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海外人気の高い「仮ナンバー」とは?

執筆:Kumiko Kato(加藤久美子)編集:Taro Ueno(上野太朗)

通称、「仮ナンバー」と言われるナンバープレートは海外では「JDMプレート」と呼ばれ年々、人気が高まっている。海外の日本車旧車オーナーからは、装飾用として人気が高い。

【画像】あなたは見分けられる? ホンモノとニセモノの仮ナンバー「徹底比較」 全9枚

日本人からしてみれば、「仮ナンバーカッコイイ!」など思う人はほとんどいないだろうけれど。


いわゆる仮ナンバー。斜線タイプと赤枠タイプが存在し、海外で人気になっている。    加藤博人

ところでこの「仮ナンバー」には2種類あることをご存知だろうか? いずれも地名が入っているが、斜め線が入っているタイプと赤枠で囲まれたタイプがある。

「登録されていない自動車や車検が切れた自動車などを一時的に運行させる」という用途はほぼ同じだが実はこの2つには明確な違いがある。

斜線タイプ:臨時運行許可番号標

個人でも取得が可能で市役所や区役所などで取得する。

運行する経路や目的地によって3日、4日、5日と使用できる日数が決まっている。

自賠責保険の証書(原本)や車台番号が分かる書類(コピー可)など必要書類を用意してその場で受け取る。

1回の使用料は750円(横浜市の場合)

赤枠タイプ:回送運行許可番号標

「ディーラーププレート」や「赤枠」とも言われる。

業務に必要な車両の回送(最長5年間有効)が可能で各地の運輸支局が窓口。

取得できるのは自動車の製造/販売/陸送/分解整備を業とする業者に限られている。

経路などの指定はなく、業務の為にクルマを動かすのであれば使用できる。

この仮ナンバー。特に海外で人気があるのは、赤枠ではなく斜線の方である。なぜか?

なぜ海外で日本の「仮ナンバー」が人気?

実際、海外のフリマサイトなど見ても、模造品含めて販売されているのは斜線の方が圧倒的に多い。

東南アジア在住の出品者に人気の理由を聞いてみたところ、このような回答だった。


2019年の米国SEMAショウ「バトル・オブ・ザ・ビルダーズ」というコンテストで決勝に残ったBMW M3には品川ナンバーの仮ナンバー(もちろん模造)が付けられていた。    加藤博人

「あのナンバーがあれば、日本ではどんなクルマでもどんな場所でも走れると聞いた。まさに最強のナンバー」

「赤いストライプがカッコいい。白と赤で日本国旗のイメージがある」

「JDMにピッタリ! あんなナンバー他の国にはないでしょう? 日本独自でホントにCOOL!!」

2019年の米国SEMAショウ「バトル・オブ・ザ・ビルダーズ」というコンテストで決勝に残ったBMW M3には品川ナンバーの仮ナンバー(もちろん模造)が付けられていた。もはや日本車等関係なく「仮ナンバー=カッコいい」という認識なのだろう。

ちなみに、「どんなクルマでもどんな場所でも走れる」とは合っている部分もあるが斜線ナンバーの場合は、「道路運送車両法」に定められた運行目的に限って許可することができる。

1目的1貸与となる。

・新規登録や継続検査等のため運輸局へ運行する場合

・販売を業とするものが販売の目的で回送する場合

・盗難にあったナンバープレートの再交付を受けるため運輸局に運行する場合 など

なお、クルマ系のイベントなどで明らかな違法改造車が仮ナンバーをつけて参加しているケースもあるがこれは目的外の利用となる。

道路運送車両法第107条違反となれば、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、またはこれが併科される。

保安基準に適合した車両であっても抹消登録(廃車の手続き)後に保管してあるクルマを、必要な時だけ走らせるための使用も同様にNG。

オーナー系ミーティングの中には仮ナンバーを付けたクルマの来場を禁止しているところもある。

海外で仮ナンバーが人気! といっても、外国に住んでいる人が日本の仮ナンバーを入手するのは非常に困難。

入手経路を探った。

模造仮ナンバー、フリマサイトなどで多数

実際に使われていた仮ナンバーは大変数が少ないし、そもそも、仮ナンバーには返納義務があるので、日本国外に出ることからしてありえないことである(フリマサイトなどで販売されていたらそれは盗品の可能性が高い)

日本国内でわざと返却せずに転売することなども当然NGだ。


「仮ナンバー」としてネット上で販売されている例。

では、どうやって入手するのか? それは、本物の仮ナンバーではなくて、レプリカ、フェイクの仮ナンバーを購入するのである。

このレプリカ、実際に手にしてみると本当によくできている。

斜線の赤い色が微妙に異なるのと「9」の書体も少し異なってはいるが、これは一般の人はもちろん、警察官でさえも騙されそうな位、ホンモノに近い。

実際、フリマサイトでは1枚4000円前後から販売されている。

例え装飾用にしてもわざわざ日本人が仮ナンバーの模造品を高いお金を出して買うことはありえないだろう。

また、本当に仮ナンバーが必要であれば所定の手続き後、750円を支払えば正式な仮ナンバーを使用できる。

ちなみに、2021年7月中旬時点では、ヤフオク!/メルカリ/ペイペイフリマ、ラクマなど大手のフリマサイトで模造仮ナンバーがたくさん出品されていた。

商品説明にはいずれも、「装飾品です。公道では使用しないでください」との注意書きが書かれてあった。

使用はもちろん製造もNG 罰金100万円

しかしこれらの模造仮ナンバーが、フリマサイトから続々と姿を消しつつある。メルカリではいまだ、販売されているがそれでも当初よりはかなり数が減っている。

その理由についてヤフオク!ペイペイフリマの運営会社に聞いてみたところ、以下の回答を得た。


かつてヤフオク!などで販売されていた「模造」仮ナンバー。現在はすべて削除されている。数字部分がアルファベットになっているなど明らかに装飾用であるナンバープレートについては出品が継続されている。

「自動車登録番号標として行使をする目的で製造されたものは道路運送車両法違反となるが(同法98条1項、2項)、インテリア用やイベント用など、適法な利用用途があるものにおいても、外観上、一定程度紛らわしいものについては、購入者が法令違反行為をする恐れがあることから、一定の線引きをしてガイドライン違反として対応を進めています」(ヤフー株式会社 広報室)

現在ヤフオク!では模造仮ナンバー(本物と見分けがつきにくい)はすべて削除されている。

ただし、例えば「日産 330 ま ・R-34」や「豊田 330 ま ・1-JZ」などのように数字部分がアルファベットになっているなど明らかに装飾用であるナンバープレートについては出品が継続されている。

なお、道路運送車両法第98条「不正使用等の禁止2項」においては、「何人も行使の目的をもつて、自動車登録番号標、臨時運行許可番号標、回送運行許可番号標、臨時検査合格標章、検査標章若しくは保安基準適合標章に紛らわしい外観を有する物を製造し、又はこれらの物を使用してはならない」と定められている。

つまり、仮ナンバー(臨時運行許可番号標)と紛らわしい外観を有する物については使用はもちろん、製造から禁止されていることになる。

違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる場合もある。

ただし「行使の目的をもって」とあるので明らかに装飾用としてならば問題ないのかもしれない。

と言いつつ、ヤフー広報室の回答にあるように、製造側が装飾の目的であったとしても購入者が仮ナンバーとして不正使用する可能性は十分にある。

盗難車のナンバーを模造仮ナンバーに付け替えて逃走する可能性もあるわけだ。大手フリマサイト等では現在、模造仮ナンバーは続々と削除に向かっている。