堀江貴文氏がオフィスワークについて今思うこととは?(写真提供:学研プラス)

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。日本では2月末に小中高校の休校が決まり、4月上旬には緊急事態宣言が出され、現在でも多くの地域の人が自粛生活を強いられている。

会社にはオフィスも社員もいらない

そんななか日本企業は、続々とテレワークに切り替えてきた。いちはやく、ほぼ全社員のテレワークを実施したのはGMOインターネットで、直後にCAMPFIREやYahoo! JAPANなども追従した。IT企業を中心に、テレワークへの切り替えは進んだが、とてもスマートな動きだ。

一部では「社員がオフィスにいなければ、仕事が滞って、業績が悪化するんじゃないか?」という懸念の声があった。しかし結果は、どうだったろう? GMOの熊谷正寿会長兼社長はSNSで「テレワークに切り替えても業績は下がらなかった」という話を公開した。業種にもよるだろうが、テレワークに切り替えたために業績悪化したという事例は聞いていない。僕の中では完全に想定内の結果だ。

昔から一貫して、「仕事にオフィスはいらない。スマホだけあれば成果は出せる」と訴えてきた。オフィス必要派からは、さんざん批判されてきたのだけれど、僕の意見が正しかったと証明されてしまった。

オフィスで行う仕事は、スマホがあれば、すべて事足りる。つらい通勤に耐えてまで、会社に行く必要がどこにあるんだろう?

「仕事は会社でやるものだ」という思い込みに、縛られていてはいけない。例えばコールセンターの業務など、LINEでチャットボットを利用すれば、問題なく回していけるものもあるはずだ。

仕事の大半はAIなどロボットが代用していこうとしている時代に、場所に縛られているのはバカらしい。テレワーク推進で、ビジネスパーソンがオフィスに集まることの正当性はどこにもないという真実が、まさかのコロナウイルスのお陰で、明らかになった。

同時に、会社にはまじめに通うけれど、仕事をしているフリをしてる、無能な社員をあぶり出すことにもなった。数分で済むようなパソコン作業に何日もかけたり、隠れてネットサーフィンして遊んでいたり、デスクの前で無駄な時間を食い潰している社員は、どの会社にも少なからずいるのではないだろうか。テレワークに移行すれば、そういう人々を調整する間接部門のコストは、ごっそりカットできる。

オフィスを置かず、スマホを使ったテレワークだけで経済は支えられる。コロナ禍は1日も早く終息してほしいけれど、本当の意味での働き方改革が強制的に推進される結果になったのは、ケガの功名ではないだろうか。

オフィスの是非はさておき、仕事にパソコンが要らなくなったのは本当だ。最近はビジネスの場で、プレゼン資料をまとめたり、テキストを書くときにパソコンを使う必要がなくなった。テキスト類の整理はもちろん、プレゼンの資料作成ソフトも、スマホアプリで何の不自由もなく使うことができる。もはや、会社の会議室や行きつけのカフェで、ノートパソコンを片手にウロウロする時代は終わったのである。

パソコンと遜色のないレベルでスマホが使える

こうした時代の変化は、ビジネスだけに訪れているものではない。クリエイターたちの世界でも、同じようにパソコン離れが始まっている。

少し前まで、音楽や映像作品はパソコンを使って創作したほうがクオリティは高かった。だが、アプリやフリーソフトの進化によって、パソコンでつくった作品に遜色のないレベルの優れた作品が、スマホから次々に生み出されている。

例を挙げると、スティーブン・ソダーバーグ監督の映画「Unsane」は全編iPhoneで撮影された。観客の心に忍び込む恐るべきホラーの世界観を、小さなスマホで構築していることにはただただ驚かされる。

また、世界中のイベントやクラブを飛び回って人々を熱狂させるDJたちも、DJアプリを駆使しつつ、スマホ上で演奏用のトラックづくりを進めている。

プログラミングの世界でさえも例外ではない。プログラミングは「パソコンを使えないとプロレベルにはなれない最後の仕事」と言われていたが、近年はスマホアプリでも優れた入門ソフトや練習ソフトが増えてきている。

「スマホしか触ったことがない」という若いエンジニアたちが、グローバル企業に続々と採用される時代が来るのも時間の問題だろう。

数年前までは、僕もスマホとパソコンの両方を使っていた。大きなメモリが必要なソフトを使う仕事や、素早いキーボード入力で進める原稿執筆などは、もっぱらパソコンでの作業が中心だった。


しかしスマホの機能が上がり、便利なアプリの種類が増えていくにつれて、パソコンを触る機会は減っていった。

パソコンは、もう長いこと開いていない。デバイス機能としての優秀さは、パソコンよりもスマホのほうが断然上だ。

パソコンだと、たびたび調子がおかしくなって、フリーズしたり、強制終了でデータが吹っ飛んだりすることがあった。そしてその回復のために、本来は必要でなかったはずの多くの時間を取られてしまう。パソコン作業における面倒なトラブルのひとつだった。

だが、スマホに搭載されているUNIXは整然と設計されていて、滅多にフリーズすることがないのである。

プログラム経験のない一般の人たちでも、高度な情報処理を手のひらの上で簡単に行えるスマホが、機能においても人気においてもパソコンを凌駕している。この事実は、考えてみれば当然のことだろう。少なくとも、パソコンよりツールとして便利であることは明白だ。

オフィスに通い、デスクの前に座って背中を丸め、黙々とパソコンに向かっていれば価値を生み出せる時代は終わった。

仕事をやるのに、わざわざ会社へ通う必要なんて、ないのだ。

場所に縛られることなく、スマホを持って、外へ出よう。好奇心に動かされるまま行動して、経験を積み重ねることで、「自分だけの価値」を発信していこう。