「がん・消化器・神経精神疾患」へ集中した武田、薬を創る力は蘇ったか
プランプは「シャイアーに関しては、我々がここまでやってきた(3+1を実現するための)変革に比べれば、そこまで複雑ではない」と冷静。各重点領域で深く研究を進める姿勢は堅持する考えだ。
シャイアーの2017年12月期売上高は約151億ドル(約1兆7000億円)。武田の18年3月期売上高と単純に合算すると、3兆5000億円近くに達する。ウェバーは「規模感で考えれば、新会社は今の武田よりもさらにフォーカスを絞った会社になる」とみる。
希少疾患は対象患者数が限られるため、臨床試験の規模が小さくなり、開発期間は短く済む場合が多いとも考えられている。新薬発売に至れば「未充足の医療ニーズが大きいので、支払い側も高い価格で償還してくれる」(ウェバー)。
また今、武田にいる従業員は、希少疾患に関連して「ダイナミックな科学に触れられる機会が増える」(同)。4+2の利点を迅速に具現化することがウェバーやプランプの課題だ。
改革を強力に推進してきたウェバーだが、武田が紡いできた歴史には敬意を表している。誠実・公正・正直・不屈をうたった経営哲学の「タケダイズム」について「正しい価値観であり、私が入社した一つの理由」と高く評価。さらに「日本の会社だから、議論の余地なく本社を日本に置くべきだ」と主張し、シャイアー買収に伴って本社を海外へ移すのではないかとの観測を全面的に否定している。
シャイアー買収後も伝統と革新のバランスを取って社員の士気を保ちつつ、事業規模の拡大で増える研究開発費を生かし、新薬投入ペースを速める―。これが望ましいシナリオだろう。ただ、楽観的な見方ばかりではない。UBS証券アナリストの関篤史によると「思ったほど(武田の足元の)状況は良くない。主力製品である(消化器領域の新薬)『エンティビオ』は来年以降に競合が入ってくる見込みで、競争環境が厳しくなると見ておいた方がよい」。
武田は改革の成果を開発品の充実という形で示せるのか。UBSの関は「シャイアー買収後に何も出てこなければ、もう一回大きなM&A(合併・買収)をやってもおかしくない」と指摘する。シャイアーを統合できたとしても、ウェバーの試練は続く。
(敬称略)