1月7日にデザインが初公開された6代目「ステップワゴン SPADA」(写真:尾形文繁)

ホンダは2022年1月7日、通算6代目となる新型「ステップ ワゴン」を発表。「AIR(エアー)」と「SPADA(スパーダ)」をオンラインで公開した。なお、今回はデザインやコンセプトの発表のみで、発売は2022年春が予定されている。

これまでとは異なるエアーとスパーダというグレード設定については、ホンダが行ったミニバン購入意向者に向けたスタイリングの嗜好性調査によるものだという。


東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

調査の結果、約7割の人が従来のスパーダような「高級」「スタイリッシュ」を求める一方で、約3割が「ナチュラル」なイメージを求めていることが明らかになったとし、従来通り廉価グレードにさまざまな機能やエアロパーツなどを足した上級グレードを設定するのではなく、価値観や世界観の違う2つのグレードを設定するに至ったと説明する。

この2つのグレードを設定することにより、ユーザーの選択肢の自由度の幅を広げる目論見だ。また、スパーダには派生グレードとして、「スパーダ プレミアムライン」も用意される。

ターゲットはミニバンネイティブ

ステップワゴンは、使う人の生活をより楽しく豊かに広げることを目指す「クリエイティブムーバー」シリーズとして、初代モデルが1996年5月に登場。当時のワンボックス型乗用車は商用車ベースで、運転席下部にエンジンを搭載するキャブオーバータイプが主流となっていた中で、FF(前輪駆動)レイアウトを採用していた。

このレイアウトによる床の低さ、シンプルな箱型スタイル、そして安価な価格設定などにより、累計約47万台を販売。一気に人気モデルとなり、ミニバンブームを牽引した。


スクエアなフォルムで人気を博した初代「ステップワゴン」(写真:尾形文繁)

そこから約26年の時を経て、今回発表されたのはその6代目モデルとなる。ホンダは、この新型ステップワゴンのターゲットユーザーを30〜40代に設定。この年代層は、幼いころからミニバンに慣れ親しんで育ってきた“ミニバンネイティブ”だと説明する。

そして、このミニバンネイティブにとってのミニバンを、「あらゆる用途に使える、生活を豊かにできるアイテム」と仮定。グランドコンセプトを「#素敵な暮らし」とし、家族のためにしてあげたいことや自分のためにしたいことなど、さまざまな目的に応えることで、使う人に「素敵な暮らし」を提供できる存在を目指したという。

6代目ステップワゴンのデザインコンセプトについて、エアーのデザインを担当した花岡久和氏は次のように述べている。

「安心と自由をそのまま表現したいという考えから、コンセプトである『素敵な暮らし』が見ただけで伝わるデザインを目指しました。その手法は、『表面のディテールではなく、カタマリで表現する』こと。徹底したシェイプのバランス調整と細部にわたる入念な処理で、ミニバンとしての本質・本物感を追求しました」

その説明どおり、ステップワゴンエアーを見た第一印象は、シンプルで爽やか。いい意味でクルマ自体に強い主張を感じることのないクルマであった。

また、初代や2代目を彷彿とさせるスクエアなデザインに、「フィヨルドミスト・パール」などの明るく優しい5色のカラーが組み合わされることで、“そこにあるのが当たり前”というような、安心感のあるデザインとなっている。


AIRとSPADAのカラーバリエーション展示(写真:尾形文繁)

一方のスパーダのデザインを担当した大西優一氏は、「スパーダのコンセプトである『もう1つの、素敵な暮らし』を実現するために、家族をしっかりと守る存在にしたいという想いがありました。みんなが安心して自由にどこまでも移動できるよう、力強い存在感ある佇まいと伸びやかなシルエットを追求しています」と説明。

キリっとした力強い印象のフロントマスクや、ボディ下端をぐるりと一周するメッキモールが独自の印象を与えると同時に、「トワイライトミスト・ブラック・パール」など塊感のあるダークな5色のボディカラーが用意され、エアーとは正反対ともいえる重厚で上質な存在感のあるデザインとなっている。

インテリアはどう棲み分けているのか?

「家族みんながリラックスできたり温もりを感じられたりといった、安心感を重視した」というインテリアも、エアーとスパーダでテイストを異にする。

エアーは、温かみのあるカラーを用いた明るい室内で、リビングのような安心感を。スパーダは、スタイリッシュな印象を与えるダークカラーで、上質さを演出し、棲み分けを図る。


ウエストラインとつながる水平なインストルメントパネルが特徴的(写真:尾形文繁)

また、「共働きが増えて日々を忙しく過ごしている家族に、もっと気軽に子どもと出かけていただくにはどうしたらよいか、を一番に考えた」として、両感覚をつかみやすくするための工夫が随所に凝らされている。

たとえば、窓の稜線を水平に揃えると、フロントフードの端まで見えるように視界を確保。高速道路への苦手意識や不安を取り除くために、「守られている」と感じる高さにベルトラインを設定したことも新しい。

ほかにも2列目、3列目と後列へいくほどシートの着座位置を高くすることで、前方の景色が見えやすくしている。これは車酔いをしにくくするための工夫でもある。


シート座面の高さに注目すると、1列目より2列目のほうが高くなっていることがわかる(写真:尾形文繁)

また、国内量産車において「ホンダ史上最大の空間が実現された」という室内は、家の中でのリラックスした暮らしがシームレスにクルマへも続いていくような空間を追求したという。

具体的には、乗員が近づいたり離れたりすることでホッとできる距離感を生み出せるよう、2列目キャプテンシートに新たなスライド機構やオットマンを採用。このシートは、ワンアクションで前後左右に動かすことできる。全タイプのシート表皮に撥水撥油加工を施すなど、日常でのメンテナンスが重視されている点もトピックだ。

ミニバン市場に一矢報いる存在へ

先代の良し悪しを研究し、全方位で進化を遂げた新型ステップワゴン。その開発の根底にある想いは、ミニバンが「子育て家族の必須のアイテム」であるという事実だ。あくまでも主人公は家族で、「クルマは暮らしの引き立て役に徹する、という考え方だ」とホンダは強調する。

今回、コンセプトやデザインは発表されたが、詳しいスペックやパワートレインは明らかにされておらず、ティザーサイトにより最新の安全運転支援システムが搭載されることや、ガソリンエンジンに加え、ハイブリッドの「e:HEV」が設定されることなどが明示されているのみである。


SPADAの後部に装着される「e:HEV」のエンブレム(写真:尾形文繁)

奇しくも最大のライバルであり同クラスのベストセラーである、トヨタ「ノア」「ヴォクシー」のフルモデルチェンジが間近であると聞く。先代ステップワゴンは“ノアヴォク”に押され気味であったが、新型はどれだけ肉迫できるのか。あるいはアドバンテージを取れるのか。デビュー6年目を迎えた日産「セレナ」とともに、ミニバン市場はさらに活況を呈しそうだ。

なお、1月14日から1月16日に千葉県・幕張メッセで開催される「東京オートサロン2022」でも、新型「ステップワゴン」のプロトタイプと、新型ステップワゴンをベースにしたカスタムモデル「ステップワゴンe:HEVスパーダ・コンセプト」が展示される予定となっている。オートサロンでの新たな情報公開に期待したいところだ。