ーーその他のキャスティングも小中さんご兄弟で決めていかれたんですか。

小中 基本、僕です。当て書き的なことはないんですが、脚本ができ上がってまず「苓」っていう主人公と、ある種視点となって物語を引っ張っていく「美以那」というキャラクター、この2人が一番重要だった。
中丸さんは『ウルトラマンネクサス』からずっと見てきていて、お芝居ができるのがわかっていたのでお願いしました。
高橋さんはNHKの『ファミリーヒストリー』でオノ・ヨーコさんの再現ドラマを僕が演出した回がありまして、そこで初めてお会いしました。でもその前に『西の魔女が死んだ』(2008年)という映画を観ていて、その時の中学生が今こうなっているんだっていうことを現場で知って、その時企画していた『VAMP』にも合うかなと思ってお願いしました。
その他のキャスティングも結構ウルトラマン経験者が多いんですが、僕が今までお付き合いしてきた役者さんの中でこの役を一番うまくやってくれるのは誰かなという視点で候補を出して、皆さんに集まっていただいたという感じですね。

ーー中丸さんと高橋さんが初めてシナリオを読まれた時の印象を教えてください。

高橋真悠(以下:高橋) まず最初に監督からお話を頂いた時、本当にものすごく嬉しくて。自分が映画に出演することができる、参加することができる、という個人的な思いが先行しちゃって、一番最初にシナリオを読んだ時は全然客観的に読めなくて、嬉しい嬉しいという思いしかなかったんです。
でも何日か経って冷静になって読んでみた時、初めて美以那という役を演じるという視点から読めました。ですから美以那からになりますが、ものすごく苦しい部分が精神的にも場面的にもたくさんあって、そういう中にも人間らしいところがたくさんあるというか、リアルな心がたくさんあるので、そこは、すごく私は好きだなと思いました。

中丸シオン(以下:中丸) 私は初めて本を拝見した時に、すごく衝撃的だったので、本当に驚きました。容赦がない脚本というか、結構描写も激しいですし、このような作品を小中監督はどのように描かれるんだろうという気持ちでいました。
実は十代で仕事を始めた頃からドラキュラだったり、ホラーものには興味があったので、監督のおかげでヴァンパイア映画に出演できるのはすごく嬉しかったです。

ーーちなみに皆さんの思うドラキュラ像というか、最初のドラキュラ作品は何でしょうか。

小中 やっぱりハマー・フィルムのドラキュラシリーズ、ドラキュラを演じたクリストファー・リーですかね。映画を観始めた頃に観ました。あとは『血を吸う薔薇』(1974年)ですね。和製ドラキュラとしては岸田森さん。『もんもんドラエティ』(1981〜1982年テレビ東京で放送)っていうバラエティ番組内で、手塚眞さんが短編のショートショートをやったんですが、バラエティ部分はドラキュラ一家(もんもん家)の話で、岸田森さんがドラキュラ役を演じていて、手塚眞さんの短編に僕も出演していたので岸田森ドラキュラとは間接的な共演ができたっていう。そういうのがわりと学生時代の体験としてはあります。

高橋 私は本当に全然観たことがないから。

中丸 ホラーが苦手なんだよね(笑)。

高橋 はい(笑)。そういうジャンルが苦手で。怖いのが苦手なので自ら観ようと思って観たものはないんです。だから私が一番最初に観たのは、この作品をやるとなったときに、監督から『ぼくのエリ 200歳の少女』(2010年日本公開)を観て欲しいと言われて観た時です。それが私の初めてのヴァンパイアでした。

小中 兄貴からヴァンパイアネタがきたとき、僕が一番やりたいヴァンパイア映画に近かったのが『ぼくのエリ』だと思ったので、それは企画の最初の段階でイメージとしてありました。