小柄なほうがサーキットでは有利!?【教えてネモケン099】(教えてネモケン)
A.体が大きいから不利、小柄だから有利ということはありません
王者マルク・マルケス選手は169cmと小柄なほうだ
確かにMotoGPライダーは、小柄だったり痩せているといったイメージを持たれているかも知れません。ところがちょっと乱暴に聞こえるかもしれませんが、バイクと乗るライダーの体格や体重は、立ち会いで体重と体格でぶつかり合うために身体づくりするお相撲さんと違って、基本的には関係ないと思って構いません。
実際MotoGPのライダーは年齢的に若かったり、欧州でもレースが盛んであるイタリアやスペイン出身だったり、Moto3からMoto2へと小排気量マシンからステップアップしてくるため、小柄なライダーが多いのも事実です。しかし、英国やアメリカ、オーストラリアなどの大排気量スーパーバイク系出身のライダーは、むしろガッチリとした体格が良いライダーが主流という感じなのはご存知の通り。
何れにしても、小柄で体重も軽いライダーと、体格がよくて体重もあるライダーと、どちらが有利かというのは、限界を争うレースの世界でも大排気量のクラスとなると、歴代チャンピオンを見ればわかるようにどちらともいえないと思います。
ファビオ・クアルタラロ選手は178cm、長身というほどでもない
さらに象徴的なのがサスペンションの設定でしょう。おそらく多くの方が、体格の大きいライダーのスプリングは硬くて、小柄で軽いライダーのスプリングは柔らかいと思われているかもしれませんが、実はそうでもないのです。
リーンするスピードが素早く鋭いライディングだと、体重が軽くても30kgも重いライダーよりバネレートが強かったり、逆に体重はあっても常に一定の荷重移動で操るタイプだと驚くほどバネレートも低かったりします。
そうした体重よりサスがハードなのかソフトなのかを左右するのが、コースレイアウトです。サーキットによって高速コーナがあったり、S字が続いたりと様々で、そこでタイムを詰めていくには、各ライダーの勝負ドコロによって最もトラクションが作用する位置にサスペンションを設定するからです。
どこを勝負ドコロとしてどこを我慢するのか、ライダーの判断力とセッティングのノウハウで応えてくれるメカニックとの息の合った作業が必要となります。さらにチャンピオンライダーのメカニックなら、体重よりライディングスタイルでバネ常数や減衰力特性が決まってくるのをよく知っています。
目標を決めてサスペンションを調整するというのはレースシーンに限った話ではありません。特に速度域の上限も決まっている一般公道なら尚更、乗りやすく怖くない状態を作り、愛車に慣れることを目標としてサスペンションを設定してみましょう。
フランチェスコ・バグナイア選手も176cm、標準的なひとり
皆さんの中にはビッグバイクのサスペンション設定は「シロウトの自分が調整して戻せなくなるぐらいなら、様々なシーンを想定されているメーカー出荷時の設定が一番だろう」と思っている方が多いと思います。特にビッグバイクであれば、メーカーの出荷時設定は仕方のない事情で我々日本人にはベストといえなかったりします。
そもそも日本と海外では体格や体重に対するイメージが違います。日本人が考える90キロの人は恰幅がいいように聞こえますが、欧米の人たちにとって90キロの人は身長も相まってまったくフツーです。それを前提としたビッグバイクのサス設定は、欧米の180センチ90キロのライダーが、ハイウェイで二人乗りしても安定して走れるようなハードな設定となっています。そこで車体がブレてしまっては危険ですし、何かあれば訴訟になりかねません。
つまりメーカーが出荷時に設定したサスは、体重が軽く速度域の低い道路環境で走る日本人にとっては硬く動きにくい状態にあるのです。
まだキャリアも浅く、シロウトだから触るべきではないと思わず、まずはサスペンションの設定をもっと可動域の広い最弱の状態からだんだんと調整して、自分に合った設定にしてみるのをお奨めします。最弱にしたらダンパーの機能が失われてフワフワと危険な状態に陥ると思われたら、それは絶対にあり得ません。最弱にしたところで、調整しているのはバイパス部分でメインの減衰メカニズムは機能している範囲内にあるため心配は無用です。
サスペンションがよく動くようになれば、ライダーの曖昧な操作をタイヤなどに伝えにくくするため車体の動きを軽く感じられるようになります。
この思い切った調整が出荷時の硬く動きにくいサスとの違いを生み出し、得られる乗りやすさを明確に感じさせてくれるはずで、うまく乗れるようになる近道となるのは間違いありません。
アンドレア・ドビツィオーソ選手も165cm、意外に思うかも知れないが小柄だ