逆転負けを喫したFC東京戦では、いまひとつの出来に終わった中村。試合後は反省しきりだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 東京五輪の開幕までおよそ1年。森保一監督が兼務するU-23日本代表の候補者たちが、続々と欧州行きを決断している。
 
 すでに欧州で研鑽を積んでいる堂安律、板倉滉(ともにフローニンヘン/オランダ)、冨安健洋(シント=トロイデン/ベルギー)、中山雄太(ズウォーレ/オランダ)、伊藤達哉(ハンブルガーSV/ドイツ)らに加えて、この夏には久保建英がレアル・マドリー・カスティージャ(スペイン)へ電撃移籍を果たし、先のU-20ワールドカップで活躍した菅原由勢がAZアルクマール(オランダ)に新天地を求めた。
 
 さらにここに来てバルセロナ(スペイン)が鹿島アントラーズの安部裕葵に白羽の矢を立て、移籍が秒読みと見られ、バルサはセレッソ大阪入団内定の桐光学園FW西川潤にも関心を示しているという。イタリアの複数メディアによると、冨安はセリエAのボローニャ入団が目前と報じられている。

 
 そんななか、動向が注目されているのが、ガンバ大阪のU-20日本代表FW中村敬斗だ。
 
 2018年春、高校3年生にして三菱養和SCユースからG大阪に入団。当時から海外挑戦への強い意欲を口にしていたアタッカーは、戦術理解やフィジカルコンタクトなど改善点がそこかしこに現われ、苦渋のルーキーイヤーを送る。それでも宮本恒靖監督の就任とともにステータスを徐々に高め、尻上がりに調子を上げていった。
 
 迎えた今季は、レギュラークラスに定着。現在は3−4−2−1システムの左ウイングバックという不慣れなポジションでスタメンの座を掴み、守備対応や激しい上下動など試行錯誤を続けながら、日進月歩の進化を続けている。5月にポーランドで開催されたU-20ワールドカップでは影山ジャパンのスーパーサブとして存在を誇示。目下G大阪では公式戦4戦連続先発中で、7月4日の天皇杯2回戦・カマタマーレ讃岐戦では圧巻のハットトリックを達成している。
 
 にわかに取り沙汰されているのは、オランダからの獲得オファーだ。堂安と板倉が所属するフローニンヘンがもっとも熱心とされ、中山がプレーするズウォーレも名乗りを上げているとされる。ほかにもズルテ・ヴァレヘム(ベルギー)、ポルティモネンセ(ポルトガル)、ロコモティフ・モスクワ(ロシア)、サウサンプトン(イングランド)など移籍先の噂は枚挙に暇がないが、欧州でも注目銘柄となっているのは間違いない。
 とはいえ、中村本人はいたって慎重な構えだ。
 
 日曜日のFC東京戦後に、久保や安部の移籍報道について問われ、「世界のスカウトやビッグクラブがJリーグにも注目している。それがよく分かりました。Jリーグでも結果を残せばチャンスがあるんだと思いますし、やっぱり試合に出て結果を残すことが大切だと考えています」と、正直な想いを明かした。
 
 だが、自身の去就に話が及ぶと、「そこはどうなんですかね、分からないです。これからどうするかはみんな気になるかもしれないけど、今日は大事な試合に負けてしまったし、反省しています」と返答。「いまはJリーグでやれているし、ここで試合に出ることのほうが大事。いまいる自分の立ち位置を大事にしたい」とも話した。
 
 はたして中村をはじめ、さらに何人の若きサムライたちがこの夏に針路を欧州にとるのか。いまやJリーグも、欧州サッカーシーンの注目スポットとなっているのは確かなようだ。
 
構成●サッカーダイジェストWeb編集部