地中海の島国、マルタ共和国の首都ヴァレッタ。

海に浮かぶ要塞島のような姿をしたヴァレッタは、ロドス島を追われた聖ヨハネ騎士団によって築かれた街です。

歴史ある街並みはまるごと世界遺産に登録されており、坂の多い地形にハチミツ色の建物が並ぶ様子は、まるで異世界の風景。

いま人気上昇中の、ヴァレッタで行きたい10の観光スポットをご紹介しましょう。

・聖ヨハネ大聖堂

何はともあれ、ヴァレッタの街で絶対に見逃せないのが、聖ヨハネ騎士団が造った聖ヨハネ大聖堂。

騎士団の守護聖人である聖ヨハネに捧げられた教会で、質実剛健とした外観とは裏腹に、内部には目もくらむばかりの豪華な世界が広がっています。

16世紀後半に騎士団の建築技師ジェラーロモ・カサールの手によって建てられ、完成から100年ほどは簡素な内装をしていましたが、17世紀に華麗なるバロック様式に改装されました。

ダイナミックな天井画で彩られた身廊は、長さ57メートル、幅15メートル、高さ19メートル。その左右には、言語別に騎士団を構成する8つのグループそれぞれの礼拝堂が設けられており、その装飾と豪華さと細やかさに言葉を失います。

併設の美術館にあるカラヴァッジョの傑作「聖ヨハネの斬首」も必見。ローマで殺人を犯したカラヴァッジョが、南イタリアを経てマルタに逗留した際に描いたもので、光と影のコントラストがドラマティックな作品です。

・国立考古学博物館

世界でも有数の長い歴史を誇るマルタは、考古学資料の宝庫。

かつてプロヴァンス出身の騎士たちの宿舎だった建物を利用した国立考古学博物館では、先史時代の巨石神殿をはじめとする遺跡からの発掘品などを展示しています。

ヴァレッタ近郊の巨石神殿に飾られている出土品は、ほとんどがレプリカ。ハジャー・イム神殿の祭壇や像など、貴重な品々はここに展示されているので、しっかりと見ておきたいところ。

なかでも有名なのが、巨石神殿からの発掘品である「マルタのヴィーナス」やハイポジウムから発掘された「眠れる女神」の像。いずれも手のひらサイズのごく小さいものですが、その造形美と時を超えて生き延びてきた存在感は格別です。

・騎士団長の宮殿

パレス広場に面して建つバロック様式のファサードをもつ宮殿で、聖ヨハネ大聖堂同様、ジェラーロモ・カサールの設計で1547年に完成しました。現在はマルタの大統領府および議会として使われていますが、一部の部屋は博物館として公開されています。

宮殿内部の廊下は、色大理石が床を彩り、重厚感漂う甲冑が並び、今にもどこからか騎士が現れそうな雰囲気。鮮やかな赤が印象的な「大使の間」や、大包囲戦の様子が描かれた壁画のある「最高審議の間」など、豪華な部屋の数々は必見です。

宮殿の入場料には兵器庫の見学も含まれており、18世紀の騎士団長の馬車や、騎士たちが使用していた甲冑、武器などを見ることができます。

・国立図書館

騎士団長の宮殿からほど近い、リパブリック広場の奥に建つ立派な建物が国立図書館。その歴史を1555年にさかのぼる由緒ある図書館で、1796年にこの地に移転し、1812年から一般公開されるようになりました。

パスポートを提示すれば、旅行者でも無料で見学可能。図書室には、高い天井いっぱいに本が並ぶ、タイムスリップしたかのような世界が広がっています。

・マノエル劇場

ヨーロッパで3番目の歴史を誇るこの劇場は、1731年に騎士たちの娯楽のために造られた劇場。

細い路地に面しており、そうと知らなければ通りすぎてしまいそうなほど目立たない外観ですが、内部はシャンデリアとビロードの内装で飾られたは華やかな空間で、600名を収容することができます。

第二次世界大戦の爆撃に遭うも、1960年に修復を終えて再開されました。舞台正面のバルコニー席は、首相の指定席。内部はガイドツアーで見学できます。

・カーマライト教会

ヴァレッタの街角にいくつもある教会のひとつが、マノエル劇場の近くに建つ1570年建造のカーマライト教会。

聖ヨハネ大聖堂などを手がけたジェラーロモ・カサールの設計で、高さ62メートルの大クーポラは遠くからでも目に入るヴァレッタのシンボルのひとつです。

第二次世界大戦で破壊された後、1950年代から再建が始まり、現在も内部の装飾が続けられています。石灰岩で覆われた教会内部は、白を基調とした明るく親しみやすい雰囲気。

・カーサ・ロッカ・ピッコラ

16世紀に建てられた聖ヨハネ騎士団のイタリア総督、ドン・ピエトロ・ラ・ロッカの住居として建てられたもの。数世代のイタリア人の騎士たちの住まいとなった後、18世紀にマルタ人に売却され、現在もマルタの家族が暮らしています。

内部はガイドツアーで見学することができ、豪華なダイニングルームや礼拝堂、書斎などから、当時の暮らしぶりが垣間見えます。

建物や部屋自体は昔のまま保存されていますが、絵画や写真など調度品のなかには新しいものもあり、過去と現在が交錯する不思議な空間です。

・聖エルモ砦

ヴァレッタの先端、グランドハーバーに突き出す角のようなところに築かれた砦。15世紀にはすでに軍事戦略上の要所だったといい、1522年に聖ヨハネ騎士団がオスマン・トルコ軍を迎え撃つために砦を建設しました。

最終的に騎士団が勝利を収めた1565年のマルタ大包囲戦で一度陥落するも、その後新たに砦の城壁が築かれ、マルタ防衛の重要な拠点であり続けました。

現在、聖エルモ砦恒例の名物となっているのが、日曜日に開催される軍事演習パレード「イン・ガーディア」。

16〜17世紀に騎士団が行っていた軍事演習の様子を再現したショーで、旗を持ち、色とりどりの衣装を身に着けた出演者の行進や、剣舞、大砲や鉄砲の実演は迫力満点です。

月に2〜3回不定期で開催されるので、ヴァレッタ滞在中、日程が合えば観に行ってはいかがでしょうか。

・騎士団施療院

聖エルモ砦の向かいに建つ大きな平屋建ての建物が、16世紀に設立された騎士団施療院。建物の外観は、今も当時のままを保っています。

砦のすぐ近く、グランドハーバーに面した場所に建っているのは、負傷者や病人を船からすぐに運べるようにするため。

当時この施療院はヨーロッパ中に知られていたほど有名な存在で、医師や薬剤師は伝統的にフランス語を使い、騎士はもちろんのこと、騎士団長も医師や薬剤師の助手を務めていました。

現在内部は博物館として公開されており、数多くの人形を使って、当時の様子がリアルに再現されています。

・アッパー・バラッカ・ガーデン

グランドハーバーとヴァレッタの対岸に位置する絶景スポットが、アッパー・バラッカ・ガーデン。

ヴァレッタ市街とグランドハーバー、対岸のスリーシティーズを望むこの場所は、「イタリアの見晴らし台」とも呼ばれ、19世紀まではイタリア人騎士の休息の場でした。

海に突き出た場所にあることから、すばらしいパノラマが楽しめるだけでなく、美しく整備された庭園がほっとさせてくれる、ヴァレッタのオアシス的存在です。

他のどの街にも似ていない風景が詰まったヴァレッタは、街歩きの楽しさが凝縮されたような街。

先史時代からのマルタの悠久の歴史と、聖ヨハネ騎士団の足跡をたどりながら、世界遺産の街を歩き尽くしましょう。

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