敢えて厳しいことも語った本田。(C)Getty Images

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 東京五輪を見届けていた本田圭佑は8月7日、自身がCEOを務める会社などが運営している、音声コンテンツサービス「NowVoice」内で、日本代表の戦いを総括した。

 冒頭で4位に終わった今回の戦いを「客観的にみれば良くも悪くも無かった」とし、「選手たちのレベルは上がっている」と評価。その一方で、実力以上のものを出せず、まだまだ準備できる余地も残していると指摘した。

 メキシコ戦では、グループステージの際にもやられていたセットプレーについて、「とにかくニアを狙ってくる」のは分かっていたはずだが、思い切った対策を打てなかった点を指摘。3失点目のCKの際にも「ファーサイドは捨てていた」とし、ニアに4選手が入り込んでゴールを狙っていた場面を解説し、「日本もあのセットプレーは見習うべき」とした。

 疲労が隠せなかった日本代表の戦いを見て、「まずIOCがおかしい」として中2日で6試合を戦うスケジュールを組んだこと自体が間違っていると厳しく言及。その一方で「結果論にはなりますが」としたうえで、ターンオーバーを積極的に取るべきだったとし、こう語った。

「オーバーエイジは別として、僕も詳しく知っているワケではないですが、先発メンバーとベンチにいた選手たちとはトントンでしょ? 場合によっては組み合わせや対戦相手によって選手を変えていったほうがプラスになることもある」
 
 さらにこの大会を通して日本の一番の課題として挙げたのは指導者の力量だという。

「森保さんが悪かったわけではない」と前置きしつつも、「結果論で語られてしまう世界」として、「指導者が育つ環境がいまの日本にはない」点を持論を交えてこう熱弁した。

「今回一番課題だったのは、ここ一番の勝負強さだと思います。それは戦術でどうにかなる部分も大きい」
「選手のレベルは相対的に上がってきている一方で、監督の差が浮き彫りになった」

 実際に、戦力差はあったはずなのに拮抗した戦いとなった準々決勝のニュージーランド戦でその部分を強く感じたという。

「選択肢や引き出しというのはどう見ても少なかった。短期決戦で集まる時間も少ない代表チームの課題でもある。とはいえ、選ぶメンバーもある程度決めていたでしょうから、オンラインでもある程度マネージメントできると思う。今は戦術の話をしているので、出来ることは多かったはず」
 
 解決策として提示するのは、「指導者のレベルを上げるしかない」。そのためには「指導者の競争がもっと必要だ」と以下のような持論を提唱した。

「日本のS級ライセンスをヨーロッパの監督ができるUEFAプロと互換性を持たせる」こと。さらに国内でも、「日本のライセンス制度をなくすというのが僕の理想。ただ、いきなりは難しくても、現役で優秀だった選手たちをより簡単に指導者ライセンスが取れる、現役時代からもS級まで獲れる、そんな仕組みを年内にでもやるべきだと思う」と明かす。

「今現役のカズ(三浦知良)さん、俊(中村俊輔)さん、小野伸二さん、ヤット(遠藤保仁)さんとか、そういうレジェンドが現役のうちにS級ライセンスを取れる仕組みが必要だと思う」とし、そうなれば必然と競争も高まるという。

 しかし、「育成の指導者ライセンスは厳しくするべき。ライセンスが無くて誰でも指導できるとなってしまってはダメ。子どもたちは成長の度合いも違うし、長い目で見る為には専門知識はたくさん必要。子どもに犠牲者を作らないためにも、育成のライセンスは厳しくするべき」という一面も忘れてはいけないという。
 
「プロの世界にはライセンスが必須というのはおかしい」「選手と指導者は違うのは当たり前。ただ、別にそれはライセンスである必要はない」という。

 本田は、指導者の勉強をしていることが、イコールライセンス習得を目指すこととは違うし、プロの世界では結果で判断されるべき。クラブの判断で優秀だと思う指導者を連れてくるべきだし、それが失敗した場合はGMや社長が糾弾されるべきと持論を展開した。

 そして東京五輪の総括を次のように語った。
「選手たちはノルマを達成したと言っても良いと思います。でも、それを取り巻くサッカー界はノルマを達成できなかったと見ないといけない」

「選手たちは成長すると思う。悔しい思いをして、今後もっと伸びると思う」とU-24代表の伸びしろに期待を寄せながら、「僕も責任を感じているからこそ、具体案を提案している」と今後のサッカー界の発展を願って、厳しい意見も語ったとしている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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