54歳、更年期障害はこうしてやってきた … 閉経とともに現れた手足の変化
閉経をはさんだおよそ10年間は更年期とされ、人によりさまざまな心身の変化を感じる時期。
元編集者・ライターで、現在はボディセラピストとして活躍する日比響子さんも、少し前から更年期に起きがちな症状を感じるように。ここでは、自身の更年期障害に気づいた経緯や具体的な症状、治療に至るまでについて語っていただきました。
更年期に気づくきっかけになった手足のこわばり(※写真はイメージです)
更年期はだれしも通過するものとわかっていたし、これまでに家族や知人の体験を見聞きもしていました。編集者・ライター時代には取材経験もあり、予備知識もありました。それでも、いざ自分に訪れてみると、頭と体と心のズレる感覚にとまどいを禁じ得ず…。
現在54歳、更年期の症状にぶつかって半年を過ごしてきた私の体験と考察を記しました。どなたかの参考になれば幸いです。
風薫る5月、ランニング(のあとのビール)が趣味の私は、いつもならラン仲間とあちこち走りに出かけるのが恒例のゴールデンウィークですが、今年はコロナ禍緊急事態宣言中。
外出もままならず、運動不足解消にと早朝に近所をゆるくジョギングしていたら、途中右足で小石を踏み、「いたっ!」となりました。
そのときはたいしたことなかったのですが、翌朝起きると指のつけ根が少し腫れていたので、冷やしたり湿布をはったり。走れないほど痛いわけではないし、走り始めは違和感あっても、しばらくすると平気になるのでそのままジョギングを続けていたのですが、数日経っても腫れはなかなかひきません。
そんなある日、両足をながめていたら、左足の側面のところがポコッと出っ張っていることに気づきました。そういえば、最近、靴を履いたときになんとなく当たる感じもしていたのです。
気づいた当時撮った写真です。わかりづらいですが、右足の丸囲み部分が腫れていて、人差し指と中指の間が広がっています。左足の丸囲み部分、出っ張って少し赤くなっていました。
左足についてはぶつけた記憶もなく、これは整形外科で診てもらうかと思いつつ、とりあえずネットで部位や症状で検索してみると、(あれ、リウマチの可能性も?)と引っかかりました。
リウマチは関節の痛みや腫れ、こわばりを引き起こすとあり、そういえばここ半年ほど手がこわばる感じがあったことを思い出しました。手のこわばりについては、更年期によくあることと聞いてたので、それまであまり気にとめてなかったのですが、じつはこのところ、足の症状とともに少しずつこわばりが強くなり、痛みも感じ始めてたのです。
リウマチは放っておいて進行すると関節の変形や脱臼を引き起こすこともあると知って怖くなり、まずは病院だ! と近所のリウマチ科のある整形外科へ行きました。
レントゲンを撮り、血液検査をした結果、たしかに腫れてはいるけれど骨に異常はなく、炎症反応もなし。今の症状だけでリウマチとは言いきれないと。ただし発症したときに進行が早い素因があるので(抗CCP抗体の数値が高い)、定期的な検査はした方がよいとのことでした。
「マグマ抱えた休火山てとこですかね。いつ噴火するかわからないし、このまま噴火せずにすむかもしれない」と。痛みや腫れはあるので投薬をどうするか聞かれたのですが、このときには、リウマチでないとしたら更年期障害の症状かもしれないという思いがあり、婦人科でも一度診てもらってからにしたいと先生に伝えました。
「そうですね、更年期によるものなら一定期間過ぎたら症状は治るかもしれませんしね」と先生も承諾してくれ、次は更年期外来のある婦人科に予約を取りました。
母も姉も更年期の症状が辛そうだった(※写真はイメージです)
思い返せば、私の母も姉も、更年期は辛そうでした。
母は39歳で私を、40歳で妹を出産。私が高校生になると、よく母が寝込むことがありました。「具合悪いの?」「病院行けば?」と聞いても「寝てれば治るから」と布団に入りきりで、1、2日すると何事もなかったように家事をするのですが、いかにもだるそうでしたし気分もふさぎがちな様子。
思春期で自分のことだけで精一杯、家族に気を回す余裕などなかった当時の私は、周囲の母親より高齢な母を年寄り扱いしていました(今の私と同じぐらいなのに!)。もう年だからしょうがない、そんなふうに見ていたと思います。でも今思うと、母は「更年期うつ」だったのかもしれません。人づき合いや外出もめっきり減り、半引きこもりのような状態でしたから。私が就職する頃にはだいぶ回復しましたが、この頃のダメージは後々まで響いていたと思います。
私より14歳年上の姉は、52〜54歳ぐらいの頃はホットフラッシュがひどく、会うたび首に文字通り滝のような汗をかいてたのを覚えています。若い頃はガリガリに細かったのに急激に太り始めたのにも驚きました。その時期に彼女に過度にストレスがかかることが起こり、メンタルの病気を発症したのですが、振り返ればちょうど更年期のピークと重なったせいもあったのでは、と思うのです(現在姉の病気は落ち着き、元気に過ごしています)。
そんな2人を見てきて、同じ家族だけに気質・体質に近いものあるだろうし、私も更年期障害からは逃れられないかもと不安がないわけではありませんでした。ただ、40代でヨガやランニングに取り組むようになり、それまでの不摂生な生活から一転、心身ともにラクになる感覚を覚え、健康に気をつかっていたら、何事もなく乗り越えられるかもとの望みも出てきたのです。
仕事で更年期についての取材をする機会も複数あり、どんな症状があり、どんな対処法、治療法があるかの知識を得たことも、心の準備に役立つものでした。それでも、今回のこわばりや痛みが更年期によるものかもしれないとなったら、やはり来たかと軽いショックがありました。
2年前からはボディセラピストとしての活動を始め、思考と心と体の関係性についても理解を深めてきただけに、今、体に起こっていることは私になにを伝えようとしてるのだろう、そんなことを思いながら更年期外来へと向かったのです。
予約したのは、3年ほど前、雑誌の仕事で更年期特集を担当したときに取材を受けていただいた先生のクリニック(受診時にそのことは話題にしませんでした)。症状と整形外科での見立てを伝え、持参した血液検査の結果を見てもらいました。生理は去年3月が最後。
「1年間生理がないと、閉経を迎えたことになります」。はい、取材のときに伺いました。たしか、更年期は閉経の前後5年を合わせた約10年間のことを言うんですよね。
「すでに更年期特有の症状が出ていて不思議ないですね」とのこと。そしてストレスがどれだけ更年期に影響するかを説明してくれました。「ましてや今はコロナ禍でもあり、ストレスがないわけないと思いますよ。まずそこに気づいて無理しないこと。休むことが本当に大事なときですからね」と先生。
ホルモンの状態を知るのに、こちらでも血液検査を受けることになったのですが、症状からみて、結果を待たずに今日からホルモン治療を試してもいいかもしれないということで、HRT(ホルモン補充療法)を開始することに。更年期に大きく減少する「エストロゲン」という女性ホルモンを補う治療法で、更年期障害と呼ばれる諸症状を緩和するのに有効とされ、始めてすぐ効果を実感する人も多いのだそう。「1週間試してもらった感触と血液検査の結果を見て、またどうするか考えましょう」ということでした。
私の更年期治療で処方されたパッチ剤
エストロゲンを補う薬には・飲み薬・パッチ剤・ジェル剤と3つのタイプがあり、肌が弱くないならパッチがおすすめとのこと。3日に1回はり替えるだけでよく、皮膚から直接血液中に入るので内臓への負担が少ないとされています。
※保険適応の治療薬にはほかにも種類があり、写真のものは一例です。
まさか受診したその日からホルモン補充治療を始めることになるとは。ここから「更年期」ときちんと向き合う生活がスタートしました。私の場合はホルモン補充治療を受けることになりましたが、治療法は人によってさまざまです。気になったらぜひ、早めに婦人科を受診してみてください。
東京・下北沢にある隠れ家スタジオ「studio hi_bi」主宰。ゆるめるボディケアamical®をベースにしたオリジナルメソッド“hi_biゆるケア”を軸に、体と心をゆるめて本来の自分を取り戻すボディセラピストとして活動中。ブログ「【東京・下北沢の隠れ家スタジオstudio hi_bi】カラダをゆるめて人生を楽しむ方法を伝えてます♡
」。
よしの女性診療所院長。産婦人科医。臨床心理士。女性の健康づくりをサポートするため、講演などの活動も積極的に行う。著書に『40歳からの女性のからだと気持ちの不安をなくす本
』(永岡書店刊)などがある
元編集者・ライターで、現在はボディセラピストとして活躍する日比響子さんも、少し前から更年期に起きがちな症状を感じるように。ここでは、自身の更年期障害に気づいた経緯や具体的な症状、治療に至るまでについて語っていただきました。
更年期に気づくきっかけになった手足のこわばり(※写真はイメージです)
これって更年期障害? 痛みとこわばりに不安を感じ、整形外科と婦人科を受診
更年期はだれしも通過するものとわかっていたし、これまでに家族や知人の体験を見聞きもしていました。編集者・ライター時代には取材経験もあり、予備知識もありました。それでも、いざ自分に訪れてみると、頭と体と心のズレる感覚にとまどいを禁じ得ず…。
現在54歳、更年期の症状にぶつかって半年を過ごしてきた私の体験と考察を記しました。どなたかの参考になれば幸いです。
●緊急事態宣言中にそれは起きた
風薫る5月、ランニング(のあとのビール)が趣味の私は、いつもならラン仲間とあちこち走りに出かけるのが恒例のゴールデンウィークですが、今年はコロナ禍緊急事態宣言中。
外出もままならず、運動不足解消にと早朝に近所をゆるくジョギングしていたら、途中右足で小石を踏み、「いたっ!」となりました。
そのときはたいしたことなかったのですが、翌朝起きると指のつけ根が少し腫れていたので、冷やしたり湿布をはったり。走れないほど痛いわけではないし、走り始めは違和感あっても、しばらくすると平気になるのでそのままジョギングを続けていたのですが、数日経っても腫れはなかなかひきません。
そんなある日、両足をながめていたら、左足の側面のところがポコッと出っ張っていることに気づきました。そういえば、最近、靴を履いたときになんとなく当たる感じもしていたのです。
気づいた当時撮った写真です。わかりづらいですが、右足の丸囲み部分が腫れていて、人差し指と中指の間が広がっています。左足の丸囲み部分、出っ張って少し赤くなっていました。
●最初はリウマチを疑った
左足についてはぶつけた記憶もなく、これは整形外科で診てもらうかと思いつつ、とりあえずネットで部位や症状で検索してみると、(あれ、リウマチの可能性も?)と引っかかりました。
リウマチは関節の痛みや腫れ、こわばりを引き起こすとあり、そういえばここ半年ほど手がこわばる感じがあったことを思い出しました。手のこわばりについては、更年期によくあることと聞いてたので、それまであまり気にとめてなかったのですが、じつはこのところ、足の症状とともに少しずつこわばりが強くなり、痛みも感じ始めてたのです。
リウマチは放っておいて進行すると関節の変形や脱臼を引き起こすこともあると知って怖くなり、まずは病院だ! と近所のリウマチ科のある整形外科へ行きました。
●リウマチの検査結果を受けた結果はグレー
レントゲンを撮り、血液検査をした結果、たしかに腫れてはいるけれど骨に異常はなく、炎症反応もなし。今の症状だけでリウマチとは言いきれないと。ただし発症したときに進行が早い素因があるので(抗CCP抗体の数値が高い)、定期的な検査はした方がよいとのことでした。
「マグマ抱えた休火山てとこですかね。いつ噴火するかわからないし、このまま噴火せずにすむかもしれない」と。痛みや腫れはあるので投薬をどうするか聞かれたのですが、このときには、リウマチでないとしたら更年期障害の症状かもしれないという思いがあり、婦人科でも一度診てもらってからにしたいと先生に伝えました。
「そうですね、更年期によるものなら一定期間過ぎたら症状は治るかもしれませんしね」と先生も承諾してくれ、次は更年期外来のある婦人科に予約を取りました。
●更年期障害がひどかった母や姉
母も姉も更年期の症状が辛そうだった(※写真はイメージです)
思い返せば、私の母も姉も、更年期は辛そうでした。
母は39歳で私を、40歳で妹を出産。私が高校生になると、よく母が寝込むことがありました。「具合悪いの?」「病院行けば?」と聞いても「寝てれば治るから」と布団に入りきりで、1、2日すると何事もなかったように家事をするのですが、いかにもだるそうでしたし気分もふさぎがちな様子。
思春期で自分のことだけで精一杯、家族に気を回す余裕などなかった当時の私は、周囲の母親より高齢な母を年寄り扱いしていました(今の私と同じぐらいなのに!)。もう年だからしょうがない、そんなふうに見ていたと思います。でも今思うと、母は「更年期うつ」だったのかもしれません。人づき合いや外出もめっきり減り、半引きこもりのような状態でしたから。私が就職する頃にはだいぶ回復しましたが、この頃のダメージは後々まで響いていたと思います。
私より14歳年上の姉は、52〜54歳ぐらいの頃はホットフラッシュがひどく、会うたび首に文字通り滝のような汗をかいてたのを覚えています。若い頃はガリガリに細かったのに急激に太り始めたのにも驚きました。その時期に彼女に過度にストレスがかかることが起こり、メンタルの病気を発症したのですが、振り返ればちょうど更年期のピークと重なったせいもあったのでは、と思うのです(現在姉の病気は落ち着き、元気に過ごしています)。
●心の準備はできていたつもりでも…
そんな2人を見てきて、同じ家族だけに気質・体質に近いものあるだろうし、私も更年期障害からは逃れられないかもと不安がないわけではありませんでした。ただ、40代でヨガやランニングに取り組むようになり、それまでの不摂生な生活から一転、心身ともにラクになる感覚を覚え、健康に気をつかっていたら、何事もなく乗り越えられるかもとの望みも出てきたのです。
仕事で更年期についての取材をする機会も複数あり、どんな症状があり、どんな対処法、治療法があるかの知識を得たことも、心の準備に役立つものでした。それでも、今回のこわばりや痛みが更年期によるものかもしれないとなったら、やはり来たかと軽いショックがありました。
2年前からはボディセラピストとしての活動を始め、思考と心と体の関係性についても理解を深めてきただけに、今、体に起こっていることは私になにを伝えようとしてるのだろう、そんなことを思いながら更年期外来へと向かったのです。
●初めての更年期外来受診、ホルモン補充治療を行うことに
予約したのは、3年ほど前、雑誌の仕事で更年期特集を担当したときに取材を受けていただいた先生のクリニック(受診時にそのことは話題にしませんでした)。症状と整形外科での見立てを伝え、持参した血液検査の結果を見てもらいました。生理は去年3月が最後。
「1年間生理がないと、閉経を迎えたことになります」。はい、取材のときに伺いました。たしか、更年期は閉経の前後5年を合わせた約10年間のことを言うんですよね。
「すでに更年期特有の症状が出ていて不思議ないですね」とのこと。そしてストレスがどれだけ更年期に影響するかを説明してくれました。「ましてや今はコロナ禍でもあり、ストレスがないわけないと思いますよ。まずそこに気づいて無理しないこと。休むことが本当に大事なときですからね」と先生。
●いよいよホルモン補充治療がスタート
ホルモンの状態を知るのに、こちらでも血液検査を受けることになったのですが、症状からみて、結果を待たずに今日からホルモン治療を試してもいいかもしれないということで、HRT(ホルモン補充療法)を開始することに。更年期に大きく減少する「エストロゲン」という女性ホルモンを補う治療法で、更年期障害と呼ばれる諸症状を緩和するのに有効とされ、始めてすぐ効果を実感する人も多いのだそう。「1週間試してもらった感触と血液検査の結果を見て、またどうするか考えましょう」ということでした。
私の更年期治療で処方されたパッチ剤
エストロゲンを補う薬には・飲み薬・パッチ剤・ジェル剤と3つのタイプがあり、肌が弱くないならパッチがおすすめとのこと。3日に1回はり替えるだけでよく、皮膚から直接血液中に入るので内臓への負担が少ないとされています。
※保険適応の治療薬にはほかにも種類があり、写真のものは一例です。
まさか受診したその日からホルモン補充治療を始めることになるとは。ここから「更年期」ときちんと向き合う生活がスタートしました。私の場合はホルモン補充治療を受けることになりましたが、治療法は人によってさまざまです。気になったらぜひ、早めに婦人科を受診してみてください。
【日比響子さん】
東京・下北沢にある隠れ家スタジオ「studio hi_bi」主宰。ゆるめるボディケアamical®をベースにしたオリジナルメソッド“hi_biゆるケア”を軸に、体と心をゆるめて本来の自分を取り戻すボディセラピストとして活動中。ブログ「【東京・下北沢の隠れ家スタジオstudio hi_bi】カラダをゆるめて人生を楽しむ方法を伝えてます♡
」。
【監修/吉野一枝先生】
よしの女性診療所院長。産婦人科医。臨床心理士。女性の健康づくりをサポートするため、講演などの活動も積極的に行う。著書に『40歳からの女性のからだと気持ちの不安をなくす本
』(永岡書店刊)などがある