ルイス・ネリ【写真:Getty images】

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現地で取材したライター杉浦大介氏がスライマン会長を直撃

 ルイス・ネリ(メキシコ)の悪夢再び――。元WBC世界バンタム級王者のネリが前日計量で規定の118ポンド(約53.5キロ)を1ポンド(約450グラム)オーバーし、前IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)が罰金を受け取った上での規定体重外での対戦に応じなかったため、23日、ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナで開催予定だったWBC世界バンタム級挑戦者決定戦はキャンセルとなった。

 結果として、FOX PPVで生中継予定だった好カードは消滅。約束された報酬が手にできず、本人、陣営ともに大きな金銭的ダメージを被るにもかかわらず、中止を決めたロドリゲスの決断には称賛が集まっている。一方、体重超過を繰り返すネリへの批判の声はもちろん鳴り止まない。この稀代の問題児に対し、WBCはどう対処するのか。

 23日、WBCのマウリシオ・スライマン会長が筆者との独占インタビューに応じ、ネリに対する思いと現時点での方向性を語った。

 ◇ ◇ ◇

――ネリがバンタム級の体重を作れなかったことで、WBC世界バンタム級挑戦者決定戦はキャンセルとなりました。この状況をどう考えますか?

「指名挑戦者を決めるための試合が行われないことになってしまいました。この顛末は大きな驚きです。ネリはもうバンタム級の身体は作れないということ。WBCはこれ以上、ネリがバンタム級で戦うことを許可するつもりはありません。これから先にどんなステップを踏むか、私たちも話し合わなければなりません」

――ネリの体重超過はこれが初めてではありません。WBCから何らかの処分を科す意向でしょうか。

「現時点で言えるのは、私たちはネリをバンタム級のランキングから外すということ。この件はWBCの懲戒委員会とWBC議会にかけられ、そこで判断するつもりです。前回(2018年3月の山中慎介(帝拳)戦は5ポンドのオーバーでしたが、今戦では1ポンドのオーバーということで、状況は少し違います。今回、ネリはもうこれ以上は体重を落とせなかった。つまりバンタム級で戦うのは無理なのです。こんな結果になって、私もとても悲しく感じています」

――あなたの個人的な感情としては、どんな思いがありますか?

「とても驚いているし、非常に残念です。日本で大きな問題を起こした後も、私たちは彼をサポートしてきました。彼は栄養士を雇うようになり、体重調整はもう問題ないと確約していたのです。その後にこんなことが起こってしまいました」

ロドリゲスが指名挑戦者になる可能性は否定

――ネリとは話しましたか?

「はい、とても落ち込んでいて、悲嘆にくれています。彼も心から申し訳ないと感じています。彼自身ももうバンタム級では戦えないとわかったようです」

――試合をしなかったとはいえ、ロドリゲスが指名挑戦者になることもあり得るのでしょうか?

「いえ、戦わなかったのですから、それはありません。ロドリゲスは他の相手とファイナル・エリミネーターを行うことになるでしょう。ただ、もちろんまだはっきりしたことは何も決まっておらず、これからWBCの議会で話し合うことになります」

――カルロス・クアドラス(メキシコ)、ナワポーン・カイカニャ(タイ)、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)といった選手たちがWBCのランキング上位ですが、エリミネーターには誰が出場するのでしょうか?

「それはまだわかりません。WBC議会で話し合い、全体を見渡しながら結論を出すつもりです。今回の試合前からネリはすでに指名挑戦者であり、ロドリゲスとの試合がファイナル・エリミネーターのはずだったのです。シルバー王座は空位ですし、今後にどうすべきかはまだはっきりとはしていません」

――WBC王者ノルディ・ウバーリ(フランス)には次戦で指名挑戦者との対戦が義務付けられるはずでしたが、その前に別の相手と戦う可能性が出てきますか?

「そうなるかもしれません。はい、そうなる可能性が高いでしょうね」(杉浦 大介 / Daisuke Sugiura)