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揮発性物質が健康被害も

text:Jack Carfrae(ジャック・カーフレー)

新車を製造する上で使用されるプラスティック、接着剤、布などに対する規制強化に伴い、「新車の匂い」は徐々に薄まるようだ。

これらから発せられる揮発性物質の使用が抑制され、ピュアで匂いの少ない代替品の使用が進んでいる。

「新車の匂い」は、揮発性物質によるもの。アレルギーのような反応を引き起こすことがある。    シャッターストック

新車のインテリアから発せられる主に8種類の物質は、乗員の健康に悪影響を及ぼすと考えられている。

アクロレイン、ベンゼン、エチルベンゼン、ホルムアルデヒド、スチレン、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)がこれに該当する。

これらが発する匂いは一部のひとにとっては目のかゆみや息苦しさ、それに頭痛などアレルギーのような反応を引き起こすことがある。

エミッションズ・アナリティクス社のニック・モールデンCEOは「単に揮発し、消滅するという類のものではありません」と説明する。

「それらは車内で揮発しますが、夕方気温の低下とともに表面から再吸収されます」

「さらに翌日再び揮発し、乗員はそのVOCに満たされた空気を吸い込むことになるのです。この影響は長期間にわたり持続します」

症状は、最近アジアで報告されている。2005年に韓国で800人の新車購入者を対象に行われた研究によれば、51.5%の人が「シックカー・シンドローム」と呼ばれる症状を感じていた。

これを受け韓国では2007年以降VOCに対しての使用制限が設けられているほか、日本やロシアなどでも同様の規制が存在する。

中国が独自規制を設定

中国のJDパワーが行なった新車満足度調査でも、車内の匂いは不満点の1つとして常に上位に入っている。これを受け中国でも2012年に乗用車の内装からの排出物やその試験方法に関するガイドラインを制定した。

これはM1クラス(8人乗りまでの乗用車)に対して2021年7月から義務付けられることが決定しており、中国で新車販売を行うメーカーは既存の素材を非揮発性の素材に置き換えなければならないのだ。

中国は2021年から独自の規制を導入する

国連欧州経済委員会も2014年11月からこの問題に着目しており、車内空気の質やその測定方法に関するガイドラインを6月に設定した。これはまだ適用されてはいないが、同様の規制を試みる他の国の政府にとってもフレームワークとして活用されることになりそうだ。

モールデンによれば、素材変更によるコスト増に伴う若干の値上げが予想される点を除けば、人々は「あまり匂わないクルマ」という程度にしか気づかないだろうとのことだ。

「メーカーはサプライヤーに対してカーペットやレザーなどが基準に適合しているかどうかの検査を要求しなければならないでしょう。さらにそれらを組み合わせて使用した場合でも制限値内に収まるかどうかも確認しなければなりません」と彼は説明する。