NASAは8月13日、小惑星「ベンヌ」からのサンプル採取を目指して地表の観測を続けている小惑星探査機「オシリス・レックス」のサンプル採取候補地を4つに絞り込んだことを明らかにしました。


小惑星探査機オシリス・レックスの想像図


■4つの候補地の名は鳥に由来

こちらの画像が、今回公開されたサンプル採取候補地付近の様子です。一見どれも同じような場所に見えますが、それぞれ違った理由で選ばれています。順番にチェックしてみましょう。


なお、オシリス・レックスの兄弟機とも呼ばれる宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプルを採取した小惑星「リュウグウ」の地名は「子ども向けの物語」が由来でしたが、ベンヌのサンプル採取候補地の名はいずれも「エジプト原産の鳥」に由来します。


4つのサンプル採取候補地、ナイチンゲール(左上)、キングフィッシャー(右上)、オスプレイ(左下)、サンドパイパー(右下)の画像


画像左上の「ナイチンゲール」(和名:サヨナキドリ)はベンヌの北半球(北緯56度)にあり、直径140mの大きなクレーター内部の一角に設定されています。粒が細かく暗い物質に覆われているのが特徴で、他の候補地よりも太陽光の反射率や温度が低いという特徴があります。


画像右上の「キングフィッシャー」(和名:カワセミ)はベンヌの赤道近く(北緯11度)にある直径8mの小さなクレーター内に設定されていて、他の候補地よりも含水鉱物(水酸基の形で水を含んだ鉱物)が多く存在すると見られています。


画像左下の「オスプレイ」(和名:ミサゴ)もキングフィッシャーと同じく北緯11度の赤道近くにあり、直径20mのクレーター内に設定されています。ここでは炭素を豊富に含んだ鉱物が多いと見られており、周辺の岩の種類が多様であることから、砂や塵といった採取される物質の種類も豊富なのではないかと期待されています。


画像右下の「サンドパイパー」(和名:シギ、イソシギ)はベンヌの南半球(南緯47度)にあり、直径63mのクレーター内にある比較的平坦な場所に設定されています。ここでは変成作用を受けていない含水鉱物の存在が期待されています。


■最終決定は今年12月

オシリス・レックスの本来のスケジュールでは、すでに候補地が2つに絞り込まれているはずでした。ところが、いざベンヌに到着してみると予想以上に岩が多く、当初想定していた「半径25m」というサンプル採取地がどこにも設定できないことが判明します。


そこで採取地の広さを「半径5〜10m」まで縮小するとともに、あらかじめミッションに組み込まれていた予備の期間(300日以上)を生かして、慎重に候補地の検討が重ねられてきました。


今後は選定された4つの候補地をさらに詳しく調査した上で、今年の12月にメインの採取地とバックアップの採取地が選ばれます。サンプルの採取は2020年後半、地球への帰還は2023年9月24日に予定されています。


 


Image Credit: NASA/University of Arizona
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-mission-selects-final-four-site-candidates-for-asteroid-sample-return
文/松村武宏