昔々、ハリウッドで……

タランティーノ監督の最新作、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。

直訳すれば「昔々、ハリウッドで……」となりますが、実際舞台は1969年ヒッピー文化真っ盛り、昔々のハリウッド。出演するのは初共演のブラピ&ディカプリオ。

公開日に見てきましたが、この映画。

実際に起こったある事件を知っているかどうかで、面白さの度合いが全く変わります。

バリバリ予習してたので、めちゃくちゃハラハラしましたが、コレ全く知らない人が見たら何のこっちゃかサッパリ分からないんじゃ……。

てな訳で、ことの経緯を全部説明するとそのデタラメ感にむしろ混乱してしまうその事件を、これでもかってくらいメチャクチャ端折ってザックリまとめてみました。これから見に行こうと思ってる人は予習、もう見てわかんなかった人は復習のつもりで読んでください。

ハリウッドを震撼させたシャロン・テート殺人事件

新進気鋭のハリウッド若手女優シャロン・テートが自宅で友人共々メッタ刺しにされ殺害された事件。殺害指示を出した張本人との接点はほとんどなく、実行犯の男女4人は自分達が誰を殺したのかさえ翌日のニュースを見るまで知らなかったという、デタラメすぎるこの事件。

シャロン・テートは妊娠8ヶ月で全身16カ所を刺され殺されるも、殺される理由は一つも無かったというか、こんな運の悪さある? というか、完全にとばっちりな事件であります。

悲劇というか不運すぎるハリウッド女優:シャロン・テート

シャロン・テートってザックリこんな人

・ハリウッド60年代の若手美人女優
・夫は映画作家ロマン・ポランスキー(代表作:『ローズマリーの赤ちゃん』『戦場のピアニスト』など)
・1969年8月9日の夜、高級住宅地の邸宅にて友人3人と共にメッタ刺しにされ殺害される
・たまたま通りかかった青年も銃殺される
・殺害当時26歳、妊娠8ヶ月
・玄関のドアにはシャロン・テートの血で“Pig”と書かれていた
・彼らを殺害したのは狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者男女4人

じゃあ、この殺害指示を出したチャールズ・マンソンってのはどんな人物かというと、ちょっとググればこの事件以後のエピソードも含めてボロボロ出てきますが、この事件に至るまでとその周辺の話だけめちゃくちゃかいつまんでザックリまとめると……。

カルト教団の指導者:チャールズ・マンソン

チャールズ・マンソンのザックリ生い立ち

・1934年売春婦の母親から産まれる
・育児放棄され生後数ヶ月名前もつけられなかった
・マンソンは母親が一時的に気まぐれで結婚していた男の姓
・5歳の時に母親が強盗事件を起こし逮捕、懲役5年
・親戚の家を転々とし、孤児院を脱走、母親に再会するも追い出される
・9歳で少年院に入る
・1967年に釈放されるまで人生の大半を刑務所で過ごす

出所後のザックリチャールズ・マンソン

・ヒッピー文化の真っ只中で家出少女を集め「ファミリー」として共同生活を送るようになる
・LSDやマリファナで彼女らを洗脳し男性を誘惑させ信者にする
・カリフォルニアのスパーン映画牧場にファミリーで棲みつく
・ビートルズの曲から勝手にメッセージを汲み取り誇大妄想を爆発させる
・野望はビートルズよりも偉大なミュージシャンになること

じゃあ、何でカルト教団の教祖様がハリウッド若手女優を殺す事になるのか。

とばっちりが甚だしすぎるシャロン・テート殺人事件超ざっくり相関図

音楽プロデューサーのテリー・メルチャーの伝手でデビューする筈が、何やかんやあって立ち消えになったマンソン。ハリウッドの勝ち組達への憎悪は燃え上り、メルチャーの自宅を電撃訪問。しかし、当の本人は引っ越し済み。

自分の夢をないがしろにした憎っくきテリー・メルチャー。ていうか、そもそもハリウッドの金持ちが、キラキラした豚共が気にくわない。今住んでる奴らをぶっ殺せばテリーもビビりまくるに違いない。(シャロン殺害に至るまでにはそれ以外にも様々な要素が絡むのだけど思い切って割愛)行け! 手下共よ! 豚を殺せ! あと、何かサイン残してこい! 怪しげなやつ!

出典:https://ulaken.exblog.jp/29616422/

もうお判りだと思いますが、シャロン・テート自身は一個も悪くありません。たまたまです。たまったま、自分の家の前の住人がとんでもない人間から恨みを買っていて、的外れな逆恨みの的になってしまったのです。とばっちりも良いとこです。

で、気づいてますか? 今までの話にブラピもレオ様も出てきていません。そりゃそうです。何故ならば彼らは創作の人物だから。

シャロン・テートの家の隣に住んでる落ち目の俳優とそのスタントマン

レオナルド・ディカプリオが演じるは落ち目のTV俳優、リック・ダルトン。そんなリックのスタントマン兼付き人のクリフ・ブースがブラッド・ピット。そんなリックの隣に、今をときめくポランスキーとテート夫妻が越してくる。

『イングロリアスバスターズ』ではヒトラーを蜂の巣にして殺したり、史実を必ずしもそのまま映画にすることはないというか、むしろ史実をぶっ壊し気味のタランティーノ監督。果たして、今回どうなってしまうのか。やはり、シャロン・テートは殺されてしまうのか。チャールズ・マンソンは刑務所で天寿を全うするのか。

タランティーノが映画への思いを込めまくった昔々のハリウッドを舞台にした御伽噺の傑作、是非劇場でご堪能ください。