名波浩に鷲見玲奈が質問。久保建英の評価と東京五輪世代で気になる選手
鷲見玲奈連載:『Talk Garden』 第4回
ゲスト:名波浩(サッカー解説者)
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局アナ時代にスポーツ番組に携わっていた鷲見玲奈さんによる「対談企画」。第4回は、前回に引き続き、名波浩さんをゲストに迎え、サッカー日本代表について聞いた。
サッカー日本代表について語り合った名波浩さんと鷲見玲奈さん
鷲見 今回の日本代表の2試合を通じて、評価を上げたなという選手は誰でしょうか。
名波 吉田麻也は絶対上げたでしょ。
鷲見 守備の安定感もありましたし、キャプテンとしてのリーダーシップも感じました。
名波 昨季はイングランド(サウザンプトン)で試合に出られなくて、イタリア(サンプドリア)に移ったけれど、最初は出られなくて。それでも、ようやく試合に出られるようになり、チームが残留争いをするなかで、自分が守備の要だという意識でリーダーシップをとっていたんじゃないかな。その自信が、この代表戦にもつながっていたように思います。
鷲見 2試合連続無失点はさすがでした。
名波 麻也はクリアが昔と全然違います。相手がセカンドボールを狙いに来れば、その上を越すように遠くへ飛ばせるし、味方が近くにいれば、しっかりとつなぐこともできる。
鷲見 中途半端なボールがないんですね。
名波 冨安健洋(ボローニャ)も、ヘディングで30mくらい飛ばしたクリアがありました。ああいうセンターバックは久しぶりに見ますね。田中マルクス闘莉王、中澤佑二以来です。
鷲見 FWをはじめ、攻撃的な選手ではどうですか。
名波 やっぱり伊東純也(ゲンク)の名前が出てくるでしょうね。
鷲見 どんなところがよかったですか。
名波 ドリブルの緩急を使って、何度も仕掛けていました。あとは鎌田大地(フランクフルト)。ボールを持っていないときの動きがよくて、相手にとってはすごくイヤらしいところに顔を出していました。だから、コートジボワール戦は、チームとしてもあれだけボールがよく回ったんだと思います。
鷲見 鎌田選手はマークが厳しいなか、決定的なチャンスもいくつか作っていました。でも、今回はトップ下で初の先発フル出場でしたが、以前は1トップでも出ていましたよね。
名波 鎌田は、どのポジションがいいんだろう。フランクフルトではもう一個前というか、トップに近いポジションでやっていますからね。
鷲見 世間では「ポスト大迫」が話題になっているだけに、気になるところです。
名波 だけど、大迫は別格すぎる。「ポスト大迫」が見つからないのも仕方がない。
鷲見 他の(FWの)選手には、大迫選手の存在がプレッシャーになりますね。
名波 大迫とタイプが違うのはいいとしても、コイツのプレーはこういうプレーなんだ! っていう自分の特長を出せていない。それが出せているセンターフォワードは、今のところいないと思います。
鷲見 なるほど。
名波 だから、大迫、大迫、になっちゃうんですよ。唯一の例外は、オカちゃん(岡崎慎司/ウエスカ)かな。岡崎はこういう選手だ! ってわかるでしょ。
鷲見 岡崎選手は今回、ケガで招集辞退となってしまいましたが、確かに泥臭さとかはイメージできる気がします。では、南野拓実選手(リバプール)はどうですか。主にトップ下で起用されていますけど。
名波 う〜ん、南野もどのポジションに一番適性があるのか、わからなくなってきた(苦笑)。リバプールへ移籍して、調子を落としているんじゃないかという気がします。
鷲見 移籍の難しさと言えば、今季からビジャレアルの一員になった久保建英選手もそうです。スペインのリーガ開幕から5試合連続途中出場(日本代表戦時点)と、先発出場の機会がありません。代表戦での印象はどうでしたか。
名波 ビジャレアルでの試合を見ていても、ちょっと迷いがある。ボールの持ち方が自信なさげで、"仕掛けのドリブル"よりも"逃げのドリブル"が多くなってしまい、彼のよさが出ていません。さらに言えば、危険なエリアでボールを運ぶという作業も減ってきている。コートジボワール戦で強引な突破からクロスを上げたシーンがありましたが、ああいうプレーが少ないですよね。
鷲見 新しいチームでのコミュニケーションの問題だけでなく、久保選手個人にも課題がある、と。
名波 そうですね。課題というなら、メンタルかな。ビジャレアルでうまくいっていれば、代表でも気分よくプレーできるだろうけど、そうじゃないからドヨーンとした雰囲気でやっている。代表初ゴールでも取れれば、ガラッと変わるかもしれないけど......、久保はもう、代表で10試合くらい出たのかな?
鷲見 コートジボワール戦が9試合目。先発では3試合目でした。
名波 9試合か。久保だったら、1点くらい取れていてもおかしくないのに。
鷲見 名波さんから見て、久保選手のいいところはどこですか。
名波 味方を使える。自分で突破もできる。おとりにもなれる。きっと周囲360度の絵を頭の中に残しながら、次のプレーがパッと頭に浮かぶんだろうね。しかも、そのファーストチョイスを相手に消されたときに、次の手のジャッジが早い。だから相手は、それに気がついても消し切れない。
鷲見 でも、それが今はできていない。
名波 そう。セカンドチョイスの判断が遅いから、ふたり目のDFが来たときには、もう逃げのドリブルしかなくなってしまう。代表のときはそうでもなかったかもしれないけど、ビジャレアルでは逃げのドリブルばかりだから。突破が少なく、外に追いやられて、最終的に相手に背を向けて取られちゃう。正直、今の久保は、僕らが知っている久保じゃない。やっぱり、移籍は難しいんですよね。
鷲見 いろんな意味で環境が変わり、自分の力が出せなくなっているのかな。
名波 鷲見さんは、フリーになってみてどうですか?
鷲見 えっ、私ですか?
名波 フリーになるって、移籍みたいなものじゃないですか。
鷲見 私は活躍の機会を与えてもらい、のびのびやらせてもらっています(笑)。
名波 久保にも、そうなってもらいたいな。実際、麻也とか、冨安とか、この2試合でパフォーマンスがよかったのは、それぞれヨーロッパの所属クラブで試合に出ている選手ですから。伊東にしても、酒井宏樹(マルセイユ)にしてもそうです。
鷲見 これだけヨーロッパで活躍する選手が増えると、Jリーグでプレーする選手も海外へ出ていく傾向が強まりますか。
名波 というより、出ていったほうがいいと思います。そもそも、なぜJリーグができたかと言えば、日本代表チームを強くするためですから。
鷲見 そうなんですね。
名波 もちろん、Jリーグには日本サッカーの底上げとか、プロスポーツとしての興行とか、存在意義はいろいろとあるけど、それは二の次、三の次。一番の目的は、日本代表の強化ですから。ヨーロッパ組ばかりを選んで贔屓している、というような声もありますけど、そんなことは一切ない。ほとんどの選手はJリーグで活躍して、ヨーロッパへ渡っている。このサイクルは全然悪いこととは思いません。
鷲見 でも、実際に海外へ行くとなると、久保選手や南野選手の例ではありませんが、移籍先を選ぶのが難しい。強豪クラブに入れても出場機会がないとか、試合に出られるとなると2部リーグだったり。海外へ行くならどんなクラブへ行くべきなのでしょうか。
名波 その質問は難しい。各国リーグの傾向とか、クラブの方向性とかもあるけど、結局のところ、行ってみないと分からない。これを言っちゃうとおしまいかもしれないけど、やっぱり運も大きいです。
鷲見 監督との相性もありますよね。
名波 そうですね。香川真司や内田篤人がドイツへ行って、すぐに試合に出られたのは、監督との相性がよかったからだと思います。監督から直に「うちへ来い!」って声をかけられたのに、移籍してみたら試合に出られなかった選手なんて、ザラにいますからね。
鷲見 今回の日本代表には、久保選手をはじめ、五輪代表のメンバーも招集されました。冨安選手や堂安律選手(ビーレフェルト)だけでなく、これからは他の選手も起用していくことで、五輪代表を同時並行で強化していくことになるのでしょうか。
名波 そうかもしれません。他の出場国も条件は同じとはいえ、東京五輪へ向けての強化はどうなるんだろうね。
鷲見 今回選ばれた選手以外で、名波さんが注目している東京五輪世代の選手はいますか。
名波 三笘薫と旗手怜央。この川崎フロンターレのルーキーふたりは抜群にいい。それと、横浜FCの斉藤光毅ですね。
鷲見 斉藤選手はどんな選手ですか。
名波 久保と同じ19歳なので、東京の次のパリ五輪にも出られる世代なんですけど、左からカットインしてくるドリブルはちょっと衝撃的です。
鷲見 まだ予断を許さない状況ではありますが、来年東京五輪が行なわれるとして、名波さんは五輪代表にどんなことを期待しますか。
名波 森保さんがメダル獲得という目標を公言しているので、そこまで勝ち上がるのは見てみたい。いろいろと考えなければいけないことはありますが、ベストな状態で本大会を迎えてほしいなと思います。
鷲見 東京五輪でのメダル獲得、楽しみにしたいですね。
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