好きな服だけを収納してすっきりと心地よく保ちたいけれど、つい服や小物がぎゅうぎゅうづめになったり、物置きのようになりがちなクローゼット。

ここでは、50歳を前に服のもち方やクローゼットのあり方を見直し、コンパクトで使いやすいクローゼットづくりを実現している、整理収納コンサルタントの瀧本真奈美さんに、そこにたどり着くまでの経緯と、使いやすくすっきりとしたクローゼットづくりのコツを教えてもらいました。


場所にこだわらない、50代からのすっきりクローゼットのつくり方

50代からのクローゼット改革は、新しい自分に出合うチャンス



振り返ると20代、30代は服を買うことがなによりもいちばんの趣味でした。

無理をして高価な服を買ってみたり、雑誌に載っている最新のトレンドを求めていくつものショップを探し回ったことも。労力もお金もたくさん使って集めた服の数々はなかなか手放せず、広くつくった壁面収納や収納ケースがいっぱいになった経験もありました。

トレンドを追って失敗したこと、年齢を経て変化していったこと、さまざまな経験から今の「ラクするコンパクトクローゼット」に至るまでの変化と実践していることをお伝えします。

●43歳でたくさん持っていた過去の服とともに、執着も手放した



振り返ると、服にまつわるターニングポイントは43歳でした。

それまでは当時トレンドだった大人かわいい服が大好きで、かろうじて着られていた少し短い丈のパンツやスカートをたくさんもっていました。

それまでは、「自分が変わってしまうこと」がとても怖くて、変わらないでいることに執着し悪あがきをしていた時期でもあったように思います。ただ、だんだん無理も出てくるし、自分が置かれている状況も変わってくる。

ブロガーとして雑誌掲載の機会が増えたことや、プライベートでは初孫が誕生したことで、「変わらないでいる」ことよりも「新しい自分に変化する」ことに考えが及ぶようになり、しがみついていた過去の服と過去の自分にさようならができました。

いつか着られるかも。それを着ていた頃の自分のままでいたいと執着するよりも、今からどんな自分になっていきたいかと先を見つめるようになったことで、手放しが進んだのだと思っています。

●取り出しやすく、しまいやすいを重視しするように



以前はクローゼットは寝室にあり、服によってはたたんでしまうものもありましたが、体力的にさまざまな家事を大変に感じ始めた40代から、ラクできる方向に徐々に変化させていきました。

その1:寝室からクローゼットを移動


リビングにあるクローゼット

ある日、朝の支度でリビング→寝室を何度も行き来していることに気づきました。この服じゃない。そう思ったときや、アウターを取り忘れて何度も往復しているうちに「あれ? この時間はすごく無駄なのでは?」と考えるように。


リビングの小さめのクローゼットに服を収納していた時期

そこで、寝室からリビングや玄関奥にある収納に自分の服を移動させました。家事をしながら朝の支度や、家事の合間のちょっとした片づけも簡単になりました。

その2:オンシーズンはたたまずすべてハンガー収納に


子どもの頃は、タンスにたたんで片づけるのが当たり前でしたが、そもそもたたんで収納するという方法は、着物収納の名残りのようにも思えています。

クローゼットというシステムがまだなかった頃と、クローゼット収納が中心になった今では違って当たり前なのでは? そう思い、すべてつるす収納にしてみたところ、スペースに合わせてもてる服の数が限られはじめ、おのずと…

・増えすぎが予防できる
・持っている今着られる服が把握しやすい
・不要な服にもすぐ気づくようになった

というメリットが発生し、簡単にきれいが続くクローゼットになったのです。

服をたたむ、丁寧にしまうという家事時間もなくなり、家事に対する気持ちのゆとりも生まれました。

●過去の失敗を活かした服選び




過去の服選びからの失敗は

・次の年に着られないようなその年ならではのデザイン
・流行色を取り入れすぎてコーディネートが難しくなる
・それぞれかわくても組み合わせが難しく着まわしができない
・特別な素材でクリーニング代が高額
・洗濯のたびにアイロンが必要で大変
・勧められて買ったものの、やっぱり好きじゃない
・体型に合わない、太って見える
・高額でなかなか手放せない

など、挙げればキリがありません。でもこれらの失敗は、大事な経験として今に活かされています。失敗した理由を明確すれば、これらを避けて買い物をすればいいので、服選びにあまり迷わなくなりました。

その結果、今では

・シンプルな形、色、デザインに少しトレンド感があるもの
・洗濯が簡単でクリーニングも、アイロンもなるべくいらない素材
・縦長のほんのりゆるっとシルエット
・安価なものを少しずつ買う

というような服選びに定着しています。

●服の本来の目的を大切にし、服を循環させる




衣服は、人間が着用して初めて機能を発揮する、という言葉もあるとおり、着てこそ服を買ったことに対して責任が果たせるのでは、と考えるようになりました。

高くてなかなか着る機会がない服を並べておくよりも、普段から気兼ねなく何度も着られる服を、そのシーズン精いっぱい着てリサイクルや寄付に出すようにしています。

画像は今年利用した「ふくのわプロジェクト
」の回収袋。着ない服を寄付することでパラスポーツを応援できます。

この方法により、定期的に新しい服が並び、清潔で風通しもよく、すっきりきれいに見えるクローゼットが保てるので気に入っています。

●着ていて気分が上がる服、今着られる服にアップデート



50代は更年期に差しかかる年代。特有のゆらぎ期に入り、なにかきっかけがあると気分も簡単に滅入ります。着ていて自分に違和感を覚える服もまた、滅入る原因になるので、自分がしっくりくるような服を選ぶようになりました。


今は明るい気分になる白やベージュが好みなので、気分が上がる、もしくは一定に保てるように選んで着ています。

これが服にまつわる私の変化で、写真は現在のクローゼットです。


以前はもの置きや、DIYの作業スペースとしていた玄関奥のウォークインに、ディノスで買った置くだけでクローゼットになる収納を使い、衣類やバッグなどを収納しています。

ものや過去を大切にするということも重要ではありますが、徐々に落ちてくる体力や脳の処理機能に負担をかけないためにも、未来の自分に負担をかけないためにも、ラクにきれいが続くコンパクトなクローゼットもまた大切だなと感じています。

今と未来を見つめてアップデートしていけたらと思っています。

●教えてくれた人
【瀧本真奈美さん】



1970年生まれ、愛媛県在住。3LDKの戸建てに夫と2人暮らしで、5人の孫がいる。元看護師で、現在は整理収納コンサルタント、暮らしコーディネーターとしてブログ『暮らしごとレシピ
』や、SNSなどで発信。インスタグラムは@takimoto_manami
。著書に『自分に心地よい小さな暮らしごと
』(主婦の友社刊)など