J1リーグ第16節。ドイツ人指揮官トルステン・フィンクを新監督に迎え、前節は首位FC東京を破ったヴィッセル神戸が、ホームに大分トリニータを迎えた。神戸は出場停止明けのダンクレー、セルジ・サンペールが先発に復帰したが、アンドレス・イニエスタはスペインに一時帰国中だ。

 試合は神戸が、大分のボール回しに対して前線からハイプレスをかける展開から始まった。すると前半6分、その効果はすぐに発揮される。小川慶治朗のプレッシャーから、中央でウェリントンがパスをカット。それを前線のダビド・ビジャに送ると、ビジャは冷静にゴールを決め、神戸が先制した。


大分トリニータ戦で先制ゴールを決めたダビド・ビジャ(ヴィッセル神戸

 しかし、その2分後、大分は神戸のミスを逃さなかった。DF宮大樹のミスから、いったんはボールをGKキム・スンギュに戻すが、キムもコントロールをミス。このボールを藤本憲明が拾い、最後はオナイウ阿道が3試合連続ゴールを決め、同点に追いついた。

 その後も神戸はハイプレスを続けて大分に自由を与えず、高い位置でボールを奪って大分ゴールを脅かした。そして前半26分、島川俊郎のバックパスを受けたGK高木駿のトラップが大きくなったところをウェリントンが奪い、そのままゴール。再び神戸がリードして前半を折り返した。

 後半になっても神戸のハイプレスは健在で、時間帯によってはハーフコートの試合展開になった。これに対して大分は、後半開始と同時にハイプレスに苦しむ庄司朋乃也に代えて利根亮輔を投入。さらに後半10分に長谷川雄志、24分には小林成豪を投入し、流れを変えようとしている。

 すると後半30分を過ぎた頃から、神戸のハイプレスが利かなくなってきた。大分はパス回しで前線からのプレスを剥がし、得意のサイドからの攻めで神戸のゴールに迫っていく。そして後半44分、DF鈴木義宜のスルーパスに途中出場の小林が抜け出して同点に追いつき、試合は2−2の引き分けに終わった。

 神戸はこの試合で、前節のFC東京戦とまったく違う姿を見せた。前節は、相手のショートカウンターに対応するため、ボールを奪われた瞬間に早く戻ってカウンターを防ぎ、攻撃ではイニエスタにボールを集めるというサッカーだった。

 しかし大分戦は、相手のストロングポイントである最終ラインからボールをつなぐサッカーに対して、積極的にハイプレスをかけるサッカーになっていた。ファースト・ディフェンダーから全体が連動して、大分にボールを運ばせず、相手のミスを誘いチャンスをモノにする。後半途中までは完璧だった。

 残念だったのは後半30分を過ぎてからだ。前線のビジャ、ウェリントンは、もう1点奪って試合を決めたいと、ハイプレスをかけ続けていたが、後ろはこのまま逃げ切りたいと思ったのか、プレスに連動性がなくなり、それが大分の同点ゴールにつながった。

 フィンク監督が就任してまだ2試合目。相手をリスペクトして分析し、そのストロングポイントを消す、というやり方は間違っていない。ただ、それがフィンク新監督のスタイルなのかどうかはまだわからない。彼が神戸でどういうサッカーを目指していくのか。それが見えてくるのは、もう少し先になるだろう。