立って乗る電動の乗りもの、セグウェイが開発されて20年近くが経ちます。公道走行が多くの国で可能ですが、日本ではいまだ「実証実験」という形でしか認められません。いまの日本の法律では、原付登録すら絶対に無理な状況です。

ナンバー取得は可能ではあるが「特殊車両」扱い

 立って乗る電動の乗りもの「セグウェイ」。アクセルもブレーキもなく、左右にタイヤがついたステップに立った人の体重移動をモーターが制御して進行、停止するというその構造は、2001(平成13)年当時、かのスティーブ・ジョブズなどから「人の移動形態を変える発明」と賞賛されたものです。

 それから20年近くが経過し、このような電動のパーソナルモビリティはセグウェイに限らず多くの種類が登場しています。セグウェイもまた、東京オリンピック・パラリンピックを見据え2019年には警視庁が羽田空港の警備に導入したほか、ショッピングモールなどでも、これを警備のための乗り物として使うケースがあります。


セグウェイツアーは世界中で行われている(画像:kzenon/123RF)。

 しかしながら、これらはあくまで私有地内の使用であり、原則的に公道を走ることはできないといいます。たとえば電動キックボードには、ウインカーや前照灯などの保安部品を取り付け、ナンバーを取得でき原付として公道を走れるものも登場していますが、セグウェイの場合はどのように扱われるのでしょうか。日本代理店のセグウェイジャパンに聞きました。

――やはりセグウェイは公道を走れないのでしょうか?

 原則的にはできません。現在、いくつかの地域で公道を走るツアーを行っていますが、これらは実証実験という位置づけです。これを行うには、自治体などと協議会を設置して、道路の使用許可を得るだけでなく、道路運送車両法など法令の制限緩和を申請し、国から認められて初めて可能になります。

 この場合、特殊車両のナンバープレートを取り付けたセグウェイで、許可されたエリアの歩道上を走行します。特殊車両としては、たとえば農業用トラクターや道路工事のロードローラーなどが該当しますが、セグウェイは車両の制限緩和を得るだけでなく、お話したとおり実証実験としてでないと公道を走ることができません。

二輪でも「二輪車」に絶対当てはまらないワケ

――様々なタイプの電動モビリティが、保安部品を取り付けたうえで原付として公道を走れるようになっていますが、セグウェイはなぜ難しいのでしょうか?

 まず法律における「二輪車」の定義が、「タイヤが前後についているもの」とされており、ふたつのタイヤがステップの左右についているセグウェイは該当しません。このほか公道を走れる要件として「物理的な制動装置があること」とされているのですが、モーターの制御により進行、停止するセグウェイの場合、ブレーキなどで物理的にタイヤの動きを止めると、転倒してしまうのです。また、セグウェイの最高速度は20km/hではあるものの、モーターの出力が、原付の枠を超えてしまいます。

――世界的にも、セグウェイは公道を走れないケースが多いのでしょうか?

 いえ、公道を走れないのは日本とイギリスくらいです。当初は多くの国でNGだったものの、それを規制する法的根拠もないケースが多く、認められていきました。ドイツでは6000kmの実証実験を経て、安全性が認められたことから法改正が実施され、歩道を走れるようになっています。


成田空港ではセグウェイが警備に使われている(画像:Varitz Virangkur/123RF)。

 日本でも、当初は限られた「特区」でしか公道走行の実証実験もできませんでしたが、いまは全国で可能になるなど、緩和されてきてはいます。ただ公道を走る場合、車両の前後にインストラクターを配置して、何かあった際の安全を確保することも求められるため、現状では公道走行が認められたエリアだとしても、たとえば警備員がひとりで巡回するといったこともできません。このため、東京都では国家戦略特区制度を活用して、法人用途に限りひとりでの運用ができないか議論されており、これが実現すれば、用途は大きく広がるでしょう。

規制緩和へ向け国も動く しかしセグウェイは…

 前出のとおり、近年はセグウェイだけでなく、自転車にもなる電動バイクや、電動キックボードなど、多くの種類のモビリティが登場しています。これらが多くの国で免許なしに乗ることができる一方で、日本においては公道走行を実現するため、保安部品を取り付けて原付の枠にあてはめるしかない状況が続いています。

 これらは、たとえば人力の自転車として、あるいはキックボードとして乗る場合であっても、ナンバー登録、運転免許携帯、ヘルメット着用、自賠責保険の加入、車道走行が必須で、押して歩く場合以外、歩道を利用することはできません。このため、電動キックボードのシェアリング事業を展開するLuup(ループ、東京都渋谷区)やmobby ride(モビーライド、福岡市中央区)といった事業者は、現行の法制下では、高齢者や観光客の手軽な移動手段としてのサービス提供ができないとしています。


電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP」のイメージ。2020年5月から渋谷周辺に50台配置したところ、2日間で2000人以上が会員登録したという(画像:Luup)。

 一方、国は2018年、現行ルールでは新しい技術やビジネスの導入が難しい場合に、実証実験を行うことでルールの見直しにつなげていくという「規制のサンドボックス制度」を創設しました。Luupやmobby ride、また自転車にもなる電動バイクを製造販売するglafit(グラフィット、和歌山市)も、この制度を活用し、法規制の緩和に向け実証実験や関係機関との対話を重ねています。

 そうした動きのかたわらでセグウェイは、2006(平成18)年から公道走行の実証実験が5万km以上重ねられてはいるものの、実験の域を抜け出せていないといいます。セグウェイによる公道走行ツアーは現在、横浜やつくばなど、全国7か所で実施されていますが、セグウェイジャパンによると、「これが10か所まで増えれば、規制緩和の実現につながるかもしれない」と言われ続けているそうです。しかし、歩道の幅が3m以上ある場所に限定されるなど、実証実験に至るまでのハードルも高いと話します。

★動画★ 乗ってみた!電動キックボード&電動バイク