポーツは先ほどのビデオを見ていても、本当に人間の能力をどこまで超えていくか、挑戦するという素晴らしい、私は現実だと思って、そういう意味では、ぜひ国会の先生方来ておりますが、スポーツ庁の方もいろんな意見があると思いますが、やはりまとめてスタートを切っていただきたいということをお願いをしております。
そして、最後になりましたが、村井さん(チェアマン)。本当にサッカーあってのtotoであります。ラグビーでも取り入れようという話になりましけれども、なかなか抵抗が多くて、そこまではいきませんでしたけれども、海外の試合も対象になるようになったり、いろんな法改正ができました。
あともう一つ、この機会に、馳先生、富田先生、皆さんにぜひお願いしておきたいのは、せっかくのtotoのお金をですね、若干お国の方に今召し上げられています。金額も結構な金額でありますが、苦労してつくったお金がそのままお国の国庫に入るのは、いいことだと思うが、あんまりいいことではない(笑)。オリンピックまでには、まだまだいろんな問題があって、経費も高くついております。そういう意味で、このtotoの資金を国を召し上げられる部分を未来永劫とは言わないが、せめてオリンピックまでの間は、オリンピックのために使うと。スポーツのために使うと。ということを、これは法律改正ですから、簡単なことです(笑)。
ぜひ、お力賜りまして、文字通り、国民をあげて、みんなで素晴らしい2020年の東京オリンピック・パラリンピックを是非成功させたいと思っております。認定を受ける側でお礼を申し上げるとともに、皆さんに応援をされて、ここまで来たことを大変感動深く、お礼を申し上げてご挨拶といたします。ありがとうございました。