メルセデス・ベンツの象徴といえば、車体にデザインされた星型のエンブレムでしょう。100年以上の歴史を持つ世界最古のエンブレムと言われますが、実は細かな変化を経て現在に至ります。エンブレムが、メーカーの変遷や社会の変化を物語っているのです。

その名は「スリーポインテッド・スター」

 メルセデス・ベンツのクルマといえば、車体にデザインされたエンブレムが特徴のひとつ。「スリーポインテッド・スター」と呼ばれる、このエンブレムの起源は今から100年以上前にさかのぼります。


電動モデルのAMG EQS 53 4MATIC。グリルとボンネット上の双方にエンブレムが配置されている(画像:ダイムラー)。

 エンブレムの産みの親は、ブランドとしてのメルセデス・ベンツを擁するダイムラー社の前身のひとつ、ダイムラー・モトーレン・ゲセルシャフト社の創業者・ゴットリープ・ダイムラーです。彼が妻に送った「この星がいつか私の工場の上に輝いて成功を祝ってくれる」いう手紙に描いてあったのが、スリーポインテッド・マークでした。

 ダイムラーの死後、その意思を受け継いだ息子たちが中心となり、1909(明治42)年に「スリーポインテッド・スター」が商標登録されました。ちなみに、このマークの3つの先端部分は「陸・海・空」を指しており、この3つの分野での繁栄を願う意味があるそうです。

 その後、ドイツは第1次世界大戦による敗北で荒廃します。そこで「輸入車の攻勢に立ち向かおう」と1926(大正15)年にダイムラー・モトーレン・ゲセルシャフト社はカール・ベンツ社と合併、ダイムラー・ベンツ社という1つの会社になり、ブランドとしてのメルセデス・ベンツもスタートしました。

 この時、メルセデス・べンツのエンブレムには、スリーポインテッド・スターの周りにカール・ベンツ社のエンブレムであったリングと月桂樹がデザインされていました。その後、エンブレムの変遷はありましたが、現在のシンプルなエンブレムになったのは、ダイムラー・ベンツからダイムラーへ社名変更した後、2008(平成20)年のことです。

 メルセデス・ベンツ以外にも、たとえばトヨタのエンブレムは頭文字の「T」を重ねることで、ユーサーとメーカーの信頼関係を表現しているなど、自動車メーカーのエンブレムにはそれぞれに成り立ちがあります。一方で、自動車が「100年に一度」といわれる転換期を迎えるなか、日産やプジョーなどはエンブレムを変更しています。それぞれのエンブレムの意味を改めて調べてみるのもいいのではないでしょうか。