斎藤工、ドラマ『漂着者』の“全裸クランク・イン”は「作品への心意気」
新潟の海岸に全裸漂着したイケメン(斎藤工)。記憶はなく、発した言葉は“勝者には何もやるな”。見つけた女子高生たちにヘミングウェイと命名され、撮られた動画はバズりまくり。そして彼が描いた風景は、連続幼女殺人事件の現場に酷似。ネットでは予知能力者だと大騒ぎに。すると新聞記者の新谷詠美(白石麻衣)だけでなく、公安までもが彼をマーク。ヘミングウェイは一体、何者なのか? そして、死の連鎖は止まるのか?
「今夏いちばんの、謎が謎を呼ぶドラマです」
とは、斎藤工。連ドラの主演は、意外なことに約4年ぶりだ。
全裸でのクランク・イン
「僕は、ちょっと飛び道具的な出方をさせていただくというか、作品のエッセンスになるのが性分だと思っていまして。前クールで言えば『大豆田とわ子と三人の元夫』の船長のような。サブスクリプションだったり、そういう時代のうねりの中、テレビ朝日さんの代表的な金曜ナイトドラマ枠での主人公なんて“僕の器なのかな”という不安はありました」
自分はそんなタマじゃないと謙遜するが、プロット(筋書き)段階で“全裸漂着”というワードはあったという。クランク・インは、まさにそのシーン。海パンも用意されたが、それを断り“ノー海パン”で撮影に挑んだ。
「全裸での登場といえば、『ターミネーター』のシュワルツェネッガーか、斎藤工かという(笑)。海面に伏せていると、僕の身体の節々の溝をヤドカリがむしばんでいく。ヤドカリの宿になりかけました(笑)。クランク・インはこれからの約3か月、一緒にやっていくスタッフさんたちが“この人をどうやって撮っていくか?”を決定づける日。何か少しでも、この作品への心意気をお届けできたら、という全裸でした」
全裸をお茶の間に披露するからには、入念なる準備を?
「ヘミングウェイは、ある程度の距離を泳いできた人。そんな筋肉疲労がわかる身体であるべきだと思って。なるべく水中にいようと、泳いでいました」
撮影の2か月前から、可能な限りプールへ。約30分をかけて1キロを泳ぐように心がけた。
「身体の一部にマシンで負荷をかけるようなことは絶対にしたくなかった。あとは、ぶら下がり健康器にぶら下がったりしてました」
まさか、昭和が薫るあの健康器具を!?
「そうそう、それです。それしかしてないっていう窪田正孝が、すごく美しい身体をしているので。なんか“自重”っていいなと思って。僕、昔から逆立ちは日課にしていて。自分の体重によって、体調も掌握できる気がして。文明の初期段階でもできるような運動ですよね。泳ぐこともそうですけど、ぶら下がったり、逆さになったり。なんか、太古の記憶がよみがえるというか」
セクシーキャラは大きなフリになった
ヘミングウェイは、その予言めいた能力から教祖のようにあがめられていく……。まつり上げられる恐怖を感じたことはあるかと尋ねると、
「めちゃくちゃありますね。それこそ先日、この作品の番宣で出た番組でも、現場のカンペが“共演してドキドキした女性は?”を執拗にずっと出してくるんですよ。事前に提出したアンケートではいろんなことに答えていたんですが、結局そこを使いたいんだなっていう。
僕はベースの目線が“スーパー視聴者”なので気持ちはわかるんですけど、当事者でもある。もちろんニーズあってのこの世界なんですが、白濁した何かをどれだけ受け入れられるのか、とは常々思います」
てっきり『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』('14年)でのブレイク後、セクシーキャラとなったことを挙げるのかと思ったが、
「いや、それはそれで僕は楽しかったです。“壁ドンやって”っていうオーダーに対し、カメラのおじさんに向かってやる、みたいなことは結構続いて(笑)。ひとつ、そんなシンボリックなカラーをいただくと、むしろ次が見えたというか。それまでは、誰にも届いてない前提で仕事をしていたような感覚があったんですが、どこ行っても“こういう人”と認証していただけて。その後のバラエティーの出方なんかも、それが大きなフリとして使えたので(笑)」
“本当の自分はそうじゃない”という違和感は、斎藤自身も意外に思うほどなかったと振り返る。
「やっとつかまえられた石だったら、そこにぐっと体重を乗せ、反対の手を伸ばす。それによって、またちょっと次のところに行けた感じはしました」
もうすぐ迎える40歳、どんな展望を?
8月22日には40歳を迎える。今後をどのように思い描いているのか?
「最近、腸活だの発酵だの、さんざん言ってるんですけど(笑)、自分に残された時間とつながっているような気もしていて。僕は結婚してないし、子どももいない。この40年間、“だいたいこのくらい生きるんじゃないかな”という尺度を自然と考えちゃっていたなと思うんです。
でも、例えば400年後の清水寺の建て替えのために今、木が植えられている。なんか、自分の人生を尺度で考えないというか、もっとレンジを広くしたいと思っていて」
体内環境を整えると朽ちていく菌の健気さについて触れ、
「だから年を重ねることはネガティブなことじゃなく、多分、若い人や周りを生かすというか。何かプラスの効果があることなんだと、僕は菌活をしてわかってきたんですよ」
“自分が自分が”を卒業し、周りに対して無償の愛を注いでいく存在でありたいと語る。
「これから年を重ねるということは発酵か腐敗か、どちらかしかない。人間は放っておくと腐敗するものだと僕は思うんですよ。だけど、自分が憧れてる年の重ね方、時間の積み上げ方をしてる方たちは発酵体に見える。自分も、そうありたい。
僕は移動映画館(cinema bird)という活動をしていますが、死ぬまでに病院、児童養護施設にエンターテインメントを届けたい。みんなが楽しめる空間で、交流の場をつくりたいと思っています」
どこか哲学的で、発する言葉にも色気が漂う。斎藤工は、俳優として、映画人として、はるか先の未来を見据えている――。
自宅にはトレーニングルームが!
斎藤の自宅には、窪田正孝の影響で導入したというぶら下がり健康器に加え、「自立式のサンドバッグ、そして高橋一生にすすめられたエアロバイクがありまして。狭い家なんですけど、その3つを置いているエリアを、僕はトレーニングルームと呼んでいます。中でも『BG〜身辺警護人〜』のファーストシーズン('18年)のときに導入したサンドバッグはとても便利でしたね。自粛期間中には苛立ちをぶつけたりもしていました(笑)」
毎週金曜夜11時15分〜(テレビ朝日系 ※一部地域を除く)
【第4話】ヘミングウェイ(斎藤工)の婚約者・琴音(シシド・カフカ)が現れる。一方、ヘミングウェイは新聞記者・詠美(白石麻衣)の身に迫る危険を予言。そんな中、幼稚園児13人を乗せたバスが消息を絶つ