2022年3月のダイヤ改正では、輸送体系の見直しで廃止される列車があり、その一部が既に明らかになっています。廃止予定の列車を記録に収める人も増えていますが、首都圏ではどんな行先や種別が消えるのでしょうか。注目度の高いものを取り上げてみました。

京王線から消える、全国的にも珍しい種別

「準特急」という全国的にも珍しい京王(京王電鉄)の種別。これが2022年3月のダイヤ改正で特急に統合されることで廃止されます。

 京王の準特急は、2001(平成13)年のダイヤ改正から京王線と高尾線に設定されたもので、新宿方面と調布以西を速達で結びつつ調布以西の停車駅を充実させ、速達性と調布以西の利便性を両立した列車でした。


特急と停車駅を統一するため消滅する京王電鉄の「準特急」(2021年8月、伊藤真悟撮影)。

2013(平成25)年2月のダイヤ改正では停車駅に京王片倉・山田・狭間の3駅が加わって高尾線の全駅に停車となったほか、2015(平成27)年9月のダイヤ改正では相模原線にも設定され、笹塚と千歳烏山が停車駅に加わっています。

 今回のダイヤ改正では、特急の停車駅が追加されて準特急と同じ停車駅となり、特急と準特急を区別する必要がなくなったことで準特急の種別が消えることになりました。

 特急でもなければ急行でもない準特急という種別、過去には小田急(小田急電鉄)や近鉄(近畿日本鉄道)でも存在していたものの、いずれも短期間で消えています。登場から廃止まで21年間も続いた京王の準特急は珍しい存在です。

東京直通列車が廃止される八高線

 続いて、中央線(中央快速線)では八高線と直通する列車が廃止され、高麗川行きと箱根ケ崎行きがなくなり、八高線からは東京行きの列車が消滅します。

この列車は八高線の八王子〜高麗川間が電化開業した際に設定されたもので、1996(平成8)年3月から運転され、後に箱根ケ崎行きも追加されました。

 高麗川行きは土休日も運転されていますが、箱根ケ崎行きは平日のみの運転です。いずれの列車も五日市線直通の武蔵五日市行きを連結し、立川までは中央線、立川から青梅線を走行して、拝島で八高線直通列車(高麗川行き・箱根ケ崎行き)と五日市線直通列車を切り離し、八高線と五日市線に分かれていきます。この関連で、立川では八高線直通の箱根ケ崎行きが青梅線の列車として案内されているのが面白いところです。


拝島駅1番線に到着するE233系の高麗川・武蔵五日市行き(2022年2月、柴田東吾撮影)

 八高線からの東京行きは逆のルートで運転され、こちらも武蔵五日市発の五日市線直通列車と拝島で連結しています。八高線の列車は4両編成で運転されている一方、五日市線内の列車は4両編成と6両編成が運転されています。中央線は10両編成で揃っているので、両者の直通列車を連結して10両編成とするのがちょうど良いのかもしれません。

 この八高線・五日市線直通列車は、拝島では五日市線の列車が発着する1番線で連結・切り離し作業を行っています。そのため八高線直通列車の高麗川行きや箱根ケ崎行きは、青梅線から拝島駅1番線に入った後、青梅線を跨いで八高線の線路に入るという、ちょっと変わったルートを走行するのが特徴です。

 中央線からの八高線直通列車の廃止により、中央線のE233系0番台による八高線乗り入れが終了。これにより、八高線からは液晶式(LCD式)の車内案内表示器を備えた車両が消え、八高線内の停車駅を画面で表示する車両はなくなってしまいます。また、高麗川では中央線E233系0番台と八高線の気動車のキハ110系が並ぶ姿も見られましたが、こちらも見納めとなります。なお、ダイヤ改正後も八高線内の高麗川行きや箱根ケ崎行きは引き続き設定される見込みです。

登場から4ヶ月で撤退する横浜線直通の車両

 横浜線では、朝と夕方に相模線からの直通列車が運転されていますが、今回のダイヤ改正で廃止され、相模線内での折返し運転だけとなります。そのため、相模線の八王子行きや八王子発の相模線直通茅ケ崎行きがなくなるのです。相模線からの横浜線直通列車は、1991(平成3)年に相模線が電化開業した際に設定されたもので、相模線では電化の際に登場した205系500番台も引退する予定ですが、車両の引退とともに列車も廃止されるかたちです。


八王子駅5番線に停車するE131系500番台の茅ケ崎行き。中央線E233系と並ぶのもあとわずかの期間(2022年2月、柴田東吾撮影)。

 205系500番台の後継車両として、2021年11月18日の夕方から新型車両のE131系500番台が相模線で営業運転を開始し、11月20日からは横浜線にも乗り入れています。今回、横浜線直通が廃止されることで、E131系500番台の横浜線乗り入れは営業運転開始から4か月も経たずに終了することになります。

 E131系500番台は、停車駅を液晶式の車内案内表示器で表示していますが、走行路線で路線図の色が違い、相模線は青、横浜線は緑で表示しています。相模線内では青色だった表示が、横浜線では緑に変わるという丁寧な作りでしたが、この車内表示も短期間で見納めとなります。また、八王子で中央線のE233系0番台や八高線の列車と顔を合わせる機会もなくなるのです。

上野東京ラインから消える長距離列車

 開業7年を迎える「上野東京ライン」では、宇都宮線(東北本線)の列車が宇都宮以北の乗り入れを終了するため、氏家始発熱海行きの列車が消えるほか、黒磯行きの列車がなくなります。あわせて宇都宮〜黒磯間でのグリーン車の運転も終了します。


黒磯駅でE531系と並ぶ「上野東京ライン」のE231系。2022年3月改正以降、E231系とE233系は入線しなくなるため宇都宮〜黒磯間でグリーン車に乗車することはできなくなる(2018年1月、柴田東吾撮影)。

 これにより、熱海〜黒磯間267.9 km(実距離は尾久経由の268.1km)の長距離普通列車(平日の熱海18時52分発、黒磯23時39分着の1662E列車と土休日の黒磯6時52分発、熱海11時28分着の1545E列車)もなくなるのです。いわゆる「乗り鉄」の人にとっては残念なことかもしれません。

 ダイヤ改正後の宇都宮以北では、新型車両のE131系600番台と烏山線直通のEV-E301系が使用されます。

特急「湘南」「成田エクスプレス」から消える、あの行先

 特急列車でもダイヤ改正で行先の変更が行われ、首都圏を走る特急では「湘南」と「成田エクスプレス」で消滅する行先があります。

 まず、特急「湘南」です。平日朝に設定されている「湘南6号」品川行き(小田原6時37分発、品川7時47分着)が東京まで列車が延長されます。特急「湘南」は、東海道本線の通勤ライナーだった「湘南ライナー」を特急に格上げしたもので、あわせて車両の置き換えも行われたことも記憶に新しいところです。


小田原駅に停車するE257系2000番台の特急「湘南」。品川行きの「湘南6号」は東京行きとなる(画像:写真AC)。

 特急「湘南」の品川行きは運行開始から1年で終了となります。しかし、前身となる「湘南ライナー」の品川行きは1991(平成3)年に設定されたのが始まりで、30年程の歴史があったのです。この列車は朝のラッシュ輸送のピークとなる時間帯に設定されているので、品川までは貨物線などを駆使して走行していますが、品川から東京まで列車を設定する余裕がなく、品川止まりとなっていました。今回、朝のラッシュ時間帯に設定されている列車の見直しにより、晴れて東京乗り入れが実現することとなります。

 次に、特急「成田エクスプレス」では大宮発着がなくなり、「成田エクスプレス40号」大宮行き(成田空港17時17分発、大宮19時17分着)が姿を消します。大宮発着の「成田エクスプレス」は1998(平成10)年12月のダイヤ改正で設定されたもので、新宿発着の「成田エクスプレス」を大宮に延長したものです。今回、大宮〜新宿間の運転を取りやめることで、以前の運行形態に戻ることになります。

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 加えて2022年3月のダイヤ改正では、相模線と八高線・川越線八王子〜川越間、東北本線(宇都宮線)宇都宮〜黒磯間などでワンマン運転が開始されます。この関連で、行先表示などがこれまでと変わる可能性もあります。