井上尚弥【写真:Getty Images】

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BBCが年間表彰を発表、2019年の主役の1人として井上に脚光

 ボクシングのワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級で優勝したWBAスーパー&IBF王者・井上尚弥(大橋)。英公共放送「BBC」は2019年のボクシング界の年間表彰を発表したが、井上を年間最優秀ファイターに選出している。

 ボクシング熱が高いBBCでも2019年の締めくくりに年間表彰企画を行った。

 各表彰の選者は「BBCラジオ5 ライブボクシング」で実況も務めるスティーブ・ブルース記者、そして、BBCでボクシング担当を務めるマイク・コステロ記者。識者2人がそれぞれ選出している。

 特集では「6月に起きた数世代で一度の大番狂わせの他に、2019年はウクライナ人ファイターの格、何人かのアメリカのヘビー級ファイターのパンチ力、二重の視覚を抱えながら斬新な闘いぶりを見せた日本人ファイターの卓越した華麗さというものを供出してくれた」と1年間を回想している。

 6月にアンディ・ルイス(米国)との世界ヘビー級タイトルマッチ初戦でよもやの黒星を喫しながらも、リマッチで見事雪辱を果たしたアンソニー・ジョシュア(英国)、「精密機械」の異名で知られるライト級世界王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、WBCヘビー級世界王者デオンテイ・ワイルダー(米国)、そして、右目の眼窩底骨折などのアクシデントで視野を奪われながらドネアを倒した井上が、2019年の主役候補として紹介。そして、各部門の表彰者を選出している。

「ファイター・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手)」にブルース記者が選出したのは「Naoya Inoue」だった。

「私はイノウエを選ぶ。理由はドネアを倒して2団体を統一したからだけではない。5月には彼はエマヌエル・ロドリゲスも倒しているのだ。我々のお気に入りで、我々が見続けてきたロドリゲスだが、彼はたったの2ラウンド以内でぶっ飛ばしてしまった。無敗の男を破壊してしまったんだ」

「ドラマ・イン・サイタマ」と呼ばれたドネアとの名勝負のみならず、スコットランド・グラスゴーで5月に行われたWBSS準決勝のロドリゲス戦の衝撃のKO劇が選出の要因だった。

 ロドリゲスは2018年5月に英ロンドンでポール・バトラー(英)を倒し、IBF世界王者の座を掴んでいた。英国内でもその強さは知れ渡っていただけに、キャリアで一度もダウンしたことのなかった無敗王者を259秒で倒したインパクトは絶大だったようだ。

ドネアとの名勝負は「英国外での年間最高試合」に選出

 一方、英国外の年間最高試合にWBSSバンタム級大会の決勝も選出されている。コステロ記者は「大番狂わせという部分で、ジョシュア対ルイスは年間最高試合の1つに選出されるべきだが、11月、日本で行われたナオヤ・イノウエのノニト・ドネア戦も挙げたい。イノウエは2団体のベルトを獲得したが、これを上回るファイトが存在するのか、私にはわからない」と絶賛している。

 頂上決戦で輝いたのは逆境を乗り越えた井上のセンスだったという。「イノウエは試合後、2ラウンド目の左フックで視界が二重になったと告白していた。3ラウンドの序盤を見れば、イノウエは片目で見るために右グローブで右目を覆っていることを確認できる。彼はドネアから着想したと話していた。2013年のギジェルモ・リゴンドー戦でドネアはそうしていたのだ」と回想している。

 対戦相手の過去の試合の映像をヒントに、キャリア最大とも言えるピンチを乗り切ったモンスターのセンスも高く評価していた。

 BBC版のパウンド・フォー・パウンド(PPF)とも呼ぶべき、「2019年を終えた世界のベスト」ランキングも発表。ブルース記者はロマチェンコに続き、井上を2位に、コステロ記者はロマチェンコ、カネロに続き、3位に井上を選出していた。

 BBCも認めさせたモンスター。米ラスベガスに上陸する2020年、日本が生んだ最高のボクサーは更なる高みに到達することになるのか。世界のメディア、ファンが視線を注いでいる。(THE ANSWER編集部)