ネット証券が好調な背景とは?

ネット証券は「少額投資が可能」「手数料の低い商品が多い」などのメリットが存在し、ネットでの証券売買に抵抗の少ない若年層を中心に、積み立て投資の需要を集めているようです。

参考:
「投信販売、楽天証券が初の首位 ネット経由が主流に」(日経新聞2021/11/16)
「楽天証券、700万口座 積み立て設定金額も月額700億円超に」(IT media ビジネスオンライン2021/12/7)

楽天証券を含めたネット証券での投資信託売買にクローズアップすると、次のような傾向があります(あくまで一般的な傾向であり、すべてのネット証券会社に当てはまるわけではありません)。

手数料が安い商品が多い 少額投資に対応しているケースが多い メディア記事などの情報コンテンツが豊富

手数料が安い商品が多い

投資信託で投資を行うときの手数料は大きく分けて次の3つです。

購入時の手数料 管理費用など運用期間中にかかる手数料 売却時の手数料(ただしかからない商品も多い)

このうち、ネット証券では特に購入時の手数料がかからない「ノーロード」とよばれる商品が多くなっています。例えば楽天証券では、2016年時点ですでに「ノーロード」の商品が1,000本を突破しているなど、購入手数料が無料の商品を積極的に販売していました。

参考:楽天証券 | ノーロード投信取扱本数 1000本突破!

少額投資に対応している商品が多い

従来投資信託は、一般的な投資信託(公募投資信託)商品を購入するのに10,000円程度は必要という状況でした。

株式などと比較するとこれでも相対的に少額ですが、ネット証券の場合は、100円程度で投資可能な商品を取り扱っている証券会社も少なくなく、多くのネット証券で1,000円程度で買える商品があります。

若年層はまとまった金額を用意するのが難しい方も多く、こうした少額投資への対応力がネット証券への関心を集める要因となっています。

情報コンテンツが豊富

ネット証券は、Web主体であることを強みに、独自のメディアなどを運営しているケースが少なくありません。例えば楽天証券の場合は「トウシル」というメディアで投資に関する情報やマーケットに関する知見などを紹介しています。

特に若年層はWebによる情報収集をスムーズに行うのが日常になっているため、Web上で豊富な情報収集ができる証券会社を好むのです。

ネット証券で人気を集める投資信託の傾向

楽天証券のランキングを参考にしながら、ネット証券において人気の投資信託について見ていきましょう。

直近の楽天証券における人気商品は次のようになっています(2021年12月18日時点)。

参照:楽天証券 投信スーパーサーチ で、「ランキング」>「買付(全銘柄)」でソート

まずは人気10商品の特徴をごく簡単に紹介します。

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)

このあとにも何度か登場しますが「eMAXIS(イーマクシス)」は三菱UFJ国際投信という運用会社が運用する、インデックスファンドのシリーズ名です(インデックスファンドについてはこのあと説明します)。

商品名にも入っている通り、アメリカの株式指数の一つ「S&P500」に連動するように運用されます。指数とは、一定の条件に含まれる銘柄の平均的な値動きを示すものです。例えば「日経平均225」は、日本の東証第一部上場銘柄のうち代表的な225銘柄の値動きを平均したものです。 

つみたてNISAの対象商品です(2021年12月時点)。

「S&P500」について詳しくは下記の記事もご覧ください。

楽天・全米株式インデックス・ファンド

S&P500はアメリカの企業500社をまとめた指数ですが、こちらは「全米株式」の名前の通り、アメリカの上場企業(約4,000社)すべての株式銘柄をおおむねカバーした株式指数に連動するように運用されます。     

この商品の運用会社は楽天投信投資顧問です。

つみたてNISAの対象商品です(2021年12月時点)。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)

こちらは名前の通り、全世界の株式が含まれる「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」という指数に連動することを目指して運用され、2,929銘柄が組み入れられています(2021年11月月報より)。

なおこの後、同じ商品名で最後に「除く日本」がつくものがありますが、そちらには日本の株は含まれません。ですので、こちらの商品には日本の株が含まれることになります。

運用会社は三菱UFJ国際投信です。

つみたてNISAの対象商品です(2021年12月時点)。

楽天レバレッジNASDAQ-100

アメリカのベンチャー企業向けの株式市場「NASDAQ」の中で、時価総額の大きい100社から構成される「NASDAQ-100」の指数に対して、2倍の値動きになることを目指して運用される商品です。

レバレッジ」とは効率良く投資を行おうとする投資手法で、基本的に指数の数倍の値動きになるように運用されるリスクが高めの商品です。

運用会社は楽天投信投資顧問です。

楽天日本株4.3倍ブル

日本の株式指数の4.3倍の値動きになることを目指して運用されます。株式指数については特に指定されていません。そのため流動性などを勘案して、適切な指数が参考にされています。

運用会社は楽天投信投資顧問です。

iFreeレバレッジNASDAQ100

iFreeと名前のつく商品は、大和アセットマネジメントが運用している商品になります。運用会社は異なりますが、先ほどと同様に指数「NASDAQ100」の2倍程度の値動きとなるように運用されます。こちらもレバレッジを効かせているリスクの高めの商品です。

楽天・全世界株式インデックス・ファンド

名前の通り、全世界の株式が含まれる「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」という株式指数に連動するように運用されます。この商品1つを購入することで、アメリカ・ヨーロッパ・日本・中国・インドなど各国の株式約8,800銘柄に投資していることと同じになります。

運用会社は楽天投信投資顧問です。

つみたてNISAの対象商品です(2021年12月時点)。

アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信

上位の投資信託の中では唯一のアクティブファンドです。アメリカの成長株に投資し、ベンチマーク(アクティブ運用における基準のようなもの)である「S&P500」を上回るパフォーマンスを目指して運用されます。

運用会社はアライアンス・バーンスタインです。

【関連リンク】
お金のプロが選ぶ、おすすめのアクティブ型投資信託はこの3本!

eMAXIS Slim先進国株式インデックス

日本を除く22カ国で上場している大~中型株の株価動向を代表する指数「MSCIコクサイ・インデックス」と連動するよう運用されている商品です。

運用会社は三菱UFJ国際投信です。

つみたてNISAの対象商品です(2021年12月時点)。

eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)

先ほども全世界の株式指数「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動する投資信託がありましたが、こちらは「日本株」が含まれない商品です。

運用会社は三菱UFJ国際投信です。

つみたてNISAの対象商品です(2021年12月時点)。  

同じような投資対象の投資信託が複数ある場合はどれを選べばいい? 

上記をよく見ると、アメリカや全世界の株式市場など、同じような対象に投資している投資信託が複数ランクインしています。こういったときは、次の3点から最も魅力的な商品を見つけるのがおすすめです。

まずは管理費用の安さ。インデックスファンド同士で(ハイリスクを狙うならブルベアファンド同士で)、かつ同じような投資先でも、よく見ると管理費用にわずかに差があります。例えばレバレッジNASDAQ-100の商品が2つランクインしていますが、楽天レバレッジNASDAQ-100の方が0.22%管理費用が安いです。費用の安さはそれだけ収益を削られずに済みますので、まずは管理費用の安さに注目します。

また、これまでのパフォーマンスも要チェックです。例えばeMAXIS Slim米国株式(S&P500)と楽天・全米株式インデックスファンドはどちらもアメリカの株式に投資する商品です。しかし、リターンを見ると、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の方が高く、またリターンのばらつきの大きさを表す標準偏差はeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の方が低くなっています。

これらは少なくとも過去の成績においてはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の方が優れていたことを表しますので、こうした基準をもとに銘柄を選択するのも一案です。

参照:楽天証券 投信スーパーサーチ 「シャープレシオ・標準偏差」
参照:楽天証券 投信スーパーサーチ 「リターン」

ただし、過去の成績が良いからといって、今後も同じように良いとは限りません。上記であれば、将来は楽天・全米株式インデックスファンドが上回る可能性だって当然あります。

過去の成績を絶対的なものとして過信せず、あくまで、投信選びの基準の一つとして考えるようにしましょう。

「投資対象が違う商品はどう選べばいい?」という場合は、投資の基本的な考え方の一つ「分散投資」がポイントになります。投資対象が幅広ければ広いほど、その分リスクも分散されます。ただその分、利益も抑えられるともいえます。

※上記の商品の特徴は筆者の認識のもと記載しており、その正確性は運用上の性格からも保証しかねます。正確な商品性は各商品の最新の目論見書などを参照してください。

ネット証券における人気投資信託の特徴

いま見てきた人気の投資信託を俯瞰すると、大きく4つの特徴に分けられます。

※以下、「投信」「ファンド」はいずれも「投資信託」と同義です

株式投資信託 インデックス投資信託 ブルベア投資信託 ハイパフォーマンスな商品

それぞれを詳しく解説していきます。

株式投資信託

まず目につくのは、上位の銘柄はすべて株式を中心に投資する「株式型の投資信託」である点です。実は投資信託には、次のような商品があります。

債券 REIT コモディティ(金や原油など) 新興国 複数の資産にバランス良く投資するもの

このようにさまざまな投資先があるにもかかわらず、2020年の新型コロナウイルスでの相場急落以降、株価が力強く回復する中では、株式型の投資信託が人気を集める状況が続いています。

また、ネット証券は若年層が多いという特徴があり、老後までの期間が長く、また投資で「収益を上げる意識」が高いことから、相対的にリスクの高い株式投資を好む傾向にある点も、株式投信人気に拍車をかけているようです。

インデックス投資信託

紹介した10銘柄のうち、次の6銘柄がいわゆる「インデックス・ファンド(インデックス投信)」となっています。

eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 楽天・全米株式インデックス・ファンド eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 楽天・全世界株式インデックス・ファンド eMAXIS Slim先進国株式インデックス eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)

インデックス投信とは、特定の指数(インデックス)に連動するように運用される投資信託のこと。指数はメジャーなものでは日本の「日経平均」、アメリカの「S&P500」などがありますが、よく調べないと耳慣れない指数もあります。

インデックス投信は、一般的に手数料が安いのが特徴です。特に運用期間中にかかる「管理費用」が安い傾向にあります。なかでも特に安い「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は年間で0.1%以下の水準です。

管理費用は運用のパフォーマンスから少しずつ控除されていくため、管理費用が安ければ、ほかの条件が一緒ならば一般的に収益を上げるチャンスが大きいということを意味します。

ブルベア投資信託

ブルベア投信とは、次の2つの商品の総称です。ただし「ブル」についてはレバレッジ商品も含まれます。従ってレバレッジNASDAQ-100なども一般的にはブル商品の一種としてカテゴリ分けされます。

ブル商品:特定の指数の数倍の値動きになるように運用される商品 ベア商品:特定の指数のマイナス数倍の値動きになるように運用される商品

コロナの回復局面では株価は概して好調なこともあり、「ブルベア商品」といってももっぱらブルの商品が人気です。具体的には次の商品が「ブル商品」にあたります。

楽天レバレッジNASDAQ-100 楽天日本株4.3倍ブル iFreeレバレッジNASDAQ100

特にレバレッジNASDAQ100は「レバナス」の愛称でSNSなどでもしばしば話題に上ります。

なお、レバレッジ商品は指数の数倍の値動きを見せるリスクの高い商品です。特に株式指数は、ただでさえ個人の投資先としてはリスクが高い資産なのに、その数倍の値動きを見せるというのは、ハイリスクな商品といえるでしょう。投資する場合には過度にリスクを取らないように注意が必要です。

ハイパフォーマンスな商品

株式市場が好調な環境が続いているとあって、上位の銘柄はいずれも近年のパフォーマンスが非常に良好です。

特に話題となったレバナスのうち、運用期間が1年を超えている「iFreeレバレッジNASDAQ100」は、過去1年のリターンが62%と、良好な相場環境の中でレバレッジ商品の強みを発揮し、際立ったパフォーマンスを見せています。

62%というと、100万円投資すると1年後には162万円になる計算ですから、まさにこの1年投資しておけば高収益が得られたということになります。

また、10銘柄の中で唯一のアクティブ商品である「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」も1年間で40%を超えるパフォーマンスです。アメリカは日本以上に株式相場が好調で、コロナ後すでに何度も最高値を更新しています。

こうした近年のパフォーマンスの良さに魅力を感じた人が多かったからこそ、人気を集めているという側面もあると考えられます。

なお、繰り返しますが、過去に良好なパフォーマンスだったからといって、必ず次の1年も高い収益を上げるとは限りません。今後も株式相場が良好な経済環境が続くかどうかよく検討したうえで、投資判断をするのが大切です。

勢いづくネット証券の人気商品を参考に投資先の検討を

今回紹介したように、楽天証券をはじめとしたネット証券での投信販売が拡大傾向です。手数料の安さや情報コンテンツの豊富さなどが魅力となって、若い投資家を中心に需要を集めています。

そのネット証券では、今回紹介したようにインデックス系もしくはブルベア系の株式投信が人気。「人気商品=今後も必ず儲かる」とはもちろん言えないものの、人気商品を調べておくことで、魅力的な投信を発見するヒントが見つかるかも知れません。

たとえ実際にはその商品に投資しないとしても、世の中で人気の投資信託を知り、研究しておくと、自身にとって適切な投資先を見つけやすくなるでしょう。