目の充血に気づいたら、どうすればいいのか。眼科医の梶原一人さんは「重大な病気が隠れている可能性があるので、安易に目薬を使わないほうがいい。最悪の場合、失明する恐れもある」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、梶原一人『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/smirart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/smirart

■1 白目が充血する

Q 寝不足になると、目が真っ赤になるので、よく「充血用」の目薬を使っています。

A 充血用の目薬を常用すると、薬が切れるとかえって充血するようになるので、使いすぎないほうがいいですよ。

Q ときどきなら大丈夫ですよね?

A どうしても気になる場合だけ、限定的に使うほうがいいでしょう。白目の部分が充血するのは、すぐ下を通る血管が拡張して浮き出て見えるからです。血管は理由があって拡張していますから、根本的な原因を解消しなければなりません。ところが「充血に効く」という目薬には、血管収縮剤が入っており、原因がなんであれ、充血は治まってしまうんです。すると一時的に充血は治まっても、病気が原因の場合、進行してしまう恐れがあります。

Q 病気が原因かどうかは、どうやって判断すればいいのでしょう?

A まず、充血しているときに「痛み」「かすみ」「まぶしさ」がないかがポイントです。痛みやかすみをともなう場合は「虹彩炎」など、深刻な疾患の可能性があります。目に入った光を調節する「虹彩」のすぐ後ろには、目のレンズである「水晶体」があります。虹彩と水晶体が癒着を起こすと瞳が変形し、「続発性緑内障」を起こすこともありますし、最悪の場合、失明したりする可能性さえあるんですよ。

■目やにがひどいときも要注意

Q 「たかが充血」なんて、あなどれないですね。

A そう、だからたとえ痛みやかすみがない場合でも、目薬を使わずに2〜3日様子を見て、それでも治まらない場合は、眼科を受診したほうがいいでしょう。

Q 目が充血したとき、痛みとかすみ以外に気をつけるべき症状はありますか?

A 目やにがひどいときは、気をつけたほうがいいですね。ばい菌が入った可能性が考えられます。ドラッグストアでも「抗菌作用」のある目薬は手に入りますが、市販のものは成分の選択や濃度の調整の具合によって合う合わないがあります。だから、眼科を受診して、自分の症状に合った目薬を処方してもらったほうが安全です。

Q 私はアレルギー持ちなので、花粉の時期には、目が真っ赤になることがよくあるんですよ。

A そうやって原因が「花粉」だとか「ハウスダスト」だと特定できていて、かゆみが軽症ならば、防腐剤の入っていない「涙液型」といわれる涙に近い成分の目薬で、アレルゲン(アレルギーの原因物質)を洗い流してみるのもいいでしょう。また、アレルギーで充血しているとわかっていて、市販のアレルギー用の目薬で症状が改善するのであれば、それでもいいと思います。

Q ただお話ししたように「単なる充血」とは思わないでください。理由なく充血することはありません。そのウラに病気がひそんでいる可能性があるので、原因がハッキリとわからないのであれば、やはり眼科を受診したほうがいいでしょう。

白目が充血したら
・どうしても気になるとき以外は、基本的に充血用の目薬は使わないこと。
・アレルギーなど、原因が特定できる場合は、市販の目薬を使うのもアリ。
*2〜3日経っても治まらない、もしくは痛みやかすみをともなう、目やにが増えたときなどは眼科を受診
写真=iStock.com/Selman Keles
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■2 目がショボショボする、乾く

Q エアコンが効いた室内でずっと仕事をしているせいか、夕方になると目が乾いてショボショボします。

A 目が乾く「ドライアイ」の原因には、涙の量が減る「量的な原因」と、涙の質が変わる「質的な原因」があります。さらに慢性の「アレルギー性結膜炎」の場合も、ドライアイと同じような「目がショボショボする」「ゴロゴロする」といった症状が現れます。

Q そもそも、なぜ涙の量が減ってしまうんですか?

A まばたきには、まぶたの内側にある「涙腺」を刺激して涙を出し、目の表面を均一に潤す働きがあります。でも、何かに集中すると、無意識にまばたきの回数が減るんです。特に最近は、スマホやパソコンの画面を見つめ続けることが多くなっており、まばたきの回数が激減しています。それが涙の量を減らしています。また、ソフトのコンタクトレンズは、乾燥しないように涙を吸収してを形状を維持しますから、ソフトのコンタクトレンズを使う人は目が乾きやすいです。

■涙は粘液成分や油の層からなっている

Q もう1つの「涙の質が変わる」ってどういうことですか?

A 涙は単なる液体ではなく、ヤマイモやオクラのネバネバと同じような粘液成分や油の層からなっています。この構造が変わると、目の表面に涙がとどまりづらくなり、目の表面をおおう涙の膜にムラができて、目が乾きやすくなるんです。

Q たまに「結膜炎」になって目がショボショボしてしまうのですが、何かに感染してなるんでしょうか。

A 慢性の「アレルギー性結膜炎」の原因の多くは、ホコリやダニなどのハウスダスト、もしくはコンタクトレンズの汚れです。特に「2週間連続装用」のコンタクトレンズを使うと、どうしても汚れがレンズに残ってアレルゲン(アレルギーの原因物質)となりやすいです。

■目薬をたくさんさしても目は潤わない

Q 目薬をたくさんさせば、目は潤うのではないですか。

A よかれと思って1日に10回も20回も目薬をさしている人がいますけれど、そうすると、ただでさえ少ない涙が洗い流されてしまいます。そして「目の表面をおおって乾燥を防ぐ」という涙本来の役目を果たせなくなるんです。

梶原一人『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)

涙には、目の表面の細胞に酸素や栄養を送ったり、殺菌作用を持つ成分が微生物の侵入や細菌の感染を防いだりする大切な役割があります。だから、目薬で涙が洗い流されてしまうと、目の機能を正常に維持できなくなってしまいます。また、市販の目薬には防腐剤などが多く含まれており、目の表面のアレルギー反応や障害の原因にもなり得ますから、目薬の使いすぎは逆効果になるんです。

Q では、「目が乾く」と感じたらどうすればいいのでしょう。

A まずは、市販の防腐剤が入っていない、涙の性質に近い「涙液型」の目薬を定められた回数で試してみましょう。目薬で改善すれば、原因は単純に涙の量が少ないことだとわかるでしょう。目薬で改善しない場合は、涙の質のほうが原因であるか、慢性のアレルギー性結膜炎の可能性があります。この場合は、眼科を受診するべきです。また、慢性のアレルギー性結膜炎を予防するためには、コンタクトレンズは1日で使い捨てる「ワンデータイプ」がいいです。ハウスダスト対策にもなります。いくら丁寧に洗ったつもりでも、2週間連続装用などでは汚れが残りやすくなるからです。

目が乾いたら
・涙の性質に近く防腐剤の入っていない目薬を試してみる(用法と用量を守って使いすぎないように)。
・慢性のアレルギー性結膜炎を予防するため、コンタクトレンズを使用するならワンデータイプにする。
*目薬を使っても乾きが治まらなければ眼科を受診

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梶原 一人(かじわら・かずと)
眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック院長
慶應義塾大学医学部卒。ハーバード大学研究員、スタンフォード大学リサーチ・アソシエート。日本人初のハワード・ヒューズ・メディカル・インスティテュート奨学生。北里賞受賞。1959年東京都品川区生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、臨床眼科学を学び眼科医に。1990年にハーバード大学に研究員として留学。在職中に科学雑誌『ネイチャー』『サイエンス』に論文を発表する。1994年、スタンフォード大学医学部・神経生物学教室にリサーチ・アソシエートとして移籍。1995年、東京大学医科学研究所・化学研究部の客員研究員を兼任し、帰国後は理化学研究所脳科学総合研究センター(神経再生研究チーム・チームリーダー)。2006年、「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」開設。
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(眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック院長 梶原 一人)